第10話

だいたい居るのかどうかもわからない。


姿は見えないからだ。


そのまま大学に行った。


中国語の講義で河本に会った。


もともとこの講義で河本と知り合ったのだが。


講義が終わると河本が話しかけてきた。


「よう、変わりはないか」


「別になにもないけど」


「それならいい。ちょっと気になることがあってな。ずっと聞こうと思っていたんだが」


「気になることって?」


「ちょっと前に心霊スポットに行っただろう」


「うん」


「そこでだけど、屋上で感じたんだ」


「なにを?」


「なにかの気配を」


「なにかの気配?」


「そう。何かの気配だ。俺はオカルト好きだが霊感とかそういったものは残念ながらないんだ。心霊スポットもいくつか回ってみたが、未だに幽霊とかは見たことがない。いっしょに行ったやつが見たことがあるにもかかわらず。それなのにあのときはなにかの存在を感じたんだ。感じただけで見たわけではないが、屋上でお前を見たときから帰るまでずっとだ」


「そうなのか?」


「そうだ。確かに感じた。確実になにかがいたんだ。しかも俺が感じたなにかは、ずっとおまえのすぐそばにいたんだ」


「……」

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