第62話 ルネサンス黎明期 『砂竜を捕獲に行こう!その2』


 「イシカ! ホノリ! こらしめてやりなさい!」


 オレは本日二回目のあの有名な時代劇、『水戸納豆モン』の納豆モン様のセリフをドヤ顔で言うことになった。


 「はーい! 承知であるゾ!」


 「ほーい! わかったのだー!」




 ワニ達が一斉に襲いかかってきた……が、イシカとホノリがその前に立ちふさがった。


 飛びかかってきたワニをイシカがその手を前にかざした。


 「ロケット・ナックル・パァーーーーンッチィイイーーーッ!!」


 赤の制服姿のイシカが赤色のロングの髪をなびかせて、拳をワニに叩き込む。




 「きゃんきゃんきゃわぁーーん!」


 ワニたちが鳴きながらぶっ飛ばされる。


 さらに、ホノリが超絶回転しながら、蹴りの乱舞をワニたちに叩き込む。


 「わんわんわんわおーーん!!」


 ワニたちがさらに吹き飛ばされる……。




 ボスの女ワニが、必死に大剣を持ってオレに斬り込んできた!


 「何者だーっ!? きっさまぁーー!」


 いや……何者だって、さっきオレちゃんと名乗ったよね?




 「サイコ・ガーーーッド!!」


 超ナノテクマシンで見えない壁を周囲に張り巡らせてるんだよね……。


 あ……! ボス女ワニが……当然というか、サイコガードの壁にぶつかって止まった。




 「ぎゃわんっ!!」


 つか……ワニの鳴き声ってこんな犬みたいな鳴き声だったっけ……? その前に、ワニって鳴くんだっけ??


 ま、いいか。


 「サイコ・ローープ!!」


 オレは周囲の超ナノテクマシンにロープ状に直列つなぎになるようイメージを伝え、それをロープとして、ワニたち全員を縛り上げた。




 「くっ……殺しなさい! 辱めを受けるくらいなら……死んだほうがマシだわ!」


 「ヤヒロ様! おいたわしや……。このアメミット。ふがいない……。」


 「いやいや! オレ、そんな趣味ないんだよね!!」


 オレはワニのメスに興味なんてない。




 まだ疑いの目で見てくるけども、一応は落ち着いてくれたワニたち……いや、クロコ・クローラー族か。


 「とにかく、オレたちの目的はこの『無名都市』でもなければ、君たち種族でもないんだよ。砂竜を捕まえに来たんだよ。わかってくれた?」


 「あぁ……はい。それはわかったのですが、ジン様たちはいったい何者でどこから来られたのでしょうか……?」


 「オレたちはまあただの人間種族だよ。で、ここから北の方の砂漠の真ん中にあるオレの家から来たんだよ。」


 「ま……まさか!? ここから来たというと……。ダークネステントか? 古代の魔神が棲んでいるという……まさか、あの地から来られたというと……ひゃぁああああ!!」


 「きゃわああああーーん!」


 なんだか、みなが恐怖しているようだ……。


 いったい?




 (マスター! この砂漠がこのような砂漠になったのは、過去にあった大戦争の際の影響でございます。)


 (なんだって? そうなのか?)


 (はい。その際、ワタクシも『霧越楼閣』防衛のために、手を出してきた者どもを消滅させたことがあったので、そのせいかと……。)


 (え? 消滅って……。今、さらりと恐ろしいこと言いましたよ。この人……。)


 (防衛のためですよ。あくまでも。防衛のね。)


 (ま、いいか。それは。とにかく、ジュニアくんたち月氏種族もそうだったけど、この砂漠の民はオレの自宅をずいぶん恐れているってことはわかったよ。)




 「ま……魔神ジン様のおおせのままに。砂竜をなんとかしてくれるというのは我らにとっても、願ったりかなったりタタリモッケです。」


 「魔神様! どうか我ら種族におチカラをお貸しください!」


 うん……。これ、手の平返しの見本ってヤツだな。


 「ま、魔神じゃないよ。ジンだよ。まあ、目的は一緒だからな。砂竜の位置はわかるかい? アイ!」


 「イエス! マスター! ここから4km東の地点に大きな生体反応があります。」


 「おっけー。じゃ、そこに行こう。」


 オレがミニ・アイと話をしているところを見て、クローラーたちはざわざわしていた。




 「おお……。なんという魔道具か。」


 「索敵の魔道具? 見たことないぞ。あんなの。」


 「魔道具がしゃべるのか? ゴーレム? いや……。」


 ふむ。モバイル端末が珍しいようだな。




 「あ、君たちは安全なところに隠れておいたほうがいいよ?」


 「で……では、私だけは連れて行ってくださらぬか? 見届けておきたいので……。」


 クローラー種族の女王の側近ぽいアメミットがそう名乗り出た。


 「ああ。ま、そっか。ちゃんといなくなったのを確認しておきたいよね。いいよ。」




 こうして、オレたちとアメミットはラクダバに乗り、砂竜の生息地に向かったのだ。


 まあ、ラクダバの足ですぐだったんだけどね。


 砂以外なんにも見えない場所で、ラクダバを止める。




 「マスター! この地下に砂竜と思われる生物がいると推測されます。」


 「うん。どうやっておびきよせるかだが……。」


 「イシカも熟考するであるぅ。」


 「ホノリも考えるのだぁ。」




 オレたちは地中深くにいる砂竜をどうやっておびきよせようかと悩んでいたが……。


 「いやいや! 砂竜をおびき寄せるって……。そんな恐ろしいことをよく言えるな……。」


 と、一人だけ、いや一匹だけ違う心配をしているアメミットを見て、アイがピンときた様子でこう言ったのだ。


 「おとりを使いましょう。」


 「おお……。おとりか! それはいいけど、いったい誰を?」


 「砂竜はおそらく獲物の魔力を感知して襲ってくると推測されます。よって、魔力を思い切り垂れ流せば……、寄ってくる確率が上がると考えられます。」




 「ほお……。魔力を垂れ流すおとり……ねぇ……。」


 「魔力であるか?」


 「魔力なのか?」


 「ええ……。魔力……でございます。」


 オレ、イシカ、ホノリ、ミニ・アイはそう言いながら、アメミットをじっと見た。


 アメミットはその視線に気づき、悲鳴を上げたのだった。





 「きゃわーーーん! た……助けてくれぇ! 人殺しぃ!! いや、ワニ殺しぃ!!」



 そうして、超ナノテクマシンのサイコ・ロープで縛られたあわれなおとりのワニ……いや、クローラー種が叫ぶのを、オレたちはじっと見て待っていた。




 10分くらい経っただろうか……。


 なにやら、ぐらりと地面が揺れ、地響きがする。


 地面の中から何かが近づいてきているようだ。


 「大きいな! 地震か? いや、砂竜……かな?」


 「イエス! マスター! 砂竜と思しき生物が地下10m……5m……2m……。」


 アイがその距離を読み上げる。




 「来てます! 来てます! サンドパワー……いや、サンドドラゴン、砂竜です!」


 アイがそう言った瞬間、アメミットがこの世のものとは思えない叫び声を上げたのと同時に、その真下の地面がもっこりと盛り上がり、砂竜が姿を現した。


 「くっきゃわわわぁああああーーーーーっはーーん!!」


 「グロロロロロッロロロコオオ!!!」


 砂竜が唸り声を上げ、頭を持ち上げる。


 その大きさは全長20いや、30ドラゴンフィート(1ドラゴンフィートは5m、つまり150mくらい)はあるぞ!





 たしか旧鼠の話では、普通の砂竜で10ドラゴンフィート(50m)、ボスの大きさはたしかその倍くらいだと言っていたはず。


 この砂竜はボスの中のボスか。


 「グロログロロロロロォオオオオン!!」


 砂竜が吠えた。


 「ひぃいい! こ……こいつは砂竜のボス・ガレオンだ! この大きさは間違いない!」


 アメミットがそう叫んだ。




 ガレオンという名前なのか、それにしてはマニラ・ガレオン船の倍以上の大きさはあるな。


 まあ、ちょっと予想外の大きさだが、アイ先生、大丈夫っすか?


 (マスター! 想定の範囲内でございます。)


 (おお! なんだか聞いたことがあるような安心感のある言葉だな。)





 「イシカ! ホノリ! アラハバキに……メタモルフォーゼ!!」




 「了解であるゾ!」


 「了解なのだ!」




 イシカとホノリは、砂竜の方に近づいていき……。


 「フュージョン!!」


 と叫んだかと思うと、どこからともなく現れた巨大な機械のパーツがどんどん合体していき、巨大な全長100mの超巨大ロボット……つか土偶になったのだったー。




~続く~



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