第5章 第13話

「はー、なるほどな。やる方も大概だけど、仕込む方も大概だな。」

『それは同感だ。』

「スキルアイコンも、★★★★★は透明色ってことなのかもな。」

『ああ、なるほど。透明か。』

「しかし、そう言うことならそのスキルが強化されるとどうなるのかは、

 使い込んでみないと分かんないな。」

『だよなぁ。』


「あんたの動画は残されちまってるし、研究して本気で倒しに来る奴らも出てくるだろ。

 早いとこ強化効果を理解しておくのをオススメする。

 ただし、慣れすぎるなよ?

 一度研究対象になると、いつどこで見られて録画されるか分かったもんじゃない。

 ヤバイ相手と戦っていて、自分がしっかり研究されてると分かった時だけ

 状況の打破として使うようにした方が良い。」

『それにシンカーにアクセサリ返却したら使えなくなるしな。』

「まぁ、それはいつになるか分からないがな。

 ともかく、使い慣れるのは厳禁だ。」


「俺はキャラを作り直す前は★★★守り上手を使ってたんだが、

 このスキルを強化すると、両手武器の弱防御状態でも

 相手をのけ反らせることができたんで、すげー便利でな。

 調子にのって使いまくってたら、見事に対策された。」

『痛い目にあってるからこその、重みのある言葉ってことか。』


「ああ。ネタがバレてなきゃ一発逆転だってあるくらいの、

 セオリーにない行動が取れるはずだ。だから、極力隠すといい。

 あと、嫁さんのスキルは死者蘇生なんだろ?」

『それも動画でバレてるよなぁ。』


「なら状況に応じて嫁さんとトレードして上手く使いな。

 死者蘇生を強化するとHP満タンでの復活か、戦績悪化無しの蘇生か選べるようになる。」

『まじかっ!』

「戦績悪化無しの蘇生は1日1回だけどな。」


さすがに制限はあるか。いくら死んでも気にならないゾンビアタックとかされると

対人戦も何もあったもんじゃなくなるだろうしな。

だが1回とは言え、ドリッピーのリスクを下げられるのはありがたい話だ。


『セレとの共有を許してもらえるのは、すげーありがたい。大事に使わせてもらうよ。』

「死んで奪取されましたってのはやめてくよ?」

『はは。その場合、先にスキルが狙われるんじゃないかな。』


「雑談はともかく、俺の用事はこれだけだ。

 これでもあんたの事は応援してるんだぜ。頑張ってくれよな。じゃあな。」

『ああ、ありがとう。頑張るよ。またな。』


そしてSeregranceとドリッピーに、Thinkerとの会話ついて相談する。


「さっさと先に進むか、ここで調べてから行くか。ちゃんと考えないとね。」

『そうだよなぁ。』


「ボクは、ここでしっかり調べてから先に進む方が良いと思うなぁ。

 既にスピさんが噂になり始めてるってことは、急いで先に進んだとしても、

 どこかでエアスタさんに辿り着くより先に、トラブルに捕まる可能性が高いと思う。

 だとしたら、先に自分の能力をしっかり把握しておいた方が良さそうじゃない?」

「多少の人数差なら今のままでも負けることは無いとは思うけど、

 この間みたいな大人数で、しかもしっかり対策されちゃうと、さすがにきつそうよね。」


相談とはいえ、3人ともほぼ意見は一致している。

ここでの足踏みに納得するための打合せのようなものだ。

このエリアを抜けた瞬間、次のトラブルが待ち構えている可能性だってあるのだから

打開できる手段は早めに手に入れておいて損は無い。


「それじゃ、さっそく町に戻って非公開闘技だねっ!」


**********


「さーて、何から調べる?」

闘技場に入る前に、宿に入り打ち合わせをしていた。

闘技は5分という制限があるので、何度も出入りするのは面倒なのだ。

事前に予想を立てて調べていきたい。


『今の能力が強化されるってことだよな。

 とはいえ既に硬直は無くなってるんだから、0を強化したところでなぁ。』

「じゃぁ、硬直以外で考えてみましょうか。」

3人でしばらく頭をひねる。


「神速ってスキル名だし、移動速度とか攻撃速度が早くなってるとか!」

『はっはっは。それは俺がこのスキルを手に入れて一番最初に調べたことだ。』

「ぐっ…スピさんと同じセンスってことか…」

『そんな嫌そうな顔されると傷つくぜ…』

「まぁまぁ。スキル強化で改めて考えてる事なんだから。

 速度向上系はすぐに分かりそうな事だし、調べてみましょ。」


「矢の速度が早くなる、なんていうのはどうかしら?」

『ただでさえ早いのに、これ以上早くなると恐ろしいね。』

「あー、でもそれ魔弾の射手っていう★★★★スキルがあるよ。」

「あら、既に他のスキルとしてあるのなら違いそうねぇ。」


あーだこーだと話した結果、いくつか考えついたものを調べるため非公開闘技を始める。

アクセサリを何度も付け外ししながら、闘技場を走り回ったり、矢を射ちまくったり。

連続使用制限のある、お高いポーションを飲んでみたりと試していくが、どれもハズレ。


『分からんなぁ。』

「分かんないわねぇ。」

「分かんなーい!』

異口同音に声が揃う。


「スピさん、装備するアクセサリ間違えてたりしないよね?」

『間違えるも何も、シンカーから借りたの以外持ってすらいないからな!』

「それもそうかー。じゃぁやっぱり予想とは違うってことだねぇ。」


「しょうがないわね。実戦しましょ。」

『戦闘向きのスキルだしなぁ。確かに戦ってれば何かに気付くかもな。』

「おー!スピさんとの対戦って初めてだ!」

『そういえば本気の対戦ってしたことないな。』

「まー、勝てる気はしないけどねー。セレさん、どっちから行く?」


「リッピーさん、何言ってるの。もちろん2人同時に行くのよ。」

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