四年に一度の素晴らしさと先輩と後輩くん

ジュオミシキ

第1話

「後輩くん、君は“四年に一度”というものがどれほど素晴らしいか分かるかい?」

「全くもって分かりません」

「はぁ……これだから後輩くんは後輩くんなんだよ」

「なんかすいません」

「いいかい、よく聞くんだ。四年に一度というのはその通り四年に一度しか来ない。その時が過ぎれば、次は四年も待たなくてはいけないんだ。一年経ってもダメ、二年経ってもダメ、三年経ってもダメ、そして四年経ってようやく次が来るんだ」

「はぁ」

「なんだかまだ釈然としていないみたいだね。よし、いいだろう。まだ説明してあげよう。四年ということは、五年でもダメだということだ。五年経ったらもう四年は過ぎているんだよ。その理論でいけば、六年でもダメ、七年でもダメ、八年経ってようやくさらにその次の機会が与えられるんだ」

「はぁ」

「これで四年に一度の素晴らしさ、そして重要さが後輩くんにも理解できたかい?」

「えぇと、まぁ」

「なんだい、まだどうにも納得できていないみたいだね。よし分かった。ならさらに詳しく説明してあげよう。後輩くん、君は四年という時間の重さを理解しているかい?君は今13歳だ。四年後には17歳になっている。きっと高校生になっているだろう。今の授業でも手一杯の君は、高校なんてそんな先のこと全然想像もできないだろう?ついでに言うと、私は四年後には18歳になっている。選挙権を獲得できるんだよ。そう、四年でたくさんのものが変わって行くんだ。君も、そして私も想像もできないようなことさ。どうだい?これで四年という時間の重さが後輩くんにも理解できたかい?」

「は、はい」

「う〜ん。まだどこか引っかかるところがありそうだね。それじゃあもっとよく分かりやすく説明してあげよう。四年に一度と言えば、そう、オリンピック。あの偉大な世界的総合スポーツ大会だ。君も知っているだろう?その時期になるとよくテレビで見るんじゃないかい?そう、君も知っている通りオリンピックは夏季と冬季に分けて行われるね。あぁ、そういえば今度夏季オリンピックが近くで行われるみたいだね。あのオリンピックの競技を実際に、自分の目で、あの臨場感を、生で観戦することができるんだ。こんなチャンスはなかなか無いよ。君もぜひ生で観たいと思うだろう?」

「えぇ、はい」

「なるほど、君はどうしても見たいんだね。おや?そうだ、ちょうどここにオリンピックの観戦チケットがあったんだ。四年に一度の素晴らしさを知った今の君にならこのチケットを託せそうだね。?……あぁ、しまった。そうだね、このチケットは2人分だったね。どうやら私の分も持ってきてしまったらしい。あぁ、そうさ。私もオリンピックの観戦に行くんだ。そうだ、せっかくだから一緒に行かないかい?ほら、四年に一度というのがどれだけ素晴らしいか分かった君なら断らないでくれるとは思うけれど、どうだろう?」

「一緒にオリンピック観に行きたいなら最初からそう言ってくださいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四年に一度の素晴らしさと先輩と後輩くん ジュオミシキ @juomishiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ