第60話 ルネサンス黎明期 『3つの行動計画』
オレの考えたこれからの行動計画は全部で3つだ。
まず、1つ目は人工衛星『コロンブス』の撃墜された原因の調査と、周辺の巨大な飛行生物を捕獲して空路を開拓するという計画を合わせて進める。
これには、もちろん空を飛ぶことのできるコタンコロに当たらせる。
そして、2機目の人工衛星を飛ばす。
そうだな・・・。名前は『ヴァスコ・ダ・ガマ』だ。
偉大な貿易路を開拓した先人にあやかりたい。
これを説明したら、コタンコロは喜んで引き受けてくれた。
コタンコロはやはり賢い。一発でオレの意図を理解してくれたようだ。
「空の覇権は我が主(あるじ)のもとに!! 必ずや、道を開いてまいりますぞ!」
「おお! コタンコロ! やってくれるか!」
「もちろんでございます!」
次に、2つ目だが、この『霧越楼閣』より西の方の調査だ。
まず、実は、以前に調査目的で放った調査機械のほとんどが破壊されてしまっているということが、アイの報告が上がってきている。
加えて、アイが以前手なづけたという三匹の魔物がいるらしいが、呼びかけても反応がないとのこと……。
西の方はいまだ、未知のエリアなのだ。
アテナさんの世界地図によると、『小国コルヌアイユ』、『南北帝国』『火竜連邦』『地底ドワーフ国』『魔界』『法国』など、いろんな国がある。
まだこれらの国とエリアについて、オレは何も知らない……。
地理的なものも把握できていないのだ。
ここは信頼できるアイ自ら調査して来てもらい、かつ三匹の魔物を従えて来られれば、なおよしだ。
アイと地図作成班として、マッパ・マッパー、タダタカ、ピリー・レイスで向かってもらう。
そして、こちらも3機目の人工衛星を飛ばす。
名付けるなら……、『マゼラン』かな。
世界一周を初めて達成した偉大なる冒険者にちなんで……。
「アイ! 頼んだぞ。やはり、情報こそがすべてだ。」
「イエス! マスター! おまかせくださいませ! ねぇ? マッド・マッパー! タダタカ! ピリー・レイス!」
「もちろんですぞぉ! はっはっはー!」
「で、ございますな。拙者も及ばずながら。」
「わたくしめも……。参加させていただきます。」
うん。みんな。頼んだぞ。
最後の3つ目は、地上班だ。
この『霧越楼閣』と『楼蘭』の町及び交通網の整備だ。
それができれば、商業路の開通、街頭テレビの設置と情報発信の開始だな。
そのためにはBランクパーティー『ルネサンス』のランクアップも視野に入れ、知名度を上げることも必要になってくるな。
その足がかりとして、『円柱都市イラム』、『黄金都市エルドラド』から始め、『東方都市キトル』、それに『エルフ国』、『馬国』、『ヴァン国』へと広げていこう。
その手始めとして、南方の廃墟の町『無名都市』付近にいるという砂竜の捕獲に行く。
「じゃあ、『楼蘭』は住宅の建築や、農場や牧場の開拓の手伝いと防衛は、ヒルコ! 頼んだぞ!」
「おまかせくださーい。ジン様ぁー。」
「わ……わたしも、なにか手伝いたいです。」
「お!? ズッキーニャ。そうか。じゃあ、ヒルコと一緒に頼むな。」
「は……はい!」
ジュニアくんがここで建築班の月氏を連れてきた。
「ジン様。こちらの3名は月氏の建築家、ライゴウ、テッソ、ミイデラの3匹です。」
「ジン様。あっしはライゴウと申す。」
「テッソだ。」
「ミイデラでございます!」
ふむ。ガタイの大きい3匹だな。肉体派って感じがするね。
「おう。よろしくな。町の都市計画は、アイが計算してくれている。アイの指示に従って頼むね。」
「ワタクシの分身でございます、ミニ・アイを残していきますので、指示を出しますよ? お三人さん。」
「わっかりましたー! 姐さん。まかせてくださいやー。」
「了解だ。」
「よろしくお願いします!」
3匹が答えた。
「農業・牧畜も再開しますので、どんどん発展させていきマウス!」
アーリくん……、まあ、頼むよ。
「あと、モルジアナ。暇なときでいいので、ズッキーニャに魔法を教えてあげられるかな?」
「はい。ジン様。それはかまいません。じゃ、ズッキーニャちゃん。お昼前の時間に勉強しましょうね。」
「は……はい。わかりました。」
よしよし。オレには魔法は教えられないからな。
「あとは……。交通網を発展させるために、オレとイシカ、ホノリで砂竜を捕まえてくる。」
「イシカに全幅の信頼を置くのであるゾ!」
「ホノリにすべておまかせなのだゾ!」
「ああ! 任せたぞ!」
「もちろん、ワタクシの分身、ミニ・アイもマスターのお供についていきますよ!」
「え? あ、そうなの? そんなことできるのか。」
「はい。ワタクシはマルチタスクでございますから。」
おお! アイはさすがだな。こちらの期待を上回ってくるな。
「そ……、それほどのことではございませんよ……。マスターったら。」
アイが少し照れた様子で答えた。
そうすると、オレたちは、オレとイシカ、ホノリ、そしてミニ・アイで向かうことになるな。まあ、安心だな。
「ジン様。砂竜の捕獲レベルは、難易度はAランクの冒険者パーティーでも難しいと言われています。心配はないと思いやすが、十分お気をつけて。」
ジロキチが忠告してくれる。
「ジン様。くれぐれもお気をつけくださいませ。」
旧鼠もそう言ってくれる。
「ああ。任せてくれ。」
こうして、オレたちは、4つに分かれ、それぞれの仕事に取り掛かるのであったー。
◇◇◇◇
『霧越楼閣』のある砂漠の地域、『ダークネステント』のさらに南方、半ドラゴンボイス強の距離(約1000km)行ったところに古代の町の廃墟『無名都市』がある。
古代人は、この地を「虚空」を意味する「ロバ・エル・カリイエ」の名で呼んでいたという。
この町の地上部分は、砂漠の砂嵐で建物はかなり劣化し、風化してしまっている。
だが、この町は地下にも空間が広がっており、地下都市があるのだ。
地上部分には砂漠の魔物が棲み着いており、危険な地域となっているが、地下は非人類の「這って歩くワニのような爬虫類種族」が住んでいる。
都市の天井が非常に低く作られていて、人間ではなく彼らの身長を基準としており彼らには好都合のようだ。
また、地下の神殿には、住人のミイラや宝が隠されている。
彼ら「這って歩くワニのような爬虫類種族」は、ワニのような姿で這い回る種族、クロコ・クローラー種族だ。
地下水を利用し、かなりの文明水準で町は栄えている。
だが、この近隣に住む砂竜には彼らも悩まされていた。
砂竜は平気で地下空間にも侵入してくるやっかいな魔獣だったからだ。
クロコ・クローラー種族の女王、大ワニ・ヤヒロが暗闇で頭をかしげる。
近頃、この『無名都市』の近隣に棲み着いた砂竜が悩みの種だ。
「ぐぅ……。あのトカゲめ。我が町を荒らし放題してくれおってからに!」
「ヤヒロ様。やはり、ハスター様のおチカラをお借りしてはいかがでしょうか?」
そう進言したのはヤヒロの側近アメミットである。
「ぐぬぅ。そうだな。『海王国』にはそのために毎年、貢物を捧げておるからな。」
「まさしく、そのとおりです。」
「うむ。アメミット。ハスター様につなぎをつけてくれ。」
「かしこまりました。地下水路からすぐに使いを出しましょう。」
アメミットはそう言うと、急ぎ這いながら出ていった。
「しかし……。何やら嫌な予感がするのは気のせいだろうか……。遠い昔、『虚空』がこの町を支配していた時のような、虚しい気配がする……。」
そう言って、ヤヒロはその大きな尻尾をくるりと翻すと、自らの水浴び場へ入っていくのであったー。
~続く~
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