黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレの日常

ありふれた日常 第6話『モフモフ』


 黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。


 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。


 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたジンはなんと蘇生されてしまったのだ。



 そんなオレの安眠の秘訣は……モフモフである!


 モフモフ最高! モフモフ万歳!





 「ジン様ぁ! 何してるんですかぁ?」


 「おお!? ヒルコか。いやぁ……。何かいい『モフモフ』がないかと思ってね。」


 「なるほどぉ……。『モフモフ』かぁ! 僕はどうかなぁ?」



 ポワンっ







 ヒルコがメイド姿からスライムのような姿に戻った。


 水色のぽわぽわした身体。


 そう、ヒルコは粘菌が進化した姿なんだよね。





 ぽむぽむ……



 うーん! 気持ちいい!


 たしかに、このヒルコを抱き寄せた時の、ぽわんぽわんして、ひんやりした感触。


 最高にハイって気分にもなるけど、モフモフってやつとはちょっと違うよね。




 「うん。ヒルコは『ぽわぽわ』って感じだな!」


 「そっかぁ。『ぽわぽわ』かぁ! でも、いつでも僕を抱き枕にしてもいいんだよ?」


 「ああ! ヒルコ! ありがとな! じゃあ、引き続き、『モフモフ』を探すとするか!」


 「うんうん。僕も一緒についていくよー!」



 ジャン、タララララララ~♪ タ、ララララララ~♪ タラリラリララリラーン♪


 ヒルコが仲間になりました!




 オレたちはコタンコロの農園に向かった。



 すると、コタンコロが優雅に飛んでいるのが見えた。


 みるみるコタンコロが近くにやってきて、ふわさっ……っと地面に降り立った。


 フクロウの姿から、人間代の姿に成り代わり、駆け寄ってくるコタンコロ。




 「ご主人様! ようこそ我が農園に。歓迎いたしますぞ。」


 「やあ、コタンコロ。ちょっと、その羽根に触らせてもらってもいいかな?」


 「おお! もちろんかまいませんが……。いかがなされたのですか?」


 「うん。『モフモフ』を探してるんだよ。」


 「そうでしたか!? どうぞ遠慮なく!」




 ふわっふわっ……



 これは気持ちいいね!


 洗いたてのバスタオルとか、干したばかりのふとんのように、まさに『ふわっふわっ』なんだよ!




 「うん、コタンコロは『ふわふわ』って感じだね。」


 「そうですか。『ふわふわ』ですか。でも、いつでも添い寝致しますよ?」


 「ああ。コタンコロ。ありがとね。じゃあ、また『モフモフ』を探しに行こうか!」


 「はい。我もお供致します!」



 ジャン、タララララララ~♪ タ、ララララララ~♪ タラリラリララリラーン♪


 コタンコロが仲間になりました!




 「うーん。イシカとホノリは『モフモフ』とは言えないよなぁ。」


 「ですねぇ。あ! ズッキーニャはどうです?」


 ヒルコがそう言ったところに、ズッキーニャが姿を見せた。



 「はーい。私に御用ですか? 何のお話をしていたの?」


 くるりとした愛らしい瞳で見てくるズッキーニャ。




 赤い帽子をかぶった小さな可愛い幼女の妖精。


 それがズッキーニャだ。


 が、しかし、『モフモフ』と言うのとは少し違うくね?


 それに、幼女にオレが抱きつくのも……。なんだか絵的にまずい気がする……。




 「いや。今、『モフモフ』を探す旅に出てるのさ? ズッキーニャはモフモフしたもの知らないかい?」


 「『モフモフ』かぁ……。あ! モルジアナ先生はモフモフしてますよ?」


 「おお! モルジアナか! たしかに! 『モフモフ』してるな。」



 いや、待てよ。


 モルジアナの年齢は不明だが、モルジアナにオレが抱きつくのもなんだか嫌な予感がする……。




 「マスター。今日は何かお探しでしょうか?」


 急に後ろから声がしたのでオレはびっくりして振り向いた。



 「アイ! いや……。そうだね……。『モフモフ』をちょっとね。」


 「なるほど。『モフモフ』ですか?」


 「ああ。『モフモフ』だ。」


 「モルジアナはいけませんよ?」


 「え? ああ。たしかにね。ジュニアくんに悪いよね?」


 「はぁ……。まあ、そうですね。モルジアナはジュニアくんのこと好きなんでしょうねぇ。」


 「そうだよね。」




 「ふむ。ご主人様。ならば月氏種族のジュニアくんやアーリ殿はいかがですか?」


 「なるほど! コタンコロ。それだよな!」




 さっそくオレたちは『楼蘭』の街へ『家回エレベーター』を使って降りていく。



 おお! いるではないか! いるではないか!


 たくさんの『モフモフ』した大きなハムスターのぬいぐるみのような月氏種族たちがあちこちで楽しそうに過ごしている。




 「あ! ジン様だ!」


 「おお! ジン様! おはようございまチュ!」


 「ジン様ぁ!」



 あっという間にまわりをたくさんのハムスター……いや、月氏種族で取り囲まれた。


 これは、『モフモフ』の嵐!




 「あ! ジン様! 今日は何か御用ですか?」


 「ジュニアくん! ああ。その毛並み感……。うう……。我慢できなーーーっいっ!」


 「あぁっ!! ジン様! お戯れを!」


 「良いではないか! 良いではないか!」


 「あーれー!」



 オレはジュニアくんを抱き寄せ、目いっぱいモフモフした。




 「は……!?」


 何者かの気配を感じて、後ろを振り返ると……。




 アイとモルジアナがまさに鬼のような形相で、仁王立ちしていた。


 「ジン様……。これはいったい……?」



 我に返ると、まわりにいたハムスターたちをオレが散々っぱら、モフモフモフモフして、みんな倒れていたのだった。






 「あ、いや……。これは……。」


 「マスター……。『モフモフ』よりもワタクシの身体のほうをもっとお触りになってもいいのですよ?」


 「いや……。アイ、それ意味変わってね?」


 「いいえ! 違いません!」



 ちょっと待って。


 オレは純粋に『モフモフ』がしたかっただけなんだよおおおおおーーーっ!








 今日も『楼蘭』の街は平和なのであったー。





~続く~


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