第207話 恐竜の街へ『戦闘開始』


 オレたちは、『ジュラシック・シティ』の戦いに備え、街の方へ前進していた。


 北上し、『ケルラウグ川』にぶち当たる。


 この川を越えた向こう岸に恐竜の街『ジュラシック・シティ』があるのだ。


 しかし、ここでオレたちはいったん立ち止まった。




 うん……。


 デジャヴュ……ってやつか……。


 オオムカデ爺やと一緒に、あの時、川を渡ったがゆえに……、挟み撃ちに遭い、爺やは死んだ……。


 二の舞を演じるわけにはいかない。




 「アイ! ヤツラの動きを『プラネタリウム・サテライトシステム』で映し出してくれ!」


 「イエス! マスター!」



 この『プラネタリウム・サテライトシステム』は、周囲に四散している超ナノテクマシンの監視の目を、一元化し、プラネタリウムのようにドーム状に立体視できるようにしたものだ。


 立体で映し出されるため、死角はなく、まるでゲーム画面のようにリアルタイムで理解できるのだ。


 今回は、全体像を把握するため、『ジュラシック・シティ』の周囲300ラケシスマイル(約500km)にわたって表示している。


 テオティワカン砦のスタンピードの時に使用したのとは、段違いの広範囲を映し出している。




 「おお! この魔法は……!? アイ殿はまったくとんでもない魔術スキルを使う……。どれほどの叡智を秘めているのやら……。」


 「アテナさん。恐れ多いお言葉です。」


 「ほお!? 噂に聞くコウハクータ合戦という戦場で活躍した『野鳥の会』の索敵スキルよりも格上なのではないか?」


 「え……? ヘルシングさん……。そのコウハクータ合戦とか『野鳥の会』って、まさか……?」


 「ああ。オレも直接見たことはないのだけどな……。風のうわさで最近、聞いたのだ。」



 ああ……。


 『テオティワカン砦』の誰かが噂を流したんだなぁ……。


 あの時、見ていたオセロトルさんかな?




 「とにかく、すごいスキルだこと……。だけど、今は感心している場合じゃあありませんこと?」


 サルガタナスさんが、先を促す。



 「そうだったな。アイ殿。この『絵』によると、『ジュラシック・シティ』から、大量の飛行型ディノエルフ……『翼竜種』が飛んできているのが見えるな?」


 アテナさんがアイに確認をする。


 「ええ。そのとおりでございますね。先の作戦通り、それらはコタンコロとアテナさんたちが迎撃にあたっていただきます。」


 「そうだな。心得た!」


 「我におまかせを!」


 アテナさんとコタンコロが返事をする。






 「我がご主人様! 出撃いたす! 敵は……、殲滅でよろしいか!?」


 コタンコロがオレに問う。



 オレの答えは……。


 決まっている。




 「やれ! ヤツラに因果応報という言葉を教えてやれ!」


 「御意っ!!」



 「ふむ……。印が鳳凰(ほうおう)……か? なるほど。ジン殿はコタンコロ殿に権限を与えた……というわけだな?」


 ヘルシングさんがなにか勘違いしているようだ。


 まあ、あまり変わりはないか……。


 たしかに、コタンコロがそのチカラをふるうのに、制限はしなくていいとオレは思っているのだからな。




 「では……、いざ! 出陣だ!」


 「「おおぉおおおおっ!! 」」


 アテナさんの掛け声で、アテナさんのパーティーもみんな、奮い立って、天馬(ペガサス)に騎乗した。




 「よし! じゃあ、オレたちも行こう! ついてこい! 『日本の銅像群』たちよ!」


 「オーケー、オーケー! オレたちも行くぞ! 『ヴァンパイア・ハンターズ』、総員、戦闘開始だっ!!」


 「「イエッサーッ!! 」」


 ヘルシングさんたちも準備万端のようだ。




 「じゃあ、私たちも北方から来るという『不死国』第五葷……、噂の竜公の顔を拝みに行きましょうかね……。」


 「「了解だ! 」」


 サルガタナスさんたちも、北方の防備に向かってくれる。



 ん……?


 待てよ。


 『ジュラシック・シティ』の北側へ回り込んでいくなら、デモ子を使って行ったほうがいいかな……?




 「サルガタナスさん! デモ子に所定の場所まで送らせましょうか?」


 「ん……? ああ! ここへやってきた時に使っていた魔法ってことね? ご安心を! 私も空間転移呪文『恋人よ窓を開け』を使いますから……。」


 「あは……、あはは……。そうそう! 『恋人よ窓を開け』ね。あの魔法、使えるんだね!?」



 ……『恋人よ窓を開け』ってなんだよ!?


 聞いた感じだと、空間転移系の魔法ってところか?




 (マスター! 『恋人よ窓を開け』……という呪文は、モルジアナの編纂した魔法書『イステの歌』には記載はありません! ですが、あの『赤の盗賊団』との戦いの時、敵のレッド・マントが使用していた呪文と同じものかと推測されます。ゆえにレベルは6以上かと推定できます。)


 (アイ……!? なるほど! ということは、サルガタナスさんは相当すごい魔法使いってことになるな?)


 (イエス! マスター! そのとおりです。このサルガタナスという女……、少々お気をつけください。)


 (たしかにね……。サルワタリと同じ情報屋『ヤプー』の者……ってだけじゃあ説明がつかないよなぁ……。)


 (まあ、ワタクシが目を光らせている以上、何もさせませんけどね。マスターはご安心くださいませ。)


 (了解! 信頼してるよ! アイ!)




 「なんと!? くふぅ……!! ワタクシめを! 信頼してくださると! ああ……。なんていう嬉しい響きのお言葉……。」


 アイがまた身悶えして喜んでいる。


 サルガタナスさんたちが、変な目でオレたちを見ている。


 まあまあ、少しの間、放っといてくれ……。




 「ジンさん……。と、とりあえず、私たちは行きますね?」


 「おいらも失礼しまぁ~っす……。」


 「じゃ、わしもお先に!」


 「ジン様。失礼しますね?」


 サルガタナスさんたちが、そぉっと離れて行く。



 「ええ……。お気をつけて! また後で会いましょう!」


 オレも声をかけた。




 「よし! じゃあ、オレたちも行くか……。」


 「イエス! マスター! 川からやってくる者どもは……、ヒルコ! まかせますよ!?」


 「あいあいさーっ! 僕にまかせてね!」



 「川を渡ってやってくる者どもは……、イシカ! ホノリ! 『銅像群』を指揮し、返り討ちになさい!」


 「イシカにおまかせであるゾ!」


 「ホノリにまかせるのだーっ!」




 いいぞ!


 ……ん?


 オレは!?



 (マスター! マスターは後ろでどぉーんと構えていてくださいませ!)


 (……え? いやいやいや! みんなが戦っているっていうのに、オレだけ高みの見物って言うわけにはいかないだろ!?)


 (そうですか……。ワタクシと一緒に指示を出していてくだされば問題ありませんけど……。)


 (いや! オレはじゃあ、『ジュラシック・シティ』の街の様子を直接、探りに行こうじゃあないか!?)


 (……まさか? マスター……。また無茶しようとおっしゃるのですか? はぁ……。)




 「デモ子! 『異界の穴』を開け! 『ジュラシック・シティ』へつなぐのだ! アイ! 様子見ができる場所を検索してくれ!」


 「はぁい! ジン様! またあたしとアイ様と三人で、お出かけですね?」


 「デモ子! ピクニックに行くんじゃあないんですよ!?」


 「あいあぁーい! わっかりました!」




 「では、行きますよ! 開け! 『異界の穴』っ!! 」


 デモ子がまた、手をかざし、空間をまるでジッパーを開けるかのように引き裂いた。


 目の前の空間に巨大な穴が空いた!


 うん。じゃあ、行くとするか。



 こうして、オレたちは『異界の穴』をくぐって、出口へ向かった。





 そこは……、『ジュラシック・シティ』の街の近くの小高い丘の上だったー。




~続く~



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