第364話 16枚目:情熱を捧ぐ人
さて、木曜日と金曜日は変わり映えなく、つまり合格者が1人も出ずに経過した。変化と言えば、流石に半日ずっと飲んで食べてっていうのはきついので、途中から型稽古が追加されたぐらいか。
とはいえ、プレイヤーイベントである大クラン合同加入試験会の盛り上がりは、やはりプレイ人数がぐっと増える土日だろう。それに、平日の間は最後の追い込みをしてる人もいるだろうしね。
まぁつまりだ。
「……本当に、腕を、上げましたね……」
「ちぃ姫の為なら火の中水の中!」
「便利スキルも色々覚えてきましたから!」
「ただでさえ可愛いのに周りに可愛いが増えてるとかそりゃ頑張るわよ!」
「古巣である支援クラン『可愛いは正義』との連携もお任せあれです!」
第一陣とはいえ、人間種族で比較的のんびりやっていた筈のソフィーさん達が、1対1でエルルに勝つとは思わなかったよね……。
可愛いに対する情熱ってすごいなぁ。そして『可愛いは正義』はいつから支援クランになったんだ。あそこ、探索系の割とガチなクランだった筈なんだけど。
え、どうやって勝ったかって?
「ですので出来ればご褒美として皇女モードでお褒め頂きたいななんて思っちゃったりしてですね……っ!」
というか百○拳みたいに手の数が増えて見えたんだけどあれもアビリティなのかな。左肩に割とまともな一撃が入ったみたいで、エルル自身もびっくりしてたみたいだよ。その一撃が決定打になって合格。
「もしくは本来の姿でブラッシングとは言わないから、せめてその格好の頭を撫でさせてもらえると……っ!」
で、
どっちも戦闘力及び汎用性が相当に高い。しかも2人で前衛と後衛に分かれて連携も出来ると来た。もちろん私含むうちの子との連携もいけるだろう。人間、本気になったらここまで出来るんだなぁ。
「……まぁ、頭を撫でるくらいでしたら」
「「やったぁぁああ――――!!」」
帽子を外してそう許可を出した時の喜びようは相変わらずだったけど。そしてめっちゃ撫でられた。まぁわしゃわしゃではなくなでなでだったからいいか。
あ、ちなみにあの時パーティを組んでた男性陣は別の戦闘系だけどマイペースな中堅クランに入ったそうだよ。
というかそもそもあの時のパーティ自体、動物系魔物種族を探しに行きたいソフィーさん達と、大陸の中央に辿り着いてみたい彼らの方向性が一致したから組んでた野良パーティだったらしい。
「ところで色々な便利スキルとは?」
「派生別【料理】を確認されてる範囲ならコンプリートしたわ。和洋中その他スイーツまで含めて何でも作れるわよ!」
「キャンプ系スキルをほぼマスターしましたので、装備の修繕から快適な拠点の構築まで、クランハウスの備品管理も可能です!」
わぁ。本当に1人いれば助かる系のあったら快適なスキルだった。確かにうちの子が合流して大所帯になったし、これは助かる。……エルルも同意見だったらしく、「人数が増えたから助かるな……マジで」って呟いてた。
今まで料理はエルルが担当してたからね。私だけならまだしも、この人数はちょっと厳しいだろう。何でも出来る系のイケメンエリート士官軍ドラゴンとはいえ、専門外には違いないのだから。
たっぷり1分以上は私の頭を撫でている2人だが、なんだろうな。アラーネアさんと会わせたら、秒速でコック服とメイド服を作ってくれそうな気がする。
「くっ、『可愛いは正義』に先を越されたか!」
「なんの! 我ら『愛いものを愛でる会』も続けば良いだけの事だ!」
…………もしかして、しばらくはこの調子が続く感じか? ほんっと、可愛いに対する情熱ってすごいなぁ……まぁ私もあんまり人の事は言えないかも知れないけど。
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