四年に一度の改定なんですよね!?
鈴木怜
四年に一度の改定なんですよね!?
「諸君。本日集まってもらったのは他でもない。うちの会社のカードゲームのルール改定についてだ。どうするか、を議論しようじゃないか」
シンプルなデザインの机を囲むようにして置かれた椅子に四人が座るなか、一番年配の男がそう言った。一番若い男が立ち上がる。
「部長! 僕はそもそもルールの改定でさえも反対です!」
「どうしてだね」
「だってこのゲーム、ルール改定は四年おきってことで売り出してるじゃないですか! 前回の改定からまだ三年しか経ってませんよ三年!」
「仕方がないだろう! この三年でまたインフレしすぎたんだよ! それに今流行りの先行
「そんなこと言うなら部長だって大概でしょう!? なんなんですかルールに干渉するカードって! ターンの終了後にもう一度ターンを行うとか完全にトチ狂ってるとしか言いようがありませんけどそれを考えたのはどこの誰でしたっけねぇ!?」
「痛いところを突くんじゃない!」
二人が盛り上がるなか、取り残された二人のうちの片割れである、小太りの男がため息をつく。部長と呼ばれた男はそれを見逃さずに声をかけた。
「君はどうなんだね君は」
「僕っすか。僕は改定に賛成っすよ。正直どーでもいいです。かわいいカードにかわいい効果乗っけりゃ売れるんすよ」
ホレ見たことか、と部長が一番若い男をちらりと見る。
見られた男は最後の一人に先輩はどうなんですか、と声をかけた。
声をかけられたスーツの女はため息をついている。
「私は反対ですよ」
「先輩!」
「すがるなうっとおしい」
「……どうしてだね」
単純じゃないですか。と彼女は言った。
「今からプロモーションのアニメと雑誌とその他もろもろどれだけやればいいんですか?」
「そうだなそうだよな気の迷いで言ってすまんかった!!」
重々しい雰囲気を纏っていたはずの一番年を取っているはずの男がそこをすっかり見落としていたと言わんばかりの土下座をした。女はまた、ため息をついた。
「でも」
「でも?」
「代替案はありませんよ」
「だったらハンデスメタカードを作るとか」
「それだといつもと変わらないとか言われるじゃない」
若い男の意見を一蹴し、女は座り込んだ。
「そんじゃ制限カードの改訂にしといた方がいいんじゃないすか?」
大抵のカテゴリが輝ける環境にすればいいじゃないですか、と小太りの男が呟く。
「……仕方がない。それにしとくか」
と、部長が同調し、
「妥当なところですよね……」
と一番若い男が納得し、
「新コンセプト考えなきゃなぁ……」
と紅一点が遠い目をした。
数時間後、クソゲーと呼ばれる所以たるカードを軒並み規制した最新改訂が完成したころ、四人はへとへとになっていた。
「とりあえずこんなところでいいな……?」
部長がそう問いかけるとういー、だのへいー、だのそれでいいでーす、だのと気の抜けた返事が帰ってくる。四人の考えは一致していた。
それは、『あー……もうなんかつらい』というものだ。
来年から本気出す。
そう固く誓った四人は新ルールと新レギュレーションを設定するために席に座り直したのだった。今から頑張りたくはないが、今頑張らないと来年の首が怪しいと感じているは誰も同じなのだ。
制限改訂後、今度はデッキを墓地に送りまくる“デッキデスデッキ”とでも言うべきデッキが猛威を振るい、四人は頭を悩ませることになるのだった。
四年に一度の改定なんですよね!? 鈴木怜 @Day_of_Pleasure
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