第123話 10枚目:再会と続き

 さてマップを頼りにわき道まで戻って来た。探検してる間に反対側に広がっていた、一度吹っ飛ばしたはずの汚れ(仮)がまたじりじり広がっていたらしく、改めてもう一度吹っ飛ばしておく。

 もしや神殿を建ててはいけない神々関係か……!? と戦慄しつつ、ひょい、と地下室へ戻ると。


「「あぁ――――っ!?」」

「キュッ!?(何!?)」


 何故かそこで、探検準備万端、という感じの大荷物を抱えた女性人間種族召喚者プレイヤーに指さされ、軽く飛びあがる事になった。




『あぁ、成程。カバーさんから様子を見てきてほしいと言われたのですね』

「びっくり声も可愛い……。あ、いや。私達なら大丈夫ってだけ言われて放り出されたから何の事かと思ったわ」

「飛び上がったちみ竜可愛い……。んんっ! それにしても、あの皇女さんが「第三候補」さんだったんですね」


 机の上にマットを引いてお座りした形の私と対面しつつ、すぐに緩んでしまいそうな顔を必死に真面目に保ちつつ会話しているのは、ルチルを迎えに行ったときに歌鳥族の里まで来ていた人間種族パーティの女性陣2人だった。

 改めて自己紹介をし直したところ、魔法スキルをメインで上げている、メイン魔タッカーと呼ばれていた方がソフィーナ、魔法スキルと近接スキルを半々で上げている、メインヒーラーと呼ばれていた方がソフィーネというらしい。

 まさかの名前被りスレスレな上、どちらもフリアドを始めた理由というのが「可愛いを探す」だったため、出会って即日で意気投合したのだそうだ。


『ところで、何故そこからあの大荷物に?』

「だって、「第三候補」さんが探検する場所よ?」

「普通な私達だと、決死の覚悟が必要かと思いまして」

『……一応此処は安全地帯なのですが』


 で。恐らくはそれを知っていたであろうカバーさんに、あまり姿を見せたくない私へのメッセンジャー兼様子見係としての役目を割り振られたらしい。うーんまぁ、一度見せた相手ならいまさらと言うか何と言うか、まだいいかな、と思うのは確かだけども。

 そしてカバーさんから立ち入り許可を貰って建物の中に入っていった2人が見たのは、うず高く積まれた武器の山と空っぽの籠、そしてその傍にあったメモ書きだ。


「とりあえず武器は、うちのパーティメンバー含めてほとんどのプレイヤーがぼっこぼこにされてる場所に持って行って」

「で、準備を整えて引き返してきたところだったんです」

『なるほど、そうだったんですね』


 【鍛冶】スキルの練習として作った武器は有効活用されているようだ。良かった良かった。ほとんどのプレイヤーがぼっこぼこに「されてる」っていう部分にはツッコまないぞ。だって想定通りだし。

 で、何でわざわざカバーさんが人を寄越したのかというと、ログイン確認だけじゃない訳だ。知ってる。それぐらいならフレンド登録で分かってるから。だから別件だ。

 忙しくても直接話す必要が……まぁつまり、ある程度以上の範囲には秘密にしなきゃいけない、大事な話だって事だ。


『それで、カバーさんからは何と?』

「あ、はい。えっと……この資料と?」

「こっちの……何かの写し? ですね。これを渡してくださいって」


 出てきたのは紐で止められてざっくり本の形になっている紙の束だった。……一応私でも見れるけどさ。爪でうまく紙を触るのって若干面倒なんだよね。それが現実に比べれば質の悪い、分厚い奴だったとしてもだ。

 まぁそれでも見ないという選択肢はないので懸命に紙をめくって内容に目を通していく。テーブルの向こうでその様子を見ているソフィーさん達が可愛さにやられているのを頑張って視界から締め出しつつ見ていくと……。

 うん。やっぱりあったらしいよ、バックストーリーの続きがね。



 亜空間を作るにあたり、神々は現在世界から一歩距離を置いている大神を頼ることにした。そうでなければ世界の中で完結してしまい、これまでにない規模のダンジョンになりかねなかったからだ。

 しかし大神は、召喚者を喚ぶにあたって異世界との橋渡しの役を担っている事に加え、世界が負った、あまりにも大きな傷をも抱えて守り、封じる役目を担っている。

 その大神の力が僅かとは言え混ざった為に、その亜空間には空間の歪みによる生成物だけではなく、過去の世界に起こり、神によって封じられた「災害」までもが出現してしまった――。



 うん。一言だけ心から言わせてほしい。

 ほら見ろ言わんこっちゃないやっぱり廃墟って事に意味があったじゃないか!!!

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