第3章 第14話

さっき倒したラインハルトを先頭に、集団がやって来る。

2…5…10…16。

1パーティーが最大8人だから、丸々2パーティー分か。

また短時間でよく集めたものだ。


「てめー、さっきはよくもやってくれたな。」

『おぉ、すげー決め台詞。漫画かドラマの世界だ。』


「…」

『次は、いまさら謝ってもすまねーぞ、とかかな。

 あっ、これはさっき既に言ってたっけ?』

「ちっ…こっちに何人いるのか分かって」

「…おい、ラインハルト。

 悪いことは言わねーからやめておけ。」


ザ・悪人の決め台詞を遮る声。

奥の方に居た痩せた男が話しながら前に出てくる。


『あれ、シンカーじゃないか。』

「スピラーさん、どうも。

 あんたが相手って時点で何となく読めたぜ。

 おい、ラインハルト。

 おまえ、随分と端折って伝えやがったな。」

『どういうことだ?』

よく状況が掴めないのでシンカーに問いかける。


「あんたも知っての通り、俺はスキル狩りやってるし、

 ここにいる連中もやりたいようにやるのにPKを辞さない。

 ノーマナー行為とか言われるが、

 ゲームのルールで認められてるんだから

 別に問題無いだろって奴らだ。」

『あぁ、まぁ別にいいんじゃないか。』

「はっ…あんたくらい強けりゃ、

 そうやって簡単に割り切れるんだろうけどな。

 こんな事を当たり前にやってると、

 普通のプレーヤーからは当然毛嫌いされるんだよ。」

そりゃそうだろうな。


「それでも俺たちはまだ、

 少なくともゲームを楽しむ目的でやってる。

 スキル狩りは、強いスキルを手に入れたい。

 ボス待ち狩りも、とにかくボスを多く狩りたい。

 目的はあくまでゲームの趣旨に沿ってるはずだ。」

シンカーが、俺を見て続ける。


「だがな、ダンスプレーヤー中には初心者が苦しむのを見て

 楽しみたいという目的だけで、いじめやすい初心者の多い

 このエリアに常駐してるような奴らもいる。

 そんなのはもう、ゲームを楽しんでるとは言えねぇ。

 奴らとはしょっちゅう小競り合いが起きているんだが、

 それがたまに燃え上がることがあってな。

 そんな事が繰り返されるうちに、

 大人数での抗争にまで発展するようになって、

 今回のように人が集められることがあるんだよ。」

ゲームと言えど、人同士のコミュニケーションだ。

同じような境遇の人間でコミュニティもできるだろう。


「今回も、潰したい奴がいるから手伝ってくれって

 ラインハルトから要請が来たわけなんだが、

 まさかの相手があんただったということだ。」

そこでシンカーが振り返り、ラインハルトに向かう。


「おい、ラインハルト。

 今回の件、この人に仕掛けて返り討ちにあっただけだろう?

 で、俺らにそれを黙ってやがったな。

 この人が相手なら、わりーが俺はあっちに付くぜ。」

「俺もだな。」

同意の声をあげて、リックも出てくる。


「ただし、言っとくぞ。

 俺ら以外の、この場にいる全員でかかったとしも、

 この人には勝てねーぞ。」


「なんだ、おまえ、たかが2人にビビってんのか?」

ラインハルトがシンカーを睨みつけながら言う。


「ビビる?それ以前の話だ。そもそもスジが違うだろう。

 もっとも、スジが通ってたとしても、

 この人が相手なら俺はやらねーけどな。

 この人にはかなわねーと認めさせられたからな。

 俺とリック、2人がかりでこの人相手に、

 手も足も出せずに倒されたよ。」

その声を聞き、周りがざわつきだす。


「まぁ、確かめたければやってみるといいさ。」

そう言って、シンカーはボス部屋の扉に歩み寄ると、扉脇の壁に背を預け腕を組む。

「俺は傍観者でじっくりとあんたの強さを眺めたいんだがな。」

シンカーの後を追うリックは、笑いながら言う。


『なんか随分と持ち上げられちゃったけど…

 ボス復活まであんまり時間も無いし。

 やるならさっさとやろうか。』

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