第106話 9枚目:新人とお話
お互いに自己紹介した所で、フレンド登録をしておくことに。え、今までの登録者数? カバーさんとー、『スターティア』に一緒に行った魔物種族プレイヤー達。第1回イベントのイベントエリアでは出来なかったんだよね。
「清楚系可愛いなマジモンのお姫様とか……尊い……」
うーん、拝んでくれてるんだけど、それは残念ロールなんだよね。本来の性格ではない。いや、そういう「役」とはいえ直接会えればいいのか。
ということでちゃかちゃかと個人通信、大体のゲームでウィスパーと呼ばれる機能を呼び出して、目の前の妖精さんことフライリーさんへと、中のヒト的な意味で声をかける。
『気づいたら竜族の皇女になっていたのでそういう方向でロールしてますルミルです。正確には中の人です。どうぞよろしくお願いします』
『ほわー!?!?』
ほわー、て。
『ほ、ほわ、ほわわ、はい! もう! 可愛いも綺麗も格好いいも大好きですがギャップも大好物なフライリーです!! 清楚系可愛い尊大な皇女様の中身がフレンドリーとかありがとうございます!!』
『あ、はい。ありがとうございます?』
え、うん? ごめん、何を言っているのか分からない。何? 中の人とロールのギャップでもテンション上がるの? どういう事?
じったんばったん、ルチルの頭の上で悶えていたフライリーさんだが、突っ伏した状態で動かなくなった。ウィスパーに集中することにしたらしい。難しいよね、これ。慣れるまでは。
『いや、もう、ありがとうございます醜態晒しましたすみません。新人歓迎イベントやるって聞いて、4月1日に始めたばっかりのド新人です。よろしくお願いします』
『はい、お願いします。ようこそ、魔物種族で行くフリアドへ』
『ありがとうございますわぁい。ランダム選択で種族選んで周りに誰も居ないとか大分不安だったけど頼りになる上に可愛い先輩がいるとか超勝ち組では?』
うん。心の声が漏れている。
相変わらずフリアドの謎技術により、ウィスパーは声に出さなくても行える。それこそ、テレパシーでもしてる感覚に近いんじゃないだろうか。その辺をどうやっているのかっていう疑問は運営の偉い人にぶつけて欲しい。
なので、慣れないうちは心の声がうっかり漏れる事が多々ある。ウィスパーにじゃなくて、魔力を感じるのとか体力の体感とか、その辺丸っと含めたシステムに、だ。
『とりあえず、魔物種族において、種族レベル30なんて入り口に立つことも出来てない事がほとんどですから、頑張りましょう』
『マジっすか』
『マジです。私なんかまだ【人化】にロックかかったままなのに種族レベルがキャップに引っ掛かってます』
『わぁ。修羅の道とは聞いてたけどそこまでですか。ひぇ』
『そこまでなんですよね。まぁ、見る限り私よりマイナススキルは少なそうですし、多分100に行く頃には普通に動けるようになってるんじゃないでしょうか』
『種族レベル100って、桁ぁ!?』
『ははははは』
いやぁ、メタい話が出来るのって楽しいね。感覚マヒしている自覚があるとはいえ、ここまで反応してもらえるとそれはそれで新鮮だ。
くぁ、と欠伸を身体(アバター)の方でしつつ、フライリーさんのざっくりした初期スキル構成を聞いた。
マイナススキルとしては【環境耐性低下】と【影響力低下】、【気弱】、【魔力耐性貧弱】、【偏食・花蜜】で6つ。【浮遊】と【軽量化】が種族特有スキルで2つ。10個の内8個のスキル枠が埋まっているようだ。
『いやー、【軽量化】って何? 自分で持ってる間しか効果ないとか地味じゃね? って思ってた自分をぶん殴りたいです。これ、妖精やるなら無いと死にます』
『そこまで』
『そこまでなんですよ。何せほら、力が無い上にちっちゃいんで。だから可愛いんですけど。軽くしないと何も持てないんですよね』
『なるほどー』
そして残り2つの枠には【共通言語】と【魔物言語】が入っている。妖精族は【人化】が必要かって? ……必要だったらしい。まぁそりゃそうか。大きさが大きさだもんね。
だから控えには【人化】と【妖精の血脈】、そして最初に選んだ5つのスキルがあるのだという。
『良ければですが、何取りました?』
『何になるか分かんなかったんで、【格闘】と【鑑定】と【忍び足】の生存セットと落とし穴スキルの【採取】に趣味の【クリティカル強化】です!』
『生存セットに落とし穴スキル……いえ、何となく分かるんですが』
『まぁ妖精になっちゃったんで【格闘】が死にましたけど!!』
『え、そうでもないですよ? あれ、動き全般に補正がかかりますから。【浮遊】にも作用している筈ですが』
『そうなんですか!?』
そうなんだよ。だから使徒作成の時に、最前線に立つルシルとルドルにはその上位スキルの【徒手空拳】を付けたんだし。私も第1回イベントの時には真っ先に武器系スキルで取りに行ったし。
ほわー。という心の声が漏れているフライリーさんのウィスパーに、ちょっと考えて返答を返す。
『とりあえず、まずは【浮遊】をマスターしないとまともに動けそうにありませんね?』
『あっはいそれはもう……現在痛感中です……。てか、これ、羽はどうやって動かせば!?』
『慣れです』
『慣れ』
『はい。慣れです。とにかく動かしてみるしかないです。習うより慣れろ』
『ひぇ……実際にやって来た人の言葉だけあって重みが違う』
『大丈夫、慣れればむしろ、現実が不便になります』
『そこまで!?』
そこまでなんだよね。特に尻尾。両方を切り離して別物として扱うにはまたそこそこかかったからなぁ。これもまた慣れるしかないんだけど。
『ひえぇ……頑張ります……』
『大丈夫ですよー。手伝える範囲では手伝いますからね』
『先輩!! ありがとうございます!!』
そこでウィスパーが切れる。むく、とルチルの頭の上でフライリーさんが体を起こした。
「よーし、頑張るっすよー! 目指せ、ひゅんひゅん飛び回れる妖精!!」
「はい、頑張りましょうー!」
「お、おう。頑張れ?」
やる気一杯のフライリーさんと、一緒に声を上げてやる気一杯のルチルに、テンション高いなー、とばかりのエルル。ははは。やる気があるのは良い事じゃないか。
……だから敢えて言わなかったんだよ。マイナススキルの克服には、作業じみた苦行が待ってるって事は。
『精神鍛錬ではエルルにも出番があるかもしれません』
「うん? …………あ、なるほど」
【気弱】は、うん。エルルの殺気をぶつけられればすぐ上がるだろうし。
いやぁ支援の体制があるっていいねぇ。(棒)
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