第81話 7枚目:ダンジョンアタック
「降って湧いた系お嬢の言質の取り方がえぐい。何処の鬼畜に習ったんだよ」
『そんなに酷い? 必要最低限の安全ラインでしょ』
「一つ目はまだいいにしたってあと二つがえっぐいって言ってる」
『そんなー』
なお人魚族の王様の退出を見送ってからこちらも部屋を下がり、普通一般宿屋に借りた部屋に入っての会話なので安心だ。建物はこう、木の代わりに珊瑚を使った変形かやぶき小屋、みたいな? くそう、語彙力が足りない。
ともかく素材としては珊瑚と湿地帯の草で出来ていて、建物全体に熱を帯びた煙を回すことで防虫防カビをするんだそうだ。水辺にすむ種族だからか衛生には割としっかり気を使っているらしい。
さてそんな建物の一室で、早速言ってくれた帽子を脱いで襟元を緩めたくつろぎモードのエルルだけど、こちらからも反論させてもらおう。
『召喚者全体の評価にも関わるんだから、無条件で受けるのは悪手だよ。そのついでで相手の負担にならない程度の要求をしただけなのに、なんでえぐいって言われるのさ』
「お嬢が自分の戦闘力と手に入るだろう素材の量を分かった上で、あの条件を出したからえぐいって言ってるんだよ。人魚族の貨幣を一掃するつもりか?」
『エルル知ってる? 珊瑚もあれ宝石に数えられるんだよ。それに、海底には特殊な宝石がありそうだよねぇ』
「ちゃんと吸い上げた貨幣「は」放出するつもりなのがまた性質悪い」
全くどっちがどっちを手玉に取ってんだか。と呆れ顔で私をブラッシングから解放するエルル。偉い人との面会で凝り固まっていた気がする体がすっきりしたのに気持ちよく伸びをして、くすくすと笑って見せた。
『そんなの、見た目で侮ってかかる方が悪いに決まってるじゃん。召喚者なんだから、中身と見た目で乖離があるのは分かってなきゃねぇ?』
「んでもって、肝心の戦功と戦闘力はきっちり俺を隠れ蓑にするつもりだろ、お嬢」
『見た目だって武器の1つなんだから活用するのはこれもまた当然だね』
「だからえぐいんだよなぁ……」
ぼりぼりと頭の後ろをかいて呆れ顔のエルル。やだなー。私の認識は今回これ、売られた喧嘩を買ったまでだぞ? 買ったと悟らせないように態度と言い方は工夫したけど。
ともかくこれで「どんなに桁外れな量の」あるいは「超希少で値段が付けられないような」モンスター素材を持ち込もうと、処理もとい引き取り先に困る事は無い筈だ。最悪でも王様が引き取ってくれるだろう。引き取るって言ったんだから。
ぶっちゃけ武器も鎧もまだ当分いらないから、よほどでなければ現金に変えちゃった方がありがたいんだよね。もしくは宝石。
『楽しみだねぇ、人魚族特有の宝石と魔法』
「何怒ってんのか分かんねぇけど、ほどほどにな、お嬢」
大丈夫大丈夫、怒って無いし、エルルがのけ者にされたぐらいで経済破壊しようなんて思ってないよ。ホントホント。
さてそこからリアル1週間滞在して、ダンジョンアタック三昧をすることとなった。なお入口はパルテノンっぽい海に面した神殿の離れに当たる場所で、外観は小さめの部屋にポツンと扉があるだけというシンプルなものだ。
……扉に手をかざすと、そこから行ける野良ダンジョン(人魚族の王様曰く、「海神様が集めた」)が一覧で表示されて、そこから選ぶと扉が開く、という形式だった。なお、一覧に載ったダンジョンの数はまぁ、うん。……1ダンジョン辺り平均2時間ぐらいかかるから、中々捗らないね。
個人的な感想を言えば、魔法無双たーのしー! なので全く苦痛ではない。時々【浮遊】と【風古代魔法】の組み合わせでスピードオーバーを起こしてダンジョンの壁に突っ込んだりはしてるけど。
「…………分かってた。分かってたけど、この降って湧いた系お嬢微塵も【竜魔法】を使ってねぇ……!!」
『えー』
なおそう言って頭を抱えてしまったエルルによる、臨時魔法講座があったりもした。へー、【竜魔法】ってブレスだけじゃなくて、身体強化と魔力増幅にも使えたんだー。
…………なお、制御。うん。まさかフルパワーで全バフかけたらダンジョンの壁をぶち抜くとは思わなかったよ。あの壁、かなり硬かった筈なんだけど。仔竜大砲かな。もちろん弾丸は私自身。
まぁ迷路型ダンジョンの攻略は楽になったよね。推定ペナルティでひときわ強いモンスターが出てくるけど、私にとっては多少丈夫な的でしかない。むしろもっと来いと歓迎するぐらいだ。
「ところでお嬢」
『なーにエルル』
「この見るからに普通じゃない「空間石(石材)」って何?」
『…………なんだろうね』
「おいこら目を逸らすなこの降って湧いた系お嬢。今度は何やらかした!?」
『やらかしたことを決めつけないでぉあーっ!?』
ちなみに。そのひときわ強いモンスター目当てでダンジョンの壁を壊しまくってたら、何か入ってた。これに関しては完全に想定外だから顔をこねくり回すのを止めようかエルル!
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