第24話

今日も始まった。


恒例のやつ。


そして何十回かお互いの名前を呼び合った後、ミキがおやすみなさいを言ってその日は終わるのだ。



次の日大学に行くと、同じ講義の河本が話しかけてきた。


「昨日、熊田が俺のアパートに来たけれど、ここにはなにもいないと言っていた。でもあいつ、霊感があると言っているが、ほんとうにそんなものあるんだろうか?」


俺は「ある」と言いたかったが、もちろん言わなかった。


「さあ、どうだろううね。俺には霊感がないので、そこのところはよくわからんが」


「そうだな。俺にもよくわからんが。まあ、霊感があると言っているやつがここには幽霊はいないと言ってるんだから、それでいいことにするか」


「それでいいんじゃない。疑う根拠はないし。信じる根拠もないんだけど」


「まあ、それでよしとするか。いないということにしよう」


俺はあそこには七人の幽霊がいるとミキから聞いていたが、そのうちの誰一人河本にはついて行かなかったようだ。


まあ、あそこはけっこう有名な心霊スポットなので、わりと頻繁に人がやって来る。


そんなやつらにいちいちついて行ったら、七人いてもそのうちに一人もいなくなってしまうだろうし。


そもそも七人集まっているのは、ミキを除けば心霊スポットに面白半分でやって来る人間を驚かすために集まっているのだから。


ミキが毎回驚かすわけじゃあないと言っていたが、驚かすために六人も集まっているのに驚かさないときがあると言うのは不思議だが。


俺と河本のときも二人してミキを感じたこと以外はないもなかったし。


死んだことがないので幽霊の事情とか考えることはわからないが。


その後、河本とは他愛もない話をして別れた。



その日の夕方、アパートに帰ってミキに語りかけると、慌てたような返事があった。


――ちょっと待って。今とりこんでいるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る