第二話:転生者にして師
「では、第一問の一! ある世界のある時代のある国は……『
――さて、最後に国を統一した王朝の名は?」
この
「では、第一問の二! その『晋』から禅譲を受けた王朝の名と初代皇帝は?」
これにも
「……」
「次、第二問! 我らが住まうこの『惑星』の種類は何と言われるか?」
この貴狼の第二問にも、
「今度は第三問! ある国の『
さらに貴狼の第三問にも、
「最後! 典型的な『三権分立』の三権を三つとも述べよ!」
最後にも鋒陰は「『行政』、『立法』、『司法』!!」と即答してみせた! 実に早い!
この問答を見守っていた陽玄は――こうも早く答えるか!? と内心で驚いている。
「……」
この時、
こうして、貴狼の三つの質問に瞬時に答えてみせた鋒陰。
「
この貴狼の問いかけに紫狼は「
この直後に時狼も「『転生者』に違いありません!」と続いた!
これら
そして体勢を正座に戻す貴狼。これに紫狼と時狼も続いて正座に戻る。
そうして改まった貴狼は、鋒陰に向かって――
「ここに京賀国摂政『
続いて、「同国秘書も!」と貴狼も、「同国宮宰も!」と時狼も頭を下げる!
この光景を見た鋒陰は自慢げに「是非、大船に乗ったつもりで!」と応えてみせた!
こうして、鋒陰は京賀公(陽玄)の公式の師となった。とはいえ、ある疑問が残る……。
「ところで摂政閣下。まだ
まぁ、元はどこかの貴族で、どこかの王朝の血も引いてるらしいがな……」
鋒陰が貴狼にその疑問をぶつけてみると――
「直感ではあるが、私は鋒陰殿に圧倒的な力の存在を感じた故に、貴殿を『公師』と認めた次第。それに、この国を取り巻く時代や情勢が異常なのだ。
ならば異常の手として幼年の師を戴き、それに賭けてみるのも一興という
何より、高い身分や良い出自の者を用いて必ず良い結果が出せる程――
「そこまで儂を高く買うとは……恐縮だなぁ……」と鋒陰は思わず照れて頭を掻いた。
しかし、
「もちろん貴殿には、その『師』という身に相応しい結果を出して頂く!」
「摂政閣下がこうも幼い子にも手厳しい者だとはなぁ……」
「例え、子でも
ちなみに私は体罰とかには絶対に賛成したくない
「それはよかった――かも……」という自身のこの発言と共に、鋒陰にある不安がよぎる。
――案外、寛容そうに見えて、失敗とか許さない
安心しろ、鋒陰。貴狼は“基本は”失敗を許す
「……!」
貴狼と鋒陰の一連のやり取りを見守った陽玄は、ほっと胸を
さらに一瞬程だが、誰にも見られないタイミングで、僅かながらに口角を上げる。
以前、否、今でも友である者の大抜擢を幸いに思いながらも……。
――ありがたいことに、母と父の目に狂いはなかった。と彼は内心で両親に感謝もする。
同時に、旅に出て
しかし、“君主”を務めなければならないという『使命感』と、両親に会えない兵や民に対する『後ろめたさ』から、その思いを強引にねじ伏せた。
この一時のみ、陽玄の心中を察することができる者は――いなかった……。
「――とはいえ、貴殿の力がどれ程のものか計ってみたい。
都合が許せば、後ほど話に付き合ってもらうことになるが、よろしいかな?」
貴狼に尋ねられて、鋒陰は「それはいいとして……」と返す。
明らかに別のことを考えているとしか言い表しようがない言動。
これに貴狼が「何かあるのか?」と尋ねると、鋒陰は――
「まだ宰相――殿下の姿が見えないぞ……? 主君の『師』の人事に宰相の許しとか無くて、大丈夫か?」と「キョロキョロ」と部屋内を見渡しながら返す。
それほど大きくない部屋には、鋒陰と陽玄の二名の他に、摂政の貴狼、秘書の紫狼、宮宰の時狼の三名のみ。宰相を務めている者はいない。
「宰相殿下は所用の為、後ほど入室することになっている。心配も無用だ!
それに殿下の人事権を他に預かる者は、宰相の上官であるこの『摂政』だけだ!」
この貴狼の返答に、鋒陰は新たな疑問を抱くことになる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます