第326話 15枚目:イベントのお知らせ
海への出入りがし辛くなったアザラシ達に魚を獲ってきたり、集められたダンジョンを攻略したり、【解体】で残った雪像型モンスターを解体して調べてみたりと、そこそこやる事はある状態で1日が過ぎ2日が過ぎ、平穏な日常、或いは嵐の前の静けさは、次のイベントのお知らせが来てもまだ続いていた。
恐らく本番は最後の2日、月末に重なる週末だ。なので私は「第五候補」及び『本の虫』の人達と相談し、当日のログイン時間を調節している。
世間は西洋式お盆で色々イベントをやるようだが、私は忙しいのでパスで。そもそも陽が落ちてから外に出るという行動をやりたくない。お菓子が貰えるほど子供でもないし、お菓子をあげるほど大人でもない。微妙なお年頃なのだ。
「あー……まぁ、えぇ、ある意味予想通りというか何というか」
「そうね~。ただ、思っていたのとは斜めにずれた感じがあるけど~」
という訳で、今日は「第五候補」の魔法練習に付き合う形(露払い役という意味)で集められたダンジョンに潜っていた訳だが、戦闘自体は大変楽だ。探索にもそこまで時間がかからないし、もはやメインは「第五候補」の隔離である。
なので「第五候補」が初級
何が予想通りかというと、船(残骸)の山の奥に、北国の大陸に居た渡鯨族の人達が、実質封印されてるのが分かる場所があるって聞いたじゃないか。どうやらその場所がそのまま、いわゆるその「閉じた空間」への入り口になるらしい。
「一応、分類としては探索系イベント、に、なるんでしょうが……」
周辺警戒と「第五候補」の様子見はしつつ、もう一度お知らせ全体に目を通す。うん。探索系イベントではあるんだ。探索と戦闘と生産が、それぞれ連続では来ないようになってる感じだな? まぁ運営も試行錯誤してるのかもしれないけど。
で、どこを探索するかというと、それはもちろん渡鯨族の人達が封印されている、その「閉じた空間」の内部だ。読み進めた最終目的は「閉じた空間」から渡鯨族の人達を開放する事で、要するに私がエルルにやったことを、
まぁそれに異論はないというか妥当というか当然というか、救出しないって選択肢は、無いな? 状態なのだが……なんかひねりが入ってるんだよ。さて、この辺で恒例のバックストーリーの確認といこう。
いくらかの想定外はあったが、それでも順調に大陸の神達が力を取り戻したことに、神々はまず1つ安堵の息を吐いた。そして、まだ油断をすればどう転ぶか分からないとはいえ、これで神話そのものが立ち消えるという危険は去ったと見ていいだろう。と、いう判断を下した。
そして力を取り戻し、或いは復活した神達から話を聞く事で、大陸同士を船による行き来で繋ぐという、非常に重要な役目を果たす種族が、空間の狭間に囚われ、身動きが取れなくなっているという事態が発覚した。
ただし、その空間の狭間にはその種族だけではなく、空間の歪みやモンスター等も数多く封じられている事も判明。神々は頭を抱えつつもどうするべきか話し合い、対策を講じ、そしてそれらを召喚者へと、託宣によって伝えるのだった。
はい。ここでピンときたらあなたは察し或いは勘が良い人だ。分からなくても問題ない。私も分かったからすぐ言葉にするさ。
イベントのシステムとしては、繰り返すが探索系だ。確かにバックストーリーに「モンスター」と「空間の歪み」が含まれている以上戦闘は避けられないが、メインは探し物だ。
そしてその探し物っていうのは、これまた当然ながら渡鯨族の人達な訳だ。で、探す場所っていうのは、空間の狭間って書いてあったあの「閉じた空間」だ。うん。つまり、だな。
「ランダム生成の1階限定ダンジョンを探索し、罠やモンスターをどうにかしつつ、恐らくは奥地に居る可能性が高い渡鯨族の人達を見つけ、出入り口まで連れて行かなければならない、と……」
「何でそこでランダム要素と~、護衛要素を入れちゃったのかしらね~?」
「まっっったくですよ。これ、絶対行きより帰りの方が罠もモンスターも厳しくなるパターンじゃないですか。何なら奥地に辿り着いた時点で地図が消えて迷路が組み変わるとかまであるでしょう!?」
そのぐらいの仕掛けはしてあるだろう。だってフリアドの運営だし。無いなら無いで、あると思って対策しておけば後が楽になるだけだ。つまり備えておくに越したことは無い。
「それに~。1度に1人とは書いてないから~……。探してる人たちが、全くいない事もあるし~。逆に、突入人数より多い事もあり得るわよね~?」
「パーティ人数の倍まではあると思った方がいいでしょうね。一応注意書きに「閉じた空間の中での死亡はNPC・プレイヤー共に反映されません」とあるので、ミスすなわち人口減少という訳ではないようですが……」
「でも~、
「総合人数も書いていませんし、内部に現状が伝わったとも思えません。リアル説得スキルか、それこそ「第五候補」のように問答無用で好感度を稼ぐ手段が必要でしょう」
「単純な好感度に関しては「第三候補」も言えないじゃないの~」
まぁ一応竜族の皇女なんで。ネームバリューがあるってありがたい事だね。しかしリアル説得スキルに関しては、今度もまた『本の虫』の人達無双かな? 1パーティに1検証班メンバー。冗談でも何でもなく必須になりそうだ。
で、もう1点。気になるというか油断ならないというか、初手から飛ばすしかないというか嫌な予感がするというか。
「だから、なんっで、このお知らせには――「イベント終了時までに救出出来なかった渡鯨族の人達」の扱いが書いて無いんですか……!」
忘れてないぞ。
同じく「その後」について、最初の内に何の記載も無かった「たからばこ」が、結局イベント終了後どうなったかを!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます