四年に一度の祭り

@panko072

第1話え、異世界転生!

「ようこそここに神原くん。わしは……神とでも名乗っておこう」


小部屋のようでいて窮屈さを感じさせない不思議な空間。明かりがないのにはっきり見える室内。そして目の前にはまさしく仙人といった出で立ちで自分を神となのる老人がいた。


「あのーすいませんここどこですか?あと名前なんで知って……」

「ここは天国の一歩手前。名前を知っていたのわ神だからじゃよ」


俺は日本にすむ普通の高校生だった神原凪(かんばらなぎ)。だったなんて過去形で言うのは俺が一度死んでいるからに他ならない。

道路にボールを追いかけて車に轢かれそうだった子をかばい気がつけばここにいた。


「ということは俺はもう死んだってことですか?」

「ああ残念ながらな。しかし君にはチャンスがある。神原くん異世界に転生してみないかね?」

「異世界に転生?」

「近頃は創作物の間でも流行っておったから知っておるじゃろう?」

「はい。でもそれって創作物なんじゃ?」

「じゃがこうして実際にあるんじゃから事実は小説より奇なりとはよくいったものじゃ」


この場合微妙に使い方を間違っているような気もする。

「そこでじゃ、神原くん!君に異世界に転生して勇者となってもらいたいのじゃ!」


老人もとい神は俺の肩をつかみ詰め寄った。


「もちろん転生特典もつけてやろう!

どんな傷を受けても治る力に、どんな物でも切り裂く剣をつける。これでどうじゃ!?」

「わ、わかりましたよ!やりますって」

神の圧に負け了承してしまった。だけど、

「たとえ見知らぬ人たちでも困っているのなら助けなくちゃいけないですから!」

「見上げた少年じゃ。それではいますぐいってもらうとするか」


神は感動したようにうなずき、指で円を描いた。すると何もなかった空間に光の渦が現れる。


「さあ、神原くん。このゲートをくぐり冒険へ旅立つのじゃ!」

「はい、行ってきます!」

「あ、そうそう言い忘れておったがそこを抜けたら村がある。その村が君をサポートしてくれるはずじゃ!」

「ありがとうございます!」


そう言い残し俺はゲートへ足を踏み入れた……



「今回のは何日もつかのう……」



光の渦に足を踏み入れたと思ったらいつの間にか見知らぬ場所にたどり着いていた。

草木は整理されているものの日本より無造作にはえ、コンクリートで舗装されていない大地。近頃日本ではみることも少なくなった光景だ。回りには木造の民家がありここが異世界であることをうかがわせる。


「勇者様!お待ちしておりました!私はこのむらの村長のライザと申します!」


話しかけてきたのは五十代ぐらいの男性。以外と若い村長だ。


「我が村一同あなた様をお待ちしておりました。さあどうぞこちらに!」


ライザにつれられ近くの小屋に入る。小屋のなかには質素な料理と飲み物が準備されていた。


「今日は我が村四年に一度の感謝祭の日なのです。少ないですが、村中からかき集めた物でございます。どうぞ勇者さま歓迎祝いですお食べください!」

「でもこれいいんですか?俺が食べちゃって……」

「もちろんです。遠慮なさらずに、ささどうぞどうぞ」


少し申し訳ない気もするが、気づいたらお腹が減ってきた。意識してしまったらとたんに目の前の料理が美味しそうに思える。


「では、お言葉に甘えて頂きます!」


俺は目の前にあった骨つきの肉をとり、一口頬張った。シンプルな味付けだからこそ肉の旨味が口一杯に広がる。


「これ、美味しいですよ!」

「そ、そりゃあ良かった!さあどんどん食べてください」


そういわれ俺は果物にて…………


バタンと音をたて床に神原凪は倒れた


「ふぅ、もうでてきていいぞお前ら」


そうライザが言うと扉を開け小屋の中に若い男たちが入ってくる。その顔は一人としてにこやかではなく、罪悪感を感じているかのようだった。


「しょうがないんだ我々が生きるためにも……許してくれ……」


ライザがそう呟くと皆、無言で作業に取りかかった。



ふと気がつくと目の前に暗い顔のライザがいた。立ち上がろうとするとガキンと音が鳴り鎖がそれをはばむ。なぜか拘束されているようだ。


「あのライザさんこれは……」

「すまない」

「あの……」

「すまない」

「え?」

「すまない」「すまない」「すまない」「すまない」「すまない」…………


意識がはっきりしたら分かってきた。俺は今謎の男たちに取り囲まれている。だけどこれはどういう状況だ?俺は勇者なのでは?

ライザさんが俺に近づく。そして

俺の腹にナイフを刺した。


「うごっ?!」


声にならない声がでる。さらに回りの男たちにも俺に近づきナイフで、包丁で、のこぎりで、俺の肉を切り裂く。経験のない痛みに声をあげることさえできなかった。ああここで俺は死ぬのか。そんな思いが俺を埋め尽くす。過去の記憶が駆け巡る。なぜか神の言葉を思い出した


「どんな傷でも治る力を」


嘘だろ。それじゃこの痛みが終わることはないのか。いつの間にか男たちの手は止まっていた。


「本当に再生している!神の言うとおりだ!神は我らに永遠の食料をお与えになった!さあお前ら四年に一度の祭りだ!ひさしぶりの肉だ!」


食料?まさか俺を食べるのか?

いやだ……嘘だ……いやだ…いやだいやだいやだいやいやうそだいやいやいや嫌々いやだいやうそいやいやうそだいやいやいやいやいやうそだいやいやうそだいやだうそだいいやいやうそだいや……


俺の意識はここでまた闇に落ちた。



「見知らぬ人であっても困っているなら助けなければのう」


どこかで老人のような声が聞こえた





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