第29話 赤の盗賊団 『盗賊団討伐・開戦』
ホッドミーミルの大森林の入り口付近に小高い丘があり、その丘の上に『赤の盗賊団』の主力部隊が潜んでいた。
大将のサタン・クロース、巨漢の獣レッド・ノーズ、赤いマントがはためくレッド・マント、他10人の盗賊たち。
みな一様に赤い帽子をかぶっている。種族の証のようなものだ。
オレたちはその前の道を森に向かって進んでいたが、その右方の小高い丘の岩陰の向こうの敵には気づいている。
「矢をかまえぇ! 討てぇい!」
レッド・キャプテンの叫び声が聞こえ、矢が一斉に飛んできた。
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
正面の森林から好々爺とした老戦士レッド・キャプテンが率いるレッドキャップら30名が弓を仕掛けてきたのだ。
全部でレッドキャップ達の勢力は40名程度である。
40人の盗賊団・・・うん、どこかで聞いたことがあるような・・・。
だが、この弓矢の攻撃は想定内だった。
『大きな栗の木の下であなたとわたし、なかよく遊びましょう、大きな栗の木の下で!!』
吟遊詩人パック・フィンが瞬時に魔法の歌を歌い、樹木の盾がむくむく地面から生えてきて『アドベンチャーズ』をガードする。
『国国の、防人つどひ、船乗りて、別るを見れば、いともすべ無し!』
エリクトニオスさんと、マザーさんがこちらもシールド呪文を唱えて、それぞれ防御した。
キンキンキンキンッ!!
ジロキチが飛んできた矢を素早くその剣で切り落とした。
上手くジュニアくんを防御している。
オレたちはというと、ノーガードだった。
だが、その矢はオレたちに届く前に、すべて超ナノテクマシンがガードしていた。矢は弾き飛ばされた。
「な・・・なんだと!? 矢が効かぬ?」
レッド・キャプテンの叫ぶ声が集音モードにしていたオレの耳に聞こえてきた。
オレたちは竜馬を前進させ、レッド・キャップの集団へ攻め込もうとした。
「こちらも行くぞーー!!」
マザーさんが叫ぶ!
すると、まさにその瞬間を狙っていたのか、丘の上から、サタン・クロースの一団が駆け下りてきた。
「ものども!! かかれーーーっ!」
ドドドドドドォオオーーーッ!!
土煙を上げながら、オレたちを挟撃してくる。
だが、そのサタン・クロースの一団のさらなる背後から、風切り音とともにボウガンを射る者がいた!
ヴァン・ヘルシング! その人だ。
ヘルシングさんとグースカ衆の一部が迂回し、サタン・クロースたちの背後を突くように潜んでいたのだ。
加えて、ヘルシングさんのボウガンは剛弓であり、見ている間にレッド・キャップ達の頭や胸を射抜いていく。
バスッ! バスッ!
ビシツ! ビシッ!
「ぐわっ!」
「ぎゃっ!」
「ぐえ!」
どんどん、レッド・キャップたちが討たれていく。
「なんだと!? てめぇら! 悪い子はいねぇがぁ!?」
サタン・クロースが焦っている。
挟撃をする算段が、逆に挟撃にかけられるとは予想していなかったようだ。
「おめぇら! 悪い子だな? 悪い子は生かしちゃ帰さねえええ!!」
だが、サタン・クロースはその眼をランランと輝かせ、大声で叫んだ。
「殺るぞぉい! マント! ノーズ!」
「ぶおおおおおおおお!!」
「お許しが出ました! ・・・鏖だ!」
レッド・マントが恐ろしいまでの瞬速で、オレたちの方へ剣を両手にかまえ、斬り込んできた。
「ぐわーっ!」
「ぎゃっ!」
弓をかまえて矢を正面の敵に討っていたジム・スナイパーが斬られた!
魔法で出した樹木の盾ごと斬り裂かれたシド・サム。
「シドーーーっ!! ジムーーーっ!!」
サム・トムが叫び、いち早く、サムが剣で応戦体勢に入った。
そして、サタン・クロースが指を口にくわえ、口笛を吹いた。
すると、空の上から、火に包まれた鳥の悪魔が現れた。
鳥の姿の悪魔は、その口から炎を吐き、グースカ衆に襲いかかった。
マザーさんとマンさんが、声を揃えて驚いたように叫んだ。
「な!? 貴様はっ!」
「おーっと!? おまいらは・・・!? 誰だっけ?」
「いやいや、貴様! ヒート・デナシだろ!? 69番デナシ隊のヤツだろ!」
「おおとも! デナシ隊のヒート様とはこの俺様のことだ!」
「貴様っ! 我らグースカ衆を知らんのか!」
「知らんわい! えーい、めんどくせえ! 俺様の炎で死ぬがいい!!」
『雪が降る夜中も燃えろ燃えろペチカ、風も吹き始めた、夜はまだまだ明けなぬ、夢も深い夜は燃えろ燃えろペチカ、春の日待たれる、冬の夜は長い!』
ゴオオオオオォオオーーーッツ!!
ものすごい火球の魔法攻撃をその口から吐きグースカ衆を攻撃するヒート。
なにやら、グースカ集と因縁があるようだが、敵同士なのは間違いないようだな。
「ぶおおおおおおおおーーーっ!!」
巨大な獣となったレッド・ノーズがその巨体で巨大な丸太を持って振り回す。
ボウガンを討っていたヘルシングさんはボウガンを背負い、剣をかまえ、その丸太を受け止めた。
ガシィッ!!
そのパワーの前に、ヘルシングさんが思わず、片膝をついた。
「く・・・。なんて膂力だ。」
「ぶもぶもぶおおおーーっ!」
またしてもレッド・ノーズが叫ぶ!
辺りの空気がビリビリと響いた。
レッド・ノーズは思っていた。
自分が生まれたのは何かの間違いだったのではないかとー。
レッド・ノーズは、生まれ落ちてからその余りに大きすぎる力で自分自身の両親を惨殺してしまった過去を持つ。
自分自身を呪い、何もかもが絶望で、どうしようもないやるせなさと自分自身の力の捌け口のない憤りが押さえきれなかった。
死にたくて死にたくて、だが、その強靭な肉体が死ぬことを許してくれない。
レッド・キャップ種族からも疎まれ、離れに一人追いやられ、ずっと孤独に生きていたレッド・ノーズの前に現れたのがサタン・クロースだった。
巨漢の自分と対峙できる存在はそうはいなかったが、サタンはそのパワーも同等で、何度殴り合い、戦っても勝敗はつかなかった。
そして、毎日、戦闘の後には、無言で食料を恵んでくれるサタン。
ある日、レッド・ノーズがついに尋ねた。
「ど・・・どぼじで、おでに食べ物を恵んでぐれるの? おではなにぼしでないのに。みんながおでをさげるのになぜ、かばっでぐれるの?」
「ん? ああ、理由はねぇ。おめえが悪い子ではないからだな。」
「あ・・・あなだのなばえをおじえでほじい。」
「ああ、我はサタン・クロースだ。おめぇは何というんだ?」
「お・・・おでにはなばえはない・・・。生まれですぐ両親をおでがごろじでじまっだから・・・。」
「そうか。おめぇの力は我のためだけに使えばいい。おめぇは、鼻が赤いから、レッド・ノーズだ。これからはおめぇの名前はレッド・ノーズだ。」
「レッド・ノーズ・・・。ああ、おではこれからレッド・ノーズだ。うん。うれじい。これからはサタン・クロース。あなだのためにおでは力を振るうどする。」
こうしてレッド・ノーズはサタン・クロースとともに生きることを選び、常にサタンに従ってきた。
サタンが行くところにすべてレッド・ノーズは付き従い、いつしかサタンの守護獣と呼ばれるようになった。
「サダンのだめに、おではヂガラをふるう!!」
「くっ・・・。この化け物。なんてパワーだ。」
ヘルシングさんが防戦一方になってしまった。
グースカ衆も二手に分かれていたが、見事にどちらも抑えられてしまった。
(くっ・・・。アイ! 敵の戦闘力を見誤ったか!?)
(マスター! 敵の首領の首をあげれば問題ありません。ワタクシたちは、サタン・クロースを倒しましょう!)
(そうか。それもそうか。)
「こんな暴虐、許されない! サタン・クロース! 覚悟しろっ!!」
「ふん・・・。おめぇらに我らの気持ちはわかるまいっ!!」
サタン・クロースがバカでかい斧をかまえた。
オレもアダマンタイトソードを鞘から抜き放ち、見様見真似でかまえを取ったー。
~続く~
©万葉集(万葉集 巻20-4381/防人の歌)
©「大きな栗の木の下で」(曲/イギリス民謡 詞/作詞者不詳)
©「燃えろペチカ」(ロシア民謡歌詞 詩・緒園凉子)
※ミトラ砦・挟撃作戦の図です。ご参考にしていただければ幸いです。
外部サイトですが「みてみん」で「ミトラ砦・挟撃作戦の図」で検索してね!https://32086.mitemin.net/i453144/
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