第57話 7枚目:スタンピートと戦闘力
えーリアル翌日だから、ゲーム内時間換算で4日後か。ナーシャさんから話を聞いてゲーム内4日後。
「キュー(わぁ大惨事)」
「お。お嬢、おはよう」
「キュ(おはよー)」
おやエルルが戦闘中だ、と
どうやら出来るイケメン士官軍ドラゴンであるエルルはこの4日で妖精族の首都に相当する場所に辿り着き、最前線の戦闘にバリバリ参加していたようだ。あ、流石に拳じゃなくて剣持ってる。真っすぐな両刃の、ロングソードかな。
「キュー?(最前線?)」
「その通り。まぁ、追加は無いみたいだからここらで一回撤退だけど」
びっ、と剣を振って血を飛ばし、鞘に納めながらこの言葉。んー実に頼りになる。しかしちょっと尋常じゃない数だなこれ。スタンピートってこうなるのか。まさに魔物の津波。
しかしすごい数だなぁ……とマイルドになってもまだなかなかインパクトが強い光景を見ていると、わらわら、という感じで、背中に2枚の羽がある4歳児ぐらいの背丈(等身は大人)の妖精族……かな? がエルルの後方から現れて、ごろごろ転がる蛇……? の解体に取り掛かり始めた。
蛇っぽい部分は普通に蛇皮として素材になる……のは分かるけど、人っぽい部分も心臓とか目玉とかは回収するのね……。で、あとは埋葬……埋葬? 棺桶がまじで桶みたいな形だ。坐棺だっけ?
「っで状況だけど、ってお嬢、聞いてる?」
「キュ。キュゥ?(一応。エルルがこの4日で移動して剣貰ってそのまま戦線維持してるんだよね?)」
「……まぁいいや。そんな訳で、装備が整うまで……つか、本気で振っても壊れない剣が出来るまでは現状維持、それが出来たら元凶探しにいく感じで。お嬢はどうする?」
「キュッ、キュー(私も現状維持でいいかな、エルルの懐ほど安全な場所も無いだろうし)」
「そりゃどうも」
ひょこ、と襟元から顔を出した状態で、エルルがベルトの左側に下げている剣を見る。妖精族産って事でいいんだろうか。しかし本気で振ると剣が壊れるとは……いやまぁ、だから竜合金とかいうものが出来たんだろうけど。
んー、けどちょっと待てよ。てことは、今現在進行形で丈夫な剣を作ろうと試行錯誤してるって事? 妖精族が?
「キュー(でもちょっと鍛冶してるとこは見たいかも)」
「……真なる竜の血族が生産作業に興味持つかー……いや、中身は違うの分かってるんだけど……」
「……キュ?(もしかして何か問題ある?)」
「無いっちゃ無いけどあるっちゃある。具体的には、普通の職人が勝てない相手になる可能性大」
……皇族って才能の塊か何かか? いや、どっちかっていうと種族値的なあれか? ていうか、進化ルートの幅の話か? なんかエルルと話してると色々な情報がぽろぽろ出てくるんだよなぁ。これが古代の知識ってやつか。
まぁそれはそれとして、生産職人ルートというのも悪くはない。実際なるかどうかは別として。
とか言ってる間に地面が花に覆われている場所まで戻って来た。『妖精郷』っていうのは花畑が基本のようだ。綺麗でいいけど、これで鍛冶とかどうやってるんだ? 言っちゃなんだけど、うん。燃えそう。
「げ、竜の兄ちゃんもう帰って来たのかよ!?」
「うっそだろ、あれでも持たなかったとか!?」
「次の剣何処やった!? 前線押し込まれるぞ!」
「あー、大丈夫だぞ。一段落ついたから小休憩しに戻って来ただけだ」
「「「何だ。それなら良かった」」」
行きついた先にあったのは、でっかい茸だった。エリンギっぽい白くて真っすぐなやつ。植物性だから大丈夫か? とは思ったものの、内壁が全部しっとりと湿っているようだ。そして炉と思われる場所は、その中央に設置してあった。
ただ、形が特殊極まる。何というか……鳥籠の上半分が床に設置されて、その中に炎が浮いている形? みたいな。がっつりとした囲いや、燃料らしきものが存在しない。
流石妖精族、めっちゃファンタジーだ。わくわくするね!
「ところで兄ちゃん、何その可愛いの」
「ウケる。子守りドラゴン?」
「リボンかな……ケープかな……その上からブローチ……」
そしてその中に、背丈は小学生高学年……ぐらいかな。4枚羽の妖精が3人いた。その視線が私に集中する。まあ気になるよね。出来るイケメン士官軍ドラゴンの服の襟元から、子猫サイズのチビドラゴンがひょこっと顔出してれば。
一人私を可愛くする方向に思考がすっ飛んでいるようだが、エルルはそれを気にせず、ひょいっと私の首筋をつまんで引っ張り出し、腕に抱え直した。
「やかましわ。これが俺のお嬢だよ。今の今まで寝てただけで」
「キュッ(どーもー)」
「「「予想以上に小さくて弱そう」」」
「まだ卵から孵って1年経ってないって言ったよな俺?」
息ぴったりだなぁ。
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