恋愛したいのですが
響ぴあの
恋愛したいのですが 男性視点
「恋愛したいのですが」
美人女子がやってきた。
「ここは恋愛相談所ですから」
俺は、恋活カウンセラーとして女性を担当している。ここは、恋活カウンセラーは基本異性と決まっているのだ。女性には男性。男性には女性。相談所に来るお客様は異性に不慣れな場合が多い。異性に慣れてもらうというためにも敢えて若いカウンセラーを設置している。
俺はここの社長の息子だが、大学生のため、バイトでカウンセラーとして働いている。仕事は結構面白い。様々なお客様とのコミュニケーションも面白いのだが、親父の会社経営の戦略もこの業界にしては珍しいことばかりだ。
若い異性が相談相手というこだわりを持ち、あえてデート練習もしている。
アドバイスもわが社ならではの的確な基準を設けている。アドバイス通りにすれば、基本、恋愛できるシステムになっている。もちろん仕事なので私情は挟まない。
「あなたみたいな若い男が担当になるってわけ?」
気の強そうな女子は、仁王立ちしている。とても恋愛相手を見つけに来たとは思えない。
「お客様、まずはこちらのシステムを説明して納得していただいた上でご入会するかどうかを決定していただきます」
「細かいことはいいから、入会決定でお願いします」
椅子に腰かけたかと思うと長い脚を組んで腕組みして、実に偉そうな態度だ。美人だが、こんな女子が恋愛できるのか、少々不安である。
「では、相手へのご希望は?」
「特に希望はないわ」
「じゃあ実際にお写真を見て決めていただきますか?」
「あなたが決めてよ」
気が強そうで自信家で、恋活したいという人は結構珍しい。
「まずは、入会申込書にあなたの経歴や個人情報や趣味などをご記入くださいませ」
女はボールペンを持つとすらすらときれいな文字を書いた。
「あなた恋愛していないの?」
ずいぶん直球な質問をするな。俺はたじろいだ。
「あいにくしてはおりませんが」
「恋愛してもいない人がアドバイザーになるなんて笑っちゃうわね」
たしかにこの女の言うことは正しいと思った。
「しかし、異性と話をしたり、模擬デートをすることで、練習していただくという弊社の考えでございますから」
女の瞳は大きく鋭く視線をそらさない。
こちらのほうが視線をそらしてしまったではないか。
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