第3章 第13話

『ふー、なんとかなったなぁ。』

「ちょっと、スピ。

 無用な対人戦は避けるんじゃなかったのー?」

『いや、だって向こうから寄って来るんだもの…

 しょうがなくね?』

「まーね。

 あれで順番譲ろうとしたら、私が攻撃しかけてたかも。」


ザッキーが倒れ、思わず距離をとったラインハルトと翔。

その2人を横目に、談笑を交わす俺とSeregrance。


「おい!ザック!ダメージ貰っても良いとは言っても、

 油断しすぎだ!死んでどうする!」

ラインハルトが叫ぶ。


「い、いや、違う!

 確かにHPが減ってはいたけど、1発しか貰ってねぇ!」

幽霊状態のザッキーが反論。


「ちっ、HP管理もできねーのか。てめぇクビにするぞ!」

苛立ちを隠さずラインハルトが吠える。


「てめーら、調子に乗りすぎだ。

 無駄な1時間を使わせやがって。

 もう謝っても済まねーぞ。」

Seregranceと顔を見合わせて会話。

『どうする?じっくり対人やってみる?パーティー組んでるし、

 仮にセレが死んでも俺が倒せば負けはつかないよ。』

「そうねぇ…でも、どうせこのままボス待つんだから、

 勝てるかもって期待持たせるような倒し方しちゃうと

 後々面倒になるんじゃない?

 街で復活したこの人達がまた絡んでくるかもしれないわよ。」

『それもそうか…じゃ、さっさと片付けちゃうか。

 最初のクリティカルだけよろしく。』

「うんうん。2度と相手したくないって思わせるくらい

 コテンパンにやっちゃいなさいっ!」

ビシッ!っと俺を指さして決めポーズ。


それを見てラインハルトが叫ぶ。

「誰に物言ってんだぁっ!」

また、まっすぐに突っこんでくるラインハルト。

俺がメイスを構えた瞬間


キィンッ


Seregranceの矢がラインハルトにクリティカルヒット。

まっすぐ向かってくる相手なら、弓でクリティカルを狙うのも容易い。

一瞬動きが止まるのを見逃さず、メイスを叩きこむ。


ザシュッ


『セレ、残ってたらよろしく。』

言い捨てるとラインハルトの生死には目もくれず、すぐさま翔に向かって駆ける。

『command use skill slot number two end』

固定型の火を翔の目の前に出現させる。

追従型を顔の目の前に出せれば、究極の目くらましになるんだが、

さすがに制限されているのか配置できない。

なので、一瞬の目くらましとしての固定型だ。


「うわっ」

視界を塞がれた翔は、案の定後ろに飛びのく。

そこに分かりやすく四方を囲むように火を配置。

当たってもダメージは無いのだが、知らないプレイヤーだと戸惑うだろう。


「くそ、なんだこれ!」

片手剣の翔を見て、大剣を選択。

『ほら、攻撃行くぞ。』

宣言をしてからの大上段。


ガキンッ

おっ、ちゃんと盾で受け止めてる。

即座に大剣を振り上げ、振り下ろす。


「えっ」

ガキンッ

「おっ」

ガキンッ

「くそっ」

ザシュッ

「待って」

ザシュッ


[奪取するアイテムかスキルを選択してください]


何度か防がれた攻撃もあったが、最後までは受けきれなかったようだ。

『残念。あんたSeregranceより下手くそだったね。』

「ちょっと!私を基準にしないでよっ!

 これでも結構がんばってるんだからっ!」


振り返ると目の前にSeregrance。少し離れた場所に幽霊状態のラインハルトが佇んでいる。

『おっと、聞こえちゃったか、ごめんごめん。

 ほら、奪うもの選んでいいから。』

そう言って、アイテム/スキルの奪取権を放棄する。

「まったく…で、何選べばいいの?」

『好きなものでいいよ。俺は何選んでもどうせ失敗するから。』

「そうなの?じゃぁ適当に選ぶわ。」


[奪取可否の抽選中…]

[奪取に成功しました]

[奪取に失敗しました]

[奪取に成功しました]


『セレ…何選んだの?』

「えっとねー、ラインハルトのスキルと、

 ザッキーが持ってたレア盾と、翔のレア鎧。」

『…何が成功したの?』

「ちょっと待ってね。

 んーと、スキルはいらないからキャンセルしちゃうわ。

 えっとね、ラインハルトが免許皆伝で、

 翔の鎧は防御力1.5倍のスキル付き。」

『えっ、★★★スキル取っちゃったの?可哀そうに…』

「いいのよっ。あんな態度でゲームしてるの嫌いだもの。

 痛い目にあって当然よ!」

3人組は幽霊のままギャーギャー言っていたが、カウントダウンも終わり転送されていった。


『さぁてっと。今度こそゆっくりボスの復活を待とうか。』

「さっきの3人組戻って来るかな?」

『どうだろう。何もさせずに一方的に制圧したからなー。

 来ないと思うんだけど。

 どっちにしてもあと50分は待たなきゃいけないから、

 火の粉が降りかかってきたら払うだけだよ。』



この先、エリアさっさとクリアしていくつもりだったし、

3つか4つくらいエリアを離してしまえば、もう関わり合うことも無いだろう。

という考えもあって、全力で片付けたつもりだった。


のだが…


「おっ、こいつらか。」

「こんだけ集まるのも久しぶりじゃね?」

「ライン、一つ貸しな。」


はぁ…やっぱり向こうから寄って来るんだ。

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