第291話 14枚目:イベント進捗

 とりあえずサーニャにはどうにか落ち着いて貰い、周辺の地理について聞いてみた。うん。もちろん当時の(=古代の)事だよ。

 何度か説明しているが、この大陸は解像度を落としてカクカクになった雪だるまを、北東から南西の方向に傾けたような形をしている。サーニャによると、大体この大陸は4つのエリアに分割する事が出来たらしい。



 北から4分の1、上の丸における北半分は雪のエリア。恐らくディックさんが言っていた「寒さと白さを司る空の神様」にして、ワイアウ様曰くの「お姉さま」の領域だろう。1つのとても高い山と、10に満たない山の連なりがメインであり、大体常に雪と氷に覆われている。

 上の丸、その南半分は寒冷地エリア、というべきだろうか。北半分と同じく「お姉さま」の領域だが、雪と霜が混在しつつも水は流れるし、そこそこ植物もあったのだそうだ。多分あの神官さんことこの大陸の小人族はここをメインとして生活していたんじゃないだろうか。

 そしてこの竜都を挟み、下の丸。その北半分は、一転して熱帯かと言う感じの環境になるのだそうだ。その原因は下の丸においてやや北寄りの中央に存在する活火山の山脈であり、風は冷たいが地面は暖かく時に熱く、噴火が起こったりすると薄着でも大丈夫だったらしい。これが恐らく「暑さと黒さを司る山の神様」にして「あの女」の領域という事だろう。

 そして下の丸、その南半分だが、ここは寒さが活火山の山脈に遮られている為、ほどほどに温暖な環境だそうだ。もちろん最初の大陸と比べれば寒いが、それでも多少厚着すればそれで過ごせるはずとの事。



 もちろんこれらは「大体の特徴」であり、下の丸にあたる地域についても雪が無い日は無い程度には環境的に寒い大陸であることは間違いない。全てあくまで、「極北付近の地域にしては」という枕詞が付く特徴である。

 ……神話はハワイだが、地理的にはグリーンランドとアイスランドだろうか? って事は、下の丸にはそこかしこに温泉があるのかな。もしかしたらこの大陸の小人族達は、そんな水場をよりどころにして村を作っているのだろうか。


『うっっっわ、ほんとに南の果てまで真っ白になってる!?』


 なお、これが現代知識を信じたくないサーニャへのダメ押しとして、【人化】を解いて上空に飛びあがって貰った際の感想だ。うん。大体分かってた通り、黒い鱗に青い目のドラゴンさんが、白いドラゴン版フルプレートな鎧を着てる姿だったよ。流石に竜姿で男女の差は分からないけど。

 お城の屋上に戻ってくるなり【人化】してorzの姿勢になったサーニャに、「だから言っただろうが」と呟いたエルルが呆れた視線を向けている。ははは。そろそろ現実を受け入れようか。


「マジで、マジか、嘘だと言ってくれエルルリージェ!」

「残念ながら現実だ。早く受け入れろ」

「チクショウ!! お前は何時でも冷静だな! どうやったらそんなあっさり納得できるんだ!?」

「否定した所で現実は変わらないからな。さっさと呑み込んで対処に動いた方がまだマシだ」

「それがはいそうですかと出来れば苦労するかぁあああああ!!」


 ……もうちょっとかかりそうかな、これは。




 さて私達が竜都の発掘及びサーニャの説得にかかっている間、一般召喚者プレイヤー達はワイアウ様の姉妹神を捜索していた。どうやらそちらも、下の丸に当たる地域で見つかったようだ。

 『本の虫』の人達によって共有されたその情報によると、“雪衣の霧雲にして細雪”の神の呼び名が、リリノエ様。“雪衣の光雷にして飾雪”の神の呼び名が、カホウポカーネ様だそうだ。うん、予想通りだな。

 そして3柱の神々が北の人魚族の神殿に集合したことで、ようやく「お姉さま」の名前が判明したらしい。そして同時進行で「第一候補」が山の根元にあった神殿で、完全に起こさない程度にお伺いを立ててみた所、そちらも判明したようだ。


「ワイアウ様曰くの「お姉さま」が“雪衣の冷山にして白雪”。同じく「あの女」が“熱岩の火山にして黒煙”と。うーん、大体呼び名も分かりますが口に出すと大変な事になりそうです」


 大体一方的な喧嘩売りだとは言え、山頂に着いたときや祭壇を見つけた時にうっかり起こさなくて良かったなぁ……。

 さて新しい名前が出て来たという事は、全体の進行度が上がったという事だ。それはつまり、次の探索目標が出てくるという事である。



 『本の虫』の人達によるまとめによれば、3姉妹が口を揃えて「お姉さま」の気配が分からない、と告げたらしい。この大陸の何処かに居れば分かる筈なのだが、それが「なんだかとても遠い」程度にしか分からないという。

 また同様に、この大陸周辺の海を司る神――かのクラーケン一族に加護を与えている神との連絡も途絶状態。「あの女」は起こせば応えるだろうが、海の神も「お姉さま」も居ない状態で起こせば、この大陸の環境が激変するどころではない。

 なので3姉妹は、まず「お姉さま」の神殿を探す事、次にこの大陸における大神殿を探す事、そして、「どうにも「お姉さま」のものではない」この大陸を覆う雪の出所について調べる事を求めてきたようだ。



 ……雪が「お姉さま」のものじゃないって初耳なんですが? と頭が痛くなったが仕方ない。つまり別に原因が居てそっちが問題なんだろうなというところまで察したが仕方ない。

 多分その雪の原因がこの大陸の異常であり、それは恐らくここから先リアル1年立ち塞がり、またリアル1年がかりで準備を整える必要があるのだろうなというところまで察したが、仕方ないんだ。

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