第430話 18枚目:目的地発見

 そこから途中休憩兼ワープポイントの記録を何度か挟み、2時間半後。


『たぶんあれだな。思ったより広い……いや、この場所自体の広さ考えたらそんなもんか』

「確かに。……一塊にしてる物だと思いましたが、随分とこう、横長な感じに領域が展開されていますね?」

『……そう言われればそうだな?』


 ステータス依存の視力的なあれで、エルルと私が真っ先に気が付いた。かなり遠く、それこそ天突くような大樹が霞むほどの距離の先に、もくもくと黒い煙を吐き出している山が見えたのだ。

 が。その山というのが、どうも細く長く、恐らくは外縁或いは中央から一定の距離を保つ感じで、細い月の様な形に存在しているっぽいんだよな。だから正しくは山脈と呼ぶべきなのかもしれない。

 その様子に若干首を傾げつつ、エルルは十分近づいてから旋回の態勢に入った。たぶん中央に当たる場所を探して、その近くに降りるつもりなのだろう。


「ところでエルル。何か飛んでません?」

『亜竜だろうな。モンスターと動物の区別はあんまりつかないし、動物だったとしても知性の無い害獣扱いだから普通に狩るけど。っつかむしろ、俺達が普段食べる肉としてはあれが主だ』

「美味しいですか?」

『割と。客としてやってきた他所の種族に出したら大体喜ばれる』


 所謂ワイバーンだな。前足がそのまま翼になってる奴。もちろん普通に狩れるのは竜族だからっていうのがあるだろうし、そういう意味では非常に希少度の高いお肉でもあるんだろう。それはそれとして美味しいみたいだけど。

 ははは。それを聞いて皆狩るモードに入ったよね。モンスターでも動物でも美味しいとなれば、そりゃ狩るよ。この亜空間においては普通に遭遇する野良モンスター扱いだろうし。

 しかしモンスターもティフォン様の影響を受ける場所だと竜系になるんだね。……モンスター達がやってくる侵略元の世界は、思った以上に生体系とかが近かったりするのか? いや、近いか。でなきゃ普通に生存出来るかどうかから問題になるもんな。


「【人化】すれば草食種族でも普通にお肉食べられますからね。ソフィーナさん、溶岩石バーベキューとかいけます?」

「神様の領域って事なら一声かけた方がよさそうだけど、地形の事だけなら多分大丈夫ね。任せて頂戴」

「3割ぐらいお供えすれば許して貰えると思いますよ」


 よーしメインコックことソフィーナさんのオッケーも出たし、聞く事聞いたらしばらく狩りだな。何せ通常時空では話に聞いた事も無いから、ここで狩れるだけ狩っておきたいところだ。何せ素材があればボックス様の神殿でいつでも狩れるようになるから。

 美味しいお肉と聞いて全員のテンションが上がる中で、段々と平均の高さを上げて行っていた山脈の先に、一際大きな山がそびえているのが見えた。もちろん黒い煙を吐き出し、時々赤い光も飛ばしているそれは活火山だ。

 その向こうは、と目を凝らすと、その向こうの山脈は段々と高さが下がっていっているように見える。だから恐らく、あの一際大きな火山が領域の中央になるのだろう。ようやく着いたな。


『見えたのは良いが、どこに降りたらいいんだこれ』

「狩りと探索を兼ねて麓でいいでしょう。流石に登山だけに何日もかかるとは思いたくありませんが、その分得るものがあるならそれも仕方ないという事で」

『……いい加減高さがありそうに見えるが、そういう事なら問題無いか』


 って事で、全体的に黒い岩でできている感じの山の裾辺り、ある程度固まって草が生えている荒れ地っぽい場所に着地した。流石に荷台をそのまま持っていく訳にはいかず、その辺も考えられていたのか簡単に解体出来る仕様だったので、一番余裕があるだろう私がインベントリに放り込んでおく。

 ……うーん、下から見上げると結構高さがありそうだし、飛んでる推定ワイバーンの他にもなんか色々いそうな感じだな。思ったより時間のかかる登山になるかも知れない。

 まぁでもそれはそれこれはこれ。普段に比べれば頻繁にログインできる起きれるのだし、住民の皆はその辺関係ないからお任せも出来るだろう。


「時間が来ても、それこそさっきの荷台を出して簡易の小屋として使えばいいですしね」

「話は聞いてたから、簡単に仕切れるようにしてあるメェ」

「追加パーツを取り付ければ、ちゃんとしたお家にもなるメェ」


 うちの子が本当有能だな。ありがたい事だ。

 ちなみにボックス様の領域も少し離れた所にちゃんとあった。万が一があっても大丈夫なようにワープポイントの登録をしておいてと。

 で、此処からは動くので、流石に性能的には良いと言ってもドレスだと見た目がね。皇女用軍服・改(レプリカ)に着替えてと。


「さてそれではお肉狩り、もといティフォン様こと“細き目の父にして祖”への謁見ないしお伺いをする為に登山開始です。無理をしない程度に頑張りましょう!」

「「「おー!」」」

「目的がすり替わりかけてるんだが?」


 ははは。どちらにせよ山の探索は必要なんだ。捧げものとして特大ステーキを献上するのは悪くない案だと思うんだよね。バーベキュー楽しみって言うのも確実にあるけど。

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