第1章 第2話

「ようこそ、Dance with The Weaponの世界へ!

 ここではまず、これからこの世界で暮らす皆さんに、

 この世界と、ゲームのシステムを紹介する

 チュートリアルを受けていただきます!」


『…は?』


思わず声が出た。病院に向かっていたはずだが、ここはどこだ?

持っていた松葉杖が無い。それどころか服装すら変わっている。


「この世界に魔法はありません。

 皆さんは武器を取り、自分の身体一つで戦っていくのです!」


杖も無く立っていて、体に違和感を感じない。試しに屈伸をしてみると、やはり痛みもなかった。


「それでは、まず武器を選んでくださいね」


そーっと歩いてみる。痛みは無い。

歩く速度を上げる。すんなり体が動く。

『状況はよく分からないが…普通に歩けるっていいな』


「まず武器を選んでくださいね」


身体の状況が分かると、少し周りを見る余裕ができる。

だだっ広い。床も壁も天井も真っ白なせいで、距離感が良く分からない。

いや、壁なんてあるのだろうか。

しゃがんで、床に手をついてみる。

冷た…さは感じない。かといって暖かくもない。


ノックをしてみる。

コツコツという音は聞こえるが、石なのか木なのか素材感が全然分からない。


「まず武器を選んでくださいね」


天井を見上げてみる。陽が差したり、照明がある訳じゃないが明るい。

こっちも真っ白なせいで、果たして本当に天井があるか分からなくなってくる。


…そしてずっと見ないようにしていたのだが、自分を中心にして円状に取り囲み、

宙に浮かぶ6つの武器のようなもの。

実物を見たことは無いが、やはりどこからどう見ても武器だ。


正面には小ぶりの剣。

そこから時計回りに、大振りで重そうな剣。

包丁サイズの短剣。

小ぶりな剣と同じくらいの大きさのメイス。

自分の身長より長い槍。

弓と矢筒


ゲームでよく見るラインナップだな。


「まず武器を選んでくださいね」


『あーもう!さっきからうるさいな!分かったよ!』

ゲームでよく見るというか、まさにゲームだな。ということは夢でも見てるのか。

ひとまず小ぶりな剣に歩みより手を伸ばす。

「片手剣です。攻撃速度が速く、攻撃力は平均的で、

 リーチは若干短いです。盾が装備可能となります。」

一体この声はどこから聞こえてきているのか。方向が分からないが、よく聞こえている。

「この武器でよろしいですか?」


シュワンッ


という音が聞こえ、目の前に

[はい][いいえ]

と書かれた選択肢が現れた。

いよいよゲームの世界だ。一体どんな夢を見ているんだ。


[いいえ]に触れてみると、選択肢が消えた。


「まず武器を選んでくださいね」


誰かが喋ってる訳じゃないようだが、ゲームだとしても雑だな。

もうちょっと色んな喋り方しても良いだろうに。


順番に武器に触れてみる。


「両手剣です。攻撃速度は遅いですが、攻撃力が高く、

 リーチは若干長いです。盾が装備不可能となります。」

「短剣です。攻撃速度がかなり速いですが、攻撃力が低く、

 リーチはかなり短いです。

 盾が装備可能となりますが、盾の代わりに

 もう1本短剣を装備することもできます。」

「メイスです。攻撃速度が若干速く、攻撃力も高いですが、

 リーチは短いです。盾が装備可能となります。

 クリティカルヒット時に、

 相手に眩暈効果を付与することがあります。」

「槍です。攻撃速度が速く、攻撃力は若干低いですが、

 リーチは長いです。盾が装備不可能となります。」

「弓です。攻撃速度が若干遅く、攻撃力も若干低いですが、

 リーチはかなり長いです。盾が装備不可能となります。

 矢が無くなると攻撃できなくなるので注意してください。」


うーん。この際、夢かどうかは置いとこう。

夢なら覚めるまで待ってみてもいいけれど、

とりあえずチュートリアルだと言っているこの状況に従ってみよう。

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