救世主はドラァググイーン ~世界を救ってもカマわないかしら?~

武田コウ

第1話 プロローグ

 森の奥地にポッカリと口を開けた洞穴。中に入ると、ふわりと鼻孔を刺激する、胸焼けするような甘い香り・・・・・・。


 構わず奥へとすすむ。


 洞窟内は何故かほんのりと明るく、光源をもたずとも周囲を見通す事ができた。


奥に進むにつれて、甘い香りは強さを増していき、鼻で呼吸をするのが苦しいほどになってくる。


 やがて終着点が見えた。


 岩肌をくり抜いて作られた小部屋。いくつかの本棚と、簡素なベッドが一つ・・・ベッドの上に誰かが腰掛けている。


 黒を基調とした、ゴシックロリータ調な衣服を身に纏った少女。彼女は侵入者を確認すると、その黒くぬりたくられた唇をニヤリと歪ませた。


「やあ、ここまでやってきたのは君が初めてだ・・・ボクの山の民達は君に殺されてしまったのかな?」


 少年のような口調の少女の問いに、侵入者はゆっくりと前に進み出た。


 筋骨隆々の大男、しかしその強靱な四肢を派手な衣装で身を包み、顔には異常なほどの厚化粧を施していた。


「別に殺してはないワ・・・それで、アナタがアイツらが信仰していた ”神” ってやつ?」


 女言葉をつかう男の問いに、少年のような口調の少女が答える。


「その通りさ。ボクが ”神” だ」


 立ちあがる少女。その身長は男の半分ほどしかない。


「笑わせるワね・・・アンタ、”プレイヤー” でしょ?」


 男の言葉に、神を名乗る少女は薄く笑う。


「君もそうだという訳だね・・・面白い。では、やることは一つかな?」


「そうね、一つしかないわ」


 二人はゆっくりと歩み寄る。薄暗い洞窟の中、異様な容姿をした二人が静かに対峙した。













「殺し合いを、始めましょう」








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