第5章 第15話

さらに2回ほど対戦したが、どれも成すすべ無く負けてしまった。

一瞬での入れ替わりについて、どうしても種明かしをしてくれず、

要所要所の同時攻撃で的確に入れ替わりを決められ、

じわじわと、だが確実にHPを削り切られた。


「スピ、スキルの強化効果分かった?」

Seregranceの提案で、一度宿に戻って話し合いとなった。


『…さっぱり分からん。それより2人がやってた、一瞬で前後が入れ替わる連携。

 あれに完全に惑わされっぱなしだ。』


俺の言葉に、Seregranceとドリッピーは顔を見合わせクスクスと笑う。

「私たち、特に何もして無いわよ。」

「ねー。」

『いやいや、あれだけ派手に揺さぶっておいて何もしてないは無いだろ。』


「というかー。」

ドリッピーがこちらを向いて言う。

「僕たち、もうスピさんの強化効果分かっちゃったよ。」

『えっ、まじで?』

「気付いたのはセレさんだけどねー。」

「本人だと気付かないのかしらねぇ。」


訳が分からない。

これまでの対戦であったことというと、2人の前後が入れ替わったことと、

防御していたはずの攻撃を何度もくらったことくらいなもんだが…

『はっ…まさか一定確率で防御できなくなるとか…』

「それじゃ弱体化じゃん。」

『だ、だよな。』


「ねぇ、スピ。あなた普段の硬直キャンセルって、若干先行入力気味なんじゃない?」

『え?先行入力?どうだろう。』

考えてみる。


装備変更の硬直の場合は関係ないが、ガードさせたり武器を撃ち合う場合の硬直については

たしかにモーションの終わり際から、次の動きを始めようとしているかもしれない。

一瞬の粘りというか、引っ掛かりのようなものがあってからキャンセルが効く感じだ。


『確かに先行入力気味だね。0.1秒とか0.2秒くらいだとは思うけど。』

「やっぱり。それが原因なんでしょうね。」

うーん…相変わらずどんな強化効果なのか、さっぱり分からない。


「スピ、あなたの強化効果って硬直以外も全部キャンセル可能になる事だと思うわよ。」



「遠目から見てて気付いたんだけど、あなた攻撃途中のモーションをキャンセルして

 別の動きが始まってるのよ。

 私とリッピーさんが入れ替わってたとか言ってたけど、私たちから見ると

 あなたがクルクルと前後に回ってたの。それも一瞬で。」

「そうそう。最初の対戦で僕の攻撃防ごうとしてた時もさ。

 やべー、武器の撃ち合いになる!

 と思った瞬間にスピさん後ろ向いて走り出してたもんでさ。

 僕の攻撃そのままくらってたよね。」


「最初なんで当たったのか訳わかんなかったんだけど、

 攻撃モーションの途中でキャンセルしちゃったせいで

 本来発生するはずの僕の武器との撃ち合いが発生せずに、

 後ろ向きに走り出し瞬間に僕の攻撃がそのまま届いたって事だと思う。」

「これは私の想像だけど、硬直じゃない行動をキャンセルすると

 その行動を起こそうとしている方向に対して正面を向いてしまうんじゃないかしら。」


1戦目、ドリッピーの剣を槍で跳ね上げてから、Seregranceに駆け寄ろうとした時。

ドリッピーは正面に居たはずなのに、気が付いたら後ろから斬られていた。

Seregranceに向かって走り出す、という行動で槍の跳ね上げをキャンセルしてしまった

ということだろうか。


『つまりキャンセルが早すぎて、本来できてるはずの防御までキャンセルして

 わざわざダメージもらいにいってた…ってことか。』

「そーゆーことだと思うよ。」


『後ろに盾構えて防御しつつ、前に対して武器で攻撃、なんていう行動も

 盾での防御がキャンセルされてたってことなんだろうか?

 一歩間違うと弱体化だな。』

「一歩間違えば、ねぇ。とりあえず、今は一歩どころか二歩三歩間違えてるんだから、

 一歩になるくらいまでは練習しないとねー。」

『相変わらずセレが容赦ねぇ。でも、確かにそうだな。

 このスキル使いこなすには、攻撃モーションの開始から攻撃判定発生までの時間を

 完璧に身体に叩き込まないとダメだ。』


「スピさんの性格だんだん分かって来たんだけど、その練習これからやるって事だよね?」

『さすがに全部の武器はやってられないけどね。俺が持つ中で最強の武器であるメイスと、

 モーションと硬直の長さが弱点である大剣。とりあえず、この2つはやっておきたい。』

「やっぱりねー…で、そこには誰が付き合うの?」

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