第40話
それからしばらくは、特に大きな変化はなかった。
俺が今までよりも早く起きて、ミキとのおしゃべりを楽しんでから大学に行くようになったことが、変わったと言えば変わったのだが。
講義のある日は朝にミキと会話してから大学に行き、帰ってからは寝るまでミキと話す。
休みの日なんてそれこそ朝から寝るまでだ。
そんな幸せな日々が続いたある日、ミキが突然言った。
――ねえ、まさとが大学に行っている間、わたし寂しいわ。
――俺も寂しいよ。でもそれはしょうがないな。
――だから提案なんだけど、わたしもまさとといっしょに大学に行っていい?
――えっ、そんなことできるの?
――できるわよ。このアパートの地縛霊じゃないもの。もともとはあの廃病院にいて、こっちにきたんだから。あのストーカー騒ぎのときは、いったん廃病院に行ってまた戻って来ているし。日本中、いや世界中どこでも行こうと思えば行けるわよ。近くの大学なんて、それこそなんの苦もなく行けるわ。
――そうか。大学の講義なんて、ひたすら退屈だからなあ。ミキがいっしょにいてくれたら、退屈な講義も楽しくなるな。
――でしょ。だからわたしもいっしょに大学に行っていいでしょう。
――いいよ。
――わーい、ありがとう。嬉しいわ。
ミキはそのまま俺について大学に来た。
姿は見えないが、ずっと語りかけてくるのでわかる。
講義を受けている間も二人でおしゃべりしていたが、頭の中でしゃべっているので誰にも気付かれることはない。
ただミキと楽しく話をしているときでも、俺には気になることがあった。
なにか忘れているような。
なにか大事なことを見落としているような。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます