第6話 世界の大富豪『世界の大富豪と貧困国』


 「起きろ! ラスマーキンよ!」


 「は・・・は! これはシヴァルツ様! お見苦しいところをお見せしました!」


 「ふん! まあよい。この世界には魔力のもととなる魔素が存在せぬ。よって、食事・睡眠によって魔力を回復するしか手段がないようだからな。

破壊エネルギーをパワーの源にできる吾輩と違って、貴様は魔力核で魔力を回復するしかないのだ、致し方あるまい。」


 「これはありがたき言葉! これからも我が信仰はシヴァルツ様へ捧げたく思います!」


 「うむ、して、今後であるが・・・。貧困をなくすにはいったいどこから手をつければよいか・・・。悩むところであるのぉ?」




 「は! まずは、この世界の貧困をなくすこと・・・でございますが、簡単でありましょう。金というものを富める者から奪い取り、貧しき者へ分け与えれば均衡するというもの。」


 「なるほど、それもそうか! さすがは大魔王であるな?」


 「いえいえ、このくらいはシヴァルツ様もおわかりでありましたでしょう?」


 「お・・・おぅ・・・も、もちろんだぞ! 貴様を試したのだ・・・。よくぞ、見破ったな。」




 そうこうしていると、部屋の外から、子どもたちの声が聞こえてきた。


 「司馬おじちゃん! おはよー!」


 元気よく挨拶して部屋に入ってきたのは、ナノカだった。


 その後ろにカラガもついてきている。




 「烏丸ぅ~!元気になったみたいだね!!」


 「おお! 我が半身、カラガよ。カラガも食事が取れて元気が出たようだな。」


 「うん、昨日はひさしぶりのごちそうだったよ。そちらの司馬さんが寄付してくれたからだって、院長先生が言ってたよ。ありがとー。」


 「ふむ、あれは吾輩が昨日もらったものだからな、やはり、契約主のナノカの一族だからな、同様の加護を与えるのが当然である。」



 



 「司馬おじちゃんは、ナノカに優しくしてくれるので好き!」


 「お・・・おほっおほっ・・・。いや、契約主だからな。かつては、ラスマーキンとも契約をしていたのだがな。」


 「は! このラスマーキン、シヴァルツ様の期待に応えることができず、ふがいなく・・・。」


 「あーあー、もうその話はよいわ。ところで・・・。」




 吾輩は、さっそく、さきほどラスマーキンと話していた、この世界の富める者を知りたいと思った。


 「かしこき少女ナノカよ。この世界で富める者は誰だ? どこにいる?」


 「トメルモノ? あぁ! お金持ちってことかな? うーんと、そうだね・・・あ、ネットで調べたらわかるかな?」


 「ん・・・そうだな、ナノカ。ネットだったら、うちにある院長のパソコンで調べたらいいんじゃない?」




 我輩たちは部屋を出て、矢佐柴院長の部屋に向かった。


 部屋のドアをナノカがノックする。


 コンコンコン。


 「はーい、入っておいで。」


 部屋の中から院長の声がした。




 「おや、おはよう。みんなそろってどうしたの? こんな朝早くに・・・。朝ごはんはこれからですよ?」


 「院長先生、朝ごはんはいいんだけど、パソコンを貸してほしいんだよ。」


 「あらあら、なんだ、そうだったのね、じゃあ、朝ごはんの支度をしてるから、その間、使ってていいですよ。でも危険なサイトは見ちゃだめですよ?」


 「うん、わかったー! もちろん、あたしもカラガもそんな危ないものは見ないよ? ね? カラガ!」


 「ああ!もちろんだぜ。」




 そう言って矢佐柴院長が去っていった後、カラガがパソコンという不思議な窓のようなものを起動させていた。


 「えーと、じゃ、『ヤグー』でヤグるとするか。」


 「そうだね、検索したらわかるんじゃないかな。」


 するとそこへ、ラスマーキンが口を挟んできた。







 


 「ふむ、カラガよ。さきほどシヴァルツ様は、富める者とだけおっしゃったが、貧しき者も探してくれ。その者らの差を正すのが目的になるんだからな。」


 「ほお、さすが、ラスマーキンだな。目のつけ所が人間業ではないな。」


 「もちろん、それは魔族ですから・・・。」


 「くあーはっはっはっ!! これが魔族ジョークってやつだな?」


 「さすがは破壊神様、破壊力抜群のジョークですな!はーはっはっは!」




 ナノカとカラガがスライムでも見るかのような目で我輩たちを見ているのに気づいたので、話をやめて聞いてみた。


 「これがパソコンというのか? 魔道具か・・・?」


 「マドウグ? まあ、道具だよ・・・って、あー何か変なダジャレみたいなことをいう烏丸たちのクセが伝染っちゃった・・・。」




 「ぐっふっふ・・・よきかなよきかな。ほぉ、そうやってその『パソコン』というやつを使うのか?」


 「うん、ここにIDを入力してネットに繋げるんだよ。」


 「愛泥? ふむふむ、精神魔法のようなものか・・・。なるほど、なるほど。個体を特定するのにそのものの持つ愛や泥のような闇の感情パターンを認識するんだな?」


 「え・・・ま、そんな感じなのかな? それでこのパソコンが起動するから・・・。」




 「ふむ、その波動を操作する魂の魔道具・・・だから『波操魂』(ぱそこん)というのか・・・なるほどな、この世界は魔素がないのに魔法文明が進歩しているんだな。」


 「ま、そんなところかな(よくわかってない)。で、この、『ヤグー』というサイトにアクセスして検索するんだ。」


 「ほうほう、ここを触れると起動するのか・・・。接触起動型の魔術式か。なるほど、魔界の迷宮の罠などに使っておったわ。」




 「おお! あの大魔王宮殿の地下迷宮か!? あれはたしかにやっかいであったな。はるか昔、先代大魔王の領域を破壊し尽くした際、手を煩わせられた記憶があるわ。」


 「ああ、あの魔界破壊暗黒期の頃の話ですね・・・。数千年昔ですかね。我はまだ一地方の魔王でしかなかったころでありましたな。

あの迷宮は我が魔界軍師・ラプラス・イグノラムス・イグノラビムスの考案せし作品ですよ。通称『ラプラス・ディーモン』その知能は魔界一でしたな。」


 「ほうほう、あのラプラスか。たしかに、お主の右腕たる存在であったな。覚えておるぞ。」


 「まあ、あの迷宮もシヴァイス様に破壊された際から、改良したんですがねぇ。勇者のやつには攻略されてしまいましたなぁ・・・。」




 「まあ、あれはおそらく妖精女王・ターニャロッテ・オヴェロニャンの手腕であろうな。数多の精霊を駆使し、攻略したんであろうな。」


 「そうです。あれは反則級でしたわ。・・・ところで、カラガよ、どうだ? 探せたか?」


 「・・・うん、そうだね。おじちゃん達が話し込んでる間に調べたよ、ナノカ、読み上げてあげて?」


 「おっけー。じゃあ、言うよ?」




 「まずね、世界一お金持ちなのは、ジェシー・イーグルス。世界の物販、物流・ネット通販・美容外科の企業のトップかつ美容家だね。

そして、第二位がウォーフ・バット。世界一の投資家だよ、世界のトップ企業100の大株主と言われてるんだ。第三位ははウィリアム・スーパーゲーマー。IT企業家でオペレーションシステム『ブラックウィドウズ』を開発した企業家で、かつプロゲーマーでも有名で、アカウント名は『ビルド』だ。」


 「あと、マルクス・ウエストフィールドも忘れちゃいけないね。SNS『ファクトブース』創始者でかつ、絵描きかつイベンターだね。

他には、ローレンス・O・カダッシオ。IT企業家かつアニメ・映画オタクだね。この今使ってる検索エンジン『ヤグー』の創業者でもあるんだ。」


 カラガが補足する。


 「ふむふむ、こいつらが世界の富める者の上位というわけだな。」


 「そうだね。他にもセレブと言われる富裕層のミュージシャンや女優、サッカー選手などいるけどね。まあ、企業家でトップっていうのは超お金持ちだろうね。」


 「では、逆に貧しき者たちはどうなってる?カラガやナノカ達も貧しき者たちではあるんだろう?」


 「うん、僕たちも決して裕福とは言えないけど、この『邪馬本国』(ジャポン国)はまだ裕福な国なんだ。

世界にはもっともっと貧困層と言われる貧しい人たちがいるし、貧困国が存在しているんだ。」




 「ふむ、してそれはどこにある?」


 「南セダーンや、シエルレオン、セントラルアメリカは最も貧困な国と言われている・・・。他にも貧困層が集まって住んでいるスラム街なんかがあるんだ。

中でも、インドゥー国首都『モンバイン』の近郊にあるスラム街『スラムンバ』は世界最大のスラムって言われてるんだ。」


 「なるほどの。では、やることは決まったな? ラスマーキンよ。」


 「で、ありますな。シヴァイス様。」


 我輩たちはこの世の仕組みをこのときはまだわかっていなかったのだ・・・。



~続く~



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