第7章 第8話

先を行くパーティーは居ない。

いや、居たはずなのだが、道を譲られてしまった。

『ものすごくやりずらいなぁ…』

「なーに、もうボス部屋だ。

 ここをクリアする迄のちょっとの間なんだから、有名人の立場を楽しめば良いんだよ。」

「私はもっとギャラリーが多くても良いんですけどね!」

先頭に立ち、寄ってくる敵を斬り伏せながら話すHoneySword。


なんでも自分がErsterSpielerと同じパーティーでプレイしているのが、他の親衛隊にも伝わる事でアドバンテージが得られるらしい。

派閥争いというのは、どこにあっても面倒くさいもんだ。


ボス部屋を前にして、ErsterSpielerが後方に振り返る。

「こんなところまで、あたし達に会いに来てくれてありがとう!

 ひとりひとり挨拶して回りたいところなんだけど、

 訳あってすぐに12エリアに戻らなきゃいけないんだ。

 申し訳ないけど、ササっとクリアさせてもらうよ。」

さすがに慣れたものだ。


「あ、あの!フレカだけでも交換ってできませんか!」

ギャラリーの先頭にいたプレイヤーが声をかけてくる。


「ごめんね。フレカは、あたしが対戦して楽しかった人とだけ交換するようにしてるんだ。

 枠はまだまだ余ってるから、12エリアまで追いかけてきてくれれば対戦には応じるからね。」

がっくりとうなだれるプレイヤー。


「さー、せっかく譲ってもらったんだし、ササっとクリアしちゃおう。」



ErsterSpielerに促され、ボス部屋に入る。

「あたしのスキルはモンスターとの対戦には不向きだから、ボス戦は任せたよー。」

ひらひらと手を振るErsterSpieler。

『そういえば、エアスタさんのスキルって何だったんですか?』


「まぁっ!女の子の秘密をサラッと聞き出そうなんて!」

『あっ、別に聞き出そうなんて』

口元に手を当て、大げさに驚いてみせるErsterSpielerを見て、慌てて否定すると

「なーんて、冗談だよ。

 君には教えちゃう。

 残りの奥さん達はー…他人に広めたりしないでね?」

3人揃ってコクコクと頷く。


「じゃあ、ちょっと見てて。」

そう言って、出現し終わったボスに向かって歩き始める。

「あたしのスキルは、★★★★大地の揺籠。」

そこまで話したところで、ボスの攻撃が直撃してしまう。

「エアスタ様っ!?」

HoneySwordの叫び声が響く。


「あー、大丈夫大丈夫。

 っと、説明は続けるからさ。

 後は任せるよ!」

何事も無かったかのように戻ってきているErsterSpieler。

HPも大して減っていないし、攻撃くらいながら普通に歩いている。


入れ替わるように前に出る。

見た目は完全に象だ。だが、二足歩行している。

両手の三日月刀と振り回される長い鼻を掻い潜って攻撃するのか。

「見てもらった通り、あたしのスキルはダメージを90%軽減する。

 HPが満タンのときに限るんだけどね。」


振り回される鼻を避けつつ近寄る。

『攻撃貰った時に硬直が無いのもスキルのうちですか?』

「よく見てるねー。さすがあたしの旦那様。」


右の三日月刀の振り下ろしをステップで避け、

左の三日月等の横なぎをメイスで殴り弾き返す。

「あれは、スキルを強化して追加されてる効果だよ。

 HP満タンの時は、被ダメージ時に硬直無く動けるんだ。

 俗にいうスーパーアーマーってやつだね。」

『なるほど。それであんなにHPを満タンにすることにこだわってたんですね。』

「そういうこと。」

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