第321話 15枚目:問題確認
宝箱の形をした水槽を蓋をしたまま外に持ち出して、アザラシの群れからも離れた所で水槽ごと消し飛ばしてクレナイイトサンゴの殲滅は完了。その時にようやく海賊の人達と顔を合わせたのだが、どうやら向こうは覚えていたようで盛大な悲鳴が上がった。失礼しちゃうな、こんなに可愛いのに(自画自賛)。
どうやら雪の結晶の形をした氷の精霊さん達は、いつの間にか「第五候補」の魅了が入っていたらしく船(残骸)の山に残るのだそうだ。……まぁ【氷精霊魔法】は問題なく使えるからいいんだけどさ。
という訳で、道案内役は海賊さんに変更(行きのみ)となり、実質は私単独でストーンサークル(仮)に向かう事になった。
「……迷子になる危険が減ったのは良いんですが、そこまで怯えなくても……」
崖の上に到着するなり、「じゃ、オレッチはここまでで!」と言い残してすたこらさっさと逃げて行った海賊さんを見送り、1人ごちる。あの迷路を壊した時だって、そっちが誘拐をやらかしたのが根本的に悪いんじゃないか。
そんな後姿を見送り、さて、と遠目からでは見えなかった、クレバスめいた谷を見下ろす。真ん中にあるストーンサークル(仮)の直径が10mという話だから、左右にほぼ同じだけ広さがある、という事は、幅は恐らく30mと言ったところか。
長さは相当ある。1kmぐらいはあるって言われても納得するぐらいで、つまり端は見えない。ただそのストーンサークル(仮)を中心として端に行くほど深さは浅くなっているようで、とても緩やかな坂道になっているようだ。
「で、あの中心からモンスターが湧いて出る、という話でしたが……」
とりあえず、谷の上からスクショを取って掲示板に貼り付ける。それからしゃがみこむようにして視線を下げ、ストーンサークル(仮)の全体を視界に入れた状態で【鑑定☆】を発動してみた。
……何だか微妙に虫食いだったので、続けて何度か発動してみる。難易度高いなこのストーンサークル(仮)。ナヴィティリアさんの忠告もあるし、やっぱり【鑑定☆】がレベル上限に達したら限界突破しよ。
5回ほど繰り返したところで大体情報が出そろったっぽいので、その画面のスクショを掲示板に投下。うーんしかし、やっぱり思った通り厄介事だったなこれ。
「施設という区分だったのは良いとして、確か「狭間の大扉」ってあれですよね。渡鯨族及び人魚族のところにあった、野良試練を集めた扉の名前だった筈ですよね?」
結論。このストーンサークル(仮)、海関係の神様の元神殿だったらしい。
……ただし、その頭に「忘却された」という冠が付き、一番下に「現在は空間の歪み及び異世界の力を無秩序に吸い込み、吐き出すだけとなっている」って注意書きが付いているが。
その情報を私が掲示板に上げるなり、『本の虫』の人達は最初の大陸の渡鯨族及び人魚族の人達に話を聞きに行ったようだ。そうだね。今この場所にあってもどうにもならないってかこの場所にあるのがおかしいからね。
「……あぁなるほど、やっぱり移動は出来るんですね。ただし形の変化については理由不明、と……。……周囲に違和感があるものはないか、もしくは見た目氷を個別で鑑定出来るかどうか、ですか?」
わわわっと書き込まれる情報に首を傾げ、とりあえず谷底に降りてみる事にする。流石に氷っぽい物を個別で鑑定するにはもうちょっと近づかないとダメだ。
うーん、しかし近寄るとその大きさが分かるな。今の私がロリサイズっていうのもあるんだろうけど、見た目が完全に透明な氷じゃなければストーンサークルで納得だ。
さて。近寄ってみて軽く見た目氷を叩いてみる。んー、確かに硬いな。そして触っても冷たくない。で、一番小さい奴でも、私が持ち上げられないって事はこれ動かせないって事だな。破壊不可能が確定と。
「まぁ神殿であったなら納得ですけど。ほいほい壊れたら困る物ですし」
という訳で、改めて【鑑定☆】。……【鑑定☆】。あれ?
「……なーんで単独だと一切何の情報も出てこないんですかねぇ」
ちなみにどの大きさの見た目氷を【鑑定☆】してみても一緒だった。周囲の氷は普通に結果が出るし、少し離れた所で全体を見ながら【鑑定☆】すると上から見た時と同じ結果が出たから、スキルの発動には問題がない筈だ。
【鑑定】スキルで結果が出ないとか嫌な予感しかしないんだけどなぁ……。何度か連打してみたけど一切反応しないから、レベルが足りないって話でもないよなぁ……。
で、どうやらその「【鑑定】が発動しない」というのは『本の虫』の人達が立てた推測を裏付けるものであったらしい。つまり、本来は扉の形をしていたのが、何らかの影響でストーンサークルのような形に変わっている、という事だ。
「さーてどうしましょうか。別に私としては単独でも構いませんが、そうすると後でめっちゃ怒られるでしょうし」
となれば、解決した方がいいのだが……その方法って言うのが、うん。中に突入して、溜まっている異世界の力(=モンスター。あるいはその素)と空間の歪みを、戦闘力で一掃するっていう方法で、ね?
戦闘となれば、まぁ……エルルを呼ばないと、絶対怒られるんだよね。いや私としては別に、人魚族の人達の所で散々やったのと同じダンジョンアタックだろうから、いいんだけどさ。
心なしか過保護が加速してる感のあるエルルが、許してくれるかどうかっていうのが……うん。
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