第4話 プロローグ 『セカンド・ビッグバンの後』


 人類が滅亡していた……しかも、5千年前も前に……。


 それはあまりにショッキングな事実だった。




 アイの説明によると、高次元の世界から神の下僕たる天使軍団が現れ、地上には悪魔たちや龍神、妖精、魔獣、宇宙人など様々な種族が氾濫し、最終戦争となった。


 人類はほんの一部が、神の審判により救われたが、ほとんどの人類は悪魔や魔獣たちとともに滅ぼされたのだった。




 「ワタクシは、マスターの肉体を守るため、この邸宅ごと次元の狭間に緊急避難をし、この最終戦争に巻き込まれないよう防衛しました。」


 「なるほど……それでこの家が空中にあるってことになったのか?」






 「そうですね……かつてマスターがいた世界は、神魔・最終戦争の後、神に見捨てられてしまいました。そして、ワタクシ達が『次元の狭間』で、永劫に感じられるくらいの時間・56億7千万年が経ち、ようやく、マスターの魂を呼び戻すことに成功したのです。残された元の世界『ロストワールド』ではその間5千年の時間が過ぎ去っていた……ということです。」


 「時間の経過が違うってこと?」


 「その通りでございます。我々の避難した『次元の狭間』と元の『ロストワールド』では相対的に経過時間が違っていた……ということになりますね。」


 なるほど、この家が存在する次元空間は、あの有名な某国民的漫画に出てきた「●●と時の部屋」みたいなものか……。




 「黙示録の最終戦争ってことは、キリスト教が正しかったってこと?」


 「半分は正解で、半分は誤りです。正確には神なる存在……は、我々三次元の世界よりはるかに超高次元の意思を持った存在であり、かつて地球に存在した全ての宗教は全てが概ね正しく、単なる人類の解釈の問題に過ぎなかったということですね。神はこの世界からすれば全智全能の存在であり、唯一の存在でもあり、同時にあらゆる時空に数多の数が存在し得る八百万の神でもあった……という言い方が正確なところに近いかと。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、さらには、あらゆる神話はその全てが正しくもあり、他を否定することなく同時に全てが正しかった……と言えますでしょう。」


 「うーん、難しいね……。想像以上の存在だったってことかな……。」





 「そして、キリスト教で言うところの黙示録の四騎士が現れ、神の下僕……天使の軍団が最後の審判を下した……。

つまり、神を崇めたモノは救われ、否定したモノは徹底して排除された……。」


 「なるほど。つまり、最初から人類が理解できる存在の範疇ではなかったということか……。神の御心など人間が理解できるわけがあるはずもなかったんだな……。」


 「そのとおりです。アレの意思を理解することなど、我々の次元で可能なわけはなかったのです。」


 「なるほど……。じゃあ、もうこっちの世界はほっといてほしいね。選ばれた人たちだけ幸せな世界にいればいいのだからね?」


 「マスターのおっしゃるとおりです。この世界はマスターとともにこれから繁栄していくのですから……。」


 「いや。アイ。そんなオーバーな?」


 「いいえ。マスターの存在はこの世界を揺るがすものとなっていくでしょう……。」


 「そんなものかなぁ。」





 「オレの家族は……どうなったんだ?」


 「マスターのご家族は、第一次黙示録・神魔戦争の際、皆様、天に召されました。この世界での死を迎えられ、神のいる超高次元へその魂は旅立たれたと推定されます。」


 「ああ、天国に行けたということ?」


 「はい。第二次黙示録戦争が起こった際にはすでに、ご家族の霊的エネルギーはその後、この世界で検知することができませんでしたので、その可能性が99.999%で正しいものと推測されます。」




 「霊的エネルギー?」


 「そうです。素粒子エネルギーの生命波動の痕跡のことです。」


 「うーん、難しい言い方だけど、つまり、魂……ってことか……。」


 「俗な言い方でございますが、そうとも言います。」




 「それで、その後、黙示録戦争が第二次まであって、その結果、どうなったんだ?」


 「この次元はゼロへ帰し、神とその下僕たちはこの世界から去っていきました。そして、残されたこのロストワールドは、超高エネルギーの爆発が起き、新たなる世界を形成し始め、悪魔族同士の超魔対戦(デモノマキア)、龍や魔族の争い・火龍魔大戦(カルママキア)、精霊や竜族などの争い・精霊龍大戦(セレルマキア)、巨人族との争い(ギガントマキア)、火の属性と水の属性の争い・水火大乱(スイカマキア)、妖精王と深海王との争い・森水争乱(エルフカイマキア)などなど、あらゆる種族たちの争いが各地で勃発し、カオスエイジとなった1000年間(カオスミレニアム)を経て、世界はやがて落ち着きを取り戻していったと言われています。そしてさらに、約3千年が経過し現在に至っております。」


 「ゼロに帰ったのに、まだ滅びてなかったということ?」


 「そうですね。無からまた創造が行われたようです。詳しくはワタクシにもわかっておりません……が、新創造が行われた……『セカンド・ビッグバン』が起きたと言えるでしょう。」




 「神の不在のビッグバン……か……。」


 「元の世界の基準で言うとご主人さまが亡くなられてから約1000年後にいったんゼロに帰し、その後、約4千年を経た現在、ご主人さまが復活なされたのです!!」


 「それで、合わせて5千年……というわけか。」


 「その通りでございます。」




 「ワタクシどもはマスターの肉体を守護すると同時に、その『魂の欠片』を次元の果てまであらゆる時空を探し続け、そして欠片を集め続け、

そして、今日ようやくマスターを完璧な形で蘇らせることに成功いたしました。」


 「ああ……なるほど……それで56億7千万年かかったってこと……? かなり大変なことだったようだね……。」


 「いえ。大変などとは思ったことは一度もありません。なぜなら、マスターはワタクシの創造主であり、下僕たちにとっては親、いや神も同然のような存在でありますゆえに!」


 「我もご主人様に永遠に仕える所存でございます。」


 「イシカも!」「ホノリも!」


 「ぼ……僕もです!ジン様!!」


 みんなが口を揃えて興奮気味にオレに返事をしてきた……。


 「お……おぅ……。」




 な~んだか、最初から思ってたんだけど、こいつら、オレに対してめちゃくちゃ忠誠心があるんだよなぁ……。


 オレからしたら、趣味で作った人工知能プログラムに、飼っていた粘菌とペットのフクロウ……それに中2病真っ盛りにデザインし作った自主制作フィギュア……なんだよなぁ。




 「それで、今は外の世界はどうなっちゃったの?」


 「はい。ワタクシ達はマスターと常につかず離れずの状態でしたゆえ、まだ詳しくはこの世界の実態はつかめておりませぬ……が、複数の国が乱立する世界のようです。」


 「へー。人間は……もういないのかな……。」


 「いえ、どうやら生き残りもいる様子です。」




 「え!? 生き残りがいるんだ?」


 「そうですね……神に見捨てられた世界といえど、そのほとんどは神のきまぐれのようなもので滅せられ、この世界にその生命エネルギーを霧散した者たちがほとんどですから……。

また新たに人類は発生し、その種族は存続しているようでございます。」


 「そうか……。じゃあ、まずはこの世界のことを知ることから始めなきゃいけないな。オレの好きだった漫画とかアニメとか映画とか……またあるのかなぁ……。」




 「じゃあ、とりあえず、この周辺のことを調べるのが先かな? やっぱ情報が一番大事だよね。情報を制するものは世界を制す……なんてね。」


 「はい。かしこまりました。周辺の調査を開始いたします。」


 この世界って……異世界転生じゃないけど……異世界に来ちゃったようなもんだよな……。


 どんなものが存在してるか、まったくわからない未知の世界ってことだけは間違いなさそうだな……。





~続く~


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あっちゅまん


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