わたし達の邪魔をしないでください王子サマ!

オリビア

第1話

それは突然起きた。


「マリアちゃん!新作のパンすごく美味しいよ!うちのガキでも食べられるちょうどいい甘さだって!」

「本当ですか!よかったです、ここら辺のカレーパンって辛めの味付けだけで小さい子たちがなかなか食べれなかったので。」


今日はもう店じまいをしようと片付けてるところに、常連のお客さんが窓から声をかけてきてくれた。

嬉しくてルンルンと歌いだしてしまう。


その時外から誰かの悲鳴が上がった。


驚いて外に出ると馬車が女の子をひきかけている!


「だめっ!」


私は何もできないくせに道へ飛び出した。

女の子を腕の中に抱きしめ今から来るであろう衝撃に身をきゅっと縮め、迫り来る馬車を見つめる。

周りの人たちの悲鳴も、馬の唸り声も何もかもが遠のいて、全てがゆっくりと動いているように感じた。


(私、ここで死ぬの?まだ16歳なのに。

そうだよ、あと2年すれば結婚できるのに……

ずっと待ってくれてたルイスと結婚して……しあわせに………)


「ごめんね、ルイス」


涙と一緒に出てきた言葉の後、無性に悔しくなり、胸のあたりが熱くなってきた。


(やっぱりそう簡単に諦められるはずないでしょ!自分から助けようと飛び出しておいて守れずにはいさよならって馬鹿すぎるわ!)


自分への怒りを心の中で叫んでいると、それに呼応するように胸のあたりが熱くなってきた。



原因もわからない熱に不思議に思うはずだった。

だがその時の私は正常じゃなかった。だから

周りの草が少しづつ伸びていたのに気づかなかった。



馬車はもう私たちの目の前まで来ていた。その時、私と馬車の間に大きな魔法陣が浮かび上がる!



そこからはまるで絵本の世界のようだった。


魔法陣が大きくなったかと思うと、道端の草や花、そして脇の木々が勢いよく伸び、たちまち馬車に巻きつき、動きを止めていた。



その光景を最後に、私の意識はプッツリと途切れた。

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