国際ゲーム大会

久徒をん

第1話

 「今だ!」

 「おう!」

 ブレイブがチュウヤにボールを投げた。

 チュウヤは丸く光るボールを体で受け止めると足のターボエンジンを全開にしてダッシュした。

 途中転びそうになったが前転してジャンプしてまたダッシュした。


 『Vタッチダウン』――

 2人対2人でボールを奪い合いながら敵のゴールにタッチダウンするこのゲームはCGで作られた競技場の中で行われた。

 この15点先制のゲームを含めて国際的な大規模のゲーム大会が22世紀に入ってから4年に1度行われていた。

 競技場にいる観客は全てネット越しに見ている人達の分身のCGキャラだ。


 そんな中で『チュウヤ』と『ブレイブ』が日本代表としてアメリカ代表の『ジョニー』と『リック』と戦っていた。

 実際には選手はそれぞれ球状のブースの中にいた。

 チュウヤを操る高橋宙也、ブレイブを操る南勇太がそれぞれブースの中でヘッドセットを介して話しながら相手チームと戦っていた。

 全身にモーションコントローラー内蔵のセンサーと手にはグローブ型のコントローラーをはめてキャラクターを動かした。走る時はその場を走るが宙返りなどはコントローラーのボタンと体を動かして合わせて技を出していた。敵がタックルしてきたりして体にダメージを受けた場合は実際の衝撃の10%が体に来る仕組みだ。これは意外と痛い。

 ターボエンジンを吹かしてダッシュしているチュウヤにジョニーがタックルしてきた。チュウヤの体は吹っ飛んでボールがコートの外に出た。

 「いてええな」

 宙也が腰を押さえた。

 「あいつら本気でぶつかってくるからな。気をつけろ」

 勇太が言うと「はいよ」と宙也は頭を振りながら答えた。

 チュウヤのパスでゲームが始まった。

ブレイブがタックルされてボールをリックが拾って走り出した。

 「くそっ!」

 勇太が大声で叫んだ。

 チュウヤはリックを追った。チュウヤのタックルをリックは大きくジャンプしてよけた。

 観客がどよめいた。

 転倒したチュウヤがリックを追いかけたがリックのタッチダウンが決まった。

 『1-0』

 先制点を取られた。

 「冷静にいこうぜ」「ああ」

 宙也と勇太はお互いに声を掛け合った。

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