第76話 7枚目:特大と普通の爆弾

 案の定、というべきか。私がネタ晴らしをすると、エルルは頭を抱えてしまった。土や財宝が砂になるって何。しかもそれで成長するって何だよ。とかぶつぶつ呟いていた。まぁ仕方ないね。

 とりあえず他に迷惑をかける可能性が皆無な谷底で、推定【吸収領域】の仕様を確認する意味もあって、財宝と土を掘って出て来た装備類をドラゴンの骨に集めて、一度ログアウト。

 ちなみにこの谷に戻るのに土曜日の残りログイン時間を使い切った(あとで更にエルルが移動した)ので、現在のログインは日曜日の頭だ。そう、イベント最終日である。……呑気にしてていいのかって? まぁ、今からあがいてもあんまり変わらないかなって。


「ほんとに見事な砂になったなぁ」

『第一声酷くない?』

「絶対何かどっか変な事になってぶっ壊れてるだろ、お嬢の【吸収領域】。いや、話聞いた時点で分かっちゃいたけど」

『理由が分からないから答えようが無いんだよねぇ』


 細かくログイン/ログアウトが出来るようになったので、最小単位の30分で再ログイン。検証が捗ると検証班が喜んでいた理由が分かるね。そして内部時間2時間で、結構積んだ筈の財宝とドラゴンの骨は綺麗な砂に変わっていた。

 その様子を見ていたらしいエルルはガッツリと引いている。どうやらこの謎の仕様変更、相当ぶっ飛んでいるらしい。うん、これで下手に検証班の人達にも相談できなくなったな。

 それはそれとして、大量の砂が確保できた。エルルは若干消化不良な顔をしつつも外へと出て蔦を確保。繊維にして編み込んで大きな袋を作り、樹液か何かを塗りこんで隙間を埋め、砂を詰め込んでアイテムボックスに放り込んでいた。


『それは別枠?』

「旅するんだったら呑気に畑とか作ってられないからな。それに、種族によっては良い手土産にもなる」

『なるほど』


 まぁ土壌改良にも使える良質な土材だ。確かに良い物だろう。畑作する種族はともかく、植物を大切にしていたり植物そのものだったりする種族もいるんだ。手土産としては最適かもしれない。重量を除けば。

 そしてその作業もひと段落したところで、暇つぶしに土を掘っていた私をがしっと捕まえるエルル。


「で。何が既に爆弾だって?」

『……ナンノコト?』

「大神殿で言ってただろ「もうあるから」って。で。何があるんだ?」

「キュー(わかんなーい)」

「今更チビっ子演技されても騙されないんだよなぁ」


 諦め悪く誤魔化しにかかったら、顔をこれでもかとこねくり回された。ウメボシされるような痛みと襟首掴まれてガックンガックン振られるような気持ち悪さが同時に来るから勘弁してほしいんだよねホント!!

 なので降参して、ぴっと大分整理整頓されたスキル一覧を開いた。


「………………まっじか……」


 それを見て、エルルは頭を抱えてしまった。ははは。うん。何となくそんな気はしてた。

 えー、とりあえず、スクロールの形になっていたスキルを順番にざっくりと説明していこう。お供はヘルプだ。



【○○属性魔法】

 【○○古代魔法】の下位互換。以上。普通のスキル。

 まとめて習得したからか中間属性もほぼコンプリートしているが、普通だ。

各武器・防具スキル

 【人化】のロックが外れたら使うよねって事で習得。これも普通のスキル。

 ルシルの時に聞いた話だと、鱗や牙や爪に補正が入るみたいだが、普通だ。

各通常生産スキル

 これも【人化】のロックが外れたら使うだろうって事で習得。当然普通のスキル。

 やるとしたら道具はエルルに借りる事になるだろうが、その内手を出すだろう。普通だ。



 まぁ、ここまではいいんだ。

 ……ここまでは。



【○○鑑定/判定】

 地質・水質とかいうのは「判定」で、植物・鉱物とかいうのは「鑑定」らしい。まぁようは物を見ればどういうものか分かるという物だ。通常の【鑑定】と違い、出てくる情報が細かいし「何年後の推測」とかも出てくる。

【特殊調理(○○)】

 これは多分食べる関係、取得した時のこと考えたら【偏食・宝石】が噛んでいるのだろう。今は【強化食・宝石】になってマイナススキルは脱している。うん。宝石や土も美味しく料理できるってことかな。魔力とか毒物とかも入ってるけど。

【魔力実体化(○○)】

 ……これは、何だろうね? ヘルプを読んでもよく分からない。【○○属性魔法】の中間含めた各属性と、空間と竜が入ってるんだけど。……先に上げた特殊調理で使うのかな?(棒読み)

【竜○加工】

 これは正しくはスクロールじゃなくて、スクロールのスキルを取ったら一緒についてきたスキルだ。○の部分には鱗とか皮とか牙とかが入る。玉とか宝とかは何だろうね? ……専用装備作成スキル、かな……?



 うん。まぁ。その。こんな感じだ。


「……この降って湧いた系お嬢どこに向かってんだ……!?」

『言い方もうちょっとなかった?』

「無い。つーかよくまぁここまで特殊技能系ばっか揃えたな!?」

『特殊技能かー』


 で、もはや恒例となったエルルのお説教解説によればー。

 まず、【○○鑑定/判定】っていうのは、専門の学者や調査チームのリーダーが極稀に持っているスキルなのだそうだ。見ただけで地形や謎の存在の特徴どころか活用法まで分かるとなれば、まぁその価値は普通に大きいよね。

 【竜○加工】に関しては「真なる竜の血筋が生産に興味を持つとこうなる」との事。国を象徴する品、つまり国宝級のアレコレを作る為のスキルなんだそうだ。実質皇族専用スキルらしい。うーん専用スキルが増えていく。


「特殊調理ナントカってのは……まぁ、その影響だろうなぁ……」

『普通は出来ない?』

「普通じゃなくても無理。というか、普通に出来たら少なくとも飢餓は駆逐できてるだろ」

『なるほど』


 で、【魔力実体化(○○)】は。


「使うな」

『あっはい』

「例の宝石作るスキルと一緒で、人前では絶っっっ対に使うな」

『はーい。……同類?』

「もっと悪い。いやスキルの能力としては良いんだが、争奪戦って意味だと格段に悪い」

『うわぁ』


 ……読んで字のごとく、魔力に形を与えるスキルなんだそうだ。エルル監督・監修の下で【結晶生成】と同じ条件で使ってみたら……はい。意思一つかつノーコストで魔法が撃てる指輪が出来ました。

 つまり、私が使える魔法が使えるようになるって事だ。しかもノーコストで、特に素質も選ばずに。すなわち誰にでも。

 うん! ダメだなこれは!!


「いいか。人前では絶っっっっっ対に使うな」

『使わない』


 エルルの溜めとその後のお説教も長かったし、うん、封印する方向で!

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