胃痛を治す薬

えたの

第1話

「ストレスで胃潰瘍になってるんでしょう」


そう医者に言われたのがつい先刻。

総合病院の外来受付というのは得てして混みあっていて、中には咳をやたらめったらしていたり、はたまた何処が悪いのか分からない元気の塊みたいなお婆ちゃん集団が大きな声で井戸端会議をしている。

キリキリと痛む胃を手で擦りながらそんな様子を見詰めていると、俺がさっき入った診察室から一人の男性看護師が出てきた。

少し茶色がかった髪が、寝癖なのか所々跳ねている。白衣から伸びる腕は細いように見えるが、しっかりと筋肉が付いていて女子受けしそうだなぁなんてぼーっとした頭で考えていた。忙しそうに少し早足で何冊かのファイルを抱えている様子に、看護師という仕事も大変なのだとしみじみ思ってしまう。

にこにこと笑顔で患者の相手をするなんて、まさに天使の様だ。

俺は自分の名前が会計受付の事務員から聞こえたため、痛む胃を擦りながら席を立った。


「初診なので・・・」


会計の合算を口にする事務員の手元を見ていると、不意に先程の男性看護師が俺の横を通り過ぎる。

風の様に、というのが正直な感想だった。

物凄い速さで駆け抜けた彼を視線で追えば、先程まで俺の隣で座っていた若い女性が青い顔をして口元を押さえている。彼はその女性に「ゆっくり息をしてください。吐きそうですか?この袋使ってください」と、ポケットからビニールの袋を取り出した。

その素早い動きに思わず拍手をしたくなったが、事務員が動きを止めている俺を不審そうに見ていたので慌てて会計を済ました。

出口に向かう道すがらふとあの看護師を見ると、女性を支えながら別室に行く途中だった。

ポケットに付けていてる名札には「久慈」と苗字だけ書かれていて、俺は頭の中でその名前を反芻する。

それから帰路について、家の近くのコンビニで大好きな中華丼を買って帰った。

コンビニの店員は俺の目を見ないまま、面倒くさそうに商品をビニール袋に詰めて俺に手渡す。比較する訳ではないが、今日会った看護師とは仕事に対する態度が大違いだななんて心の中だけで思ってしまう。

自宅であるマンションに入り、玄関前で丁度キリキリと鳩尾あたりに鋭い痛みが走る。家に入ってから直ぐに今日処方された鎮痛剤と胃薬を慌てて流し込んで、着替えもしないままベットに飛び込んだ。

真っ暗な部屋は外の街灯や、小さな飲み屋の灯りが射し込んでいるせいでぼんやりと明るい。ワンルームの部屋には小さな冷蔵庫と、ベッドと、仕事の書類やらが入るラックが置いてあるだけ。まさに男の一人暮らしと言った部屋だ。

ベッドに沈み込む体は鉛のように重くて、中々起き上がることが出来ない。まだキリキリと痛む胃に眉を顰める。

明日も仕事だ。また嫌な先輩の嫌味を聞いて、部長から営業成績が上がらないって言われて、営業先の社員に面倒くさそうな態度で追い払われるか無視をされるのだろうか。

確か子供の頃はヒーローになりたかったんだ。

でも現実はいまいちぱっとしない文具会社の営業。

毎日毎日、営業をしているこっちも利便性がいまいち分からない文具を売り込んでいる。しかも毎日終電近くまで残業な上に、時折定時近くに終わればやれノミニケーションだと連れ回される。


「仕事は人生の墓場です」


低反発枕に顔を押し付けながら、大きな溜息を一つ。

たまの休みには一日中寝て終わることもままあって、いっそ恋人でもいたらもう少し華やかな生活になるのだろうか・・・と夢想してしまう。


ゆらゆら。


意識が睡魔に飲まれていく。体の怠さが心地良さに変わっていく中で、何だか楽しい夢を見たような気がした。




次に目を覚ました時には部屋は真っ暗で、図らずも寝てしまったことに気がつく。近くに放り出していたスマートフォンの電源を付ければ、時刻は夜中の三時。

俺は慌てて皺くちゃになってしまったスーツをハンガーに掛けて、カラスの行水でシャワーを浴びる。スウェットのパンツだけ穿いてから部屋に戻ると、テーブルの上には買ったまま放置していた中華丼がそのままの状態で置かれていた。

冷めきったそれに、何だかとても虚しさを感じて、そっと冷蔵庫へとしまった。

一通り寝る準備を整えて再度ベッドへ寝転がると、どん、と頭元の壁から音がする。何かをぶつけたのか、落としたのかといった音だ。時折聞こえてくるその音は、どうやら隣に住んでいる男が出している様だった。

顔を合わせたことはないが、俺と同じくらいの年代の男が住んでいると大家に聞いたことがある。

壁にぶつかってるのか、殴っているのか、はたまた物凄くおっちょこちょいで色んな物を落としているのかは分からない。しかしこうも夜中に音がするのは気になっていた。

毎日ではないから、特に気になるという程でもないのだが。

俺は何事も無かったかの様に寝転がりながら、ぼんやりと天井を見詰める。薄暗がりに慣れてきた頃には、俺はまた眠りに付いていた。


◆◇◆



「折山君、営業終わりで悪いんだけど、今度使う企画書完成させておいてくれる?」

「え、えぇ。何時までですか?」

「いつまでって、普通に考えて今日頼んでるんだから明日まででしょ」


当然の様に数枚のとてつもなく薄いプリントを俺のデスクに置いた課長は、既に終わっている帰り支度の格好で呆れたように笑った。

時計をちらりと見ると時間は午後七時。退社の定時はとっくに過ぎている。しかしながらこの会社には定時退社という言葉も、仕事を断るという言葉も存在しないブラック企業だ。


「じゃあ頼んだよ。お疲れ様」


間延びした声に胃と頭が痛む。

くたばれクソ野郎。

目の前にはとてもではないが、今日中には終わらないであろう仕事の山。病院でもらった薬を温くなった水で流し込み、怒りやら忙しさを叩きつけるように荒い音を立てながらパソコンのキーボードを打ち続ける。

途中で死人のような顔をした同僚が、小さい声で「お疲れ様でした」と呟いてそそくさと帰っていくのを視界の端で見送った。気づいた時にはオフィスには誰も居らず、窓の外はキラキラと街中の街灯が煌めいている。

気分転換にトイレに行って鏡を見ると、目の下に物凄い隈を拵えた顔色の悪い男が映っていて、その男が苦笑いを浮かべる。

つい先日過労死をテーマにしたドキュメント番組を見たが、どこまで働き詰めになれば人は死ぬんだろうか。

もう仕事に来なくてもいいのなら、いっそ死んだ方がどれ程気が楽になるだろうか。


「疲れた」


ズルズルとトイレの壁にもたれ掛かりながらしゃがみ込む。スーツが汚れるとかはもう考えられない程に疲れを感じていた。

そういえばこの前行った病院の看護師は元気だろうか。とても大変そうな仕事だけど、彼は俺とは違って仕事を生き生きとこなしている様に見えた。

やりがいの感じれる職場で、あんなにも活発に働けるなんて秘訣があるなら教えて欲しいものだ。

しゃがんだ姿勢のまま、目を閉じるとチカチカと星が瞬くような目眩を感じる。パソコンを見つめすぎたのだろう。

また胃がキリキリと痛んで、胸ポケットにしまっていた薬を取り出す。すると残りが1錠しか残っていないことに気が付き、やっぱり飲むのを止めた。

明日病院へ行こう。

そう決意しながら、取り敢えずはあの地獄の作業を終わらせてしまおうと立ち上がった。

しばらく時折遠のく意識を手繰り寄せながら渡された作業をこなしていく。

勢いよく打ち続けていたキーボードのエンターキーをいくらか強めに押し込んでから、大きく深呼吸を一つ。肺にエアコンのせいで乾燥しきった空気が入って来て、少しばかり咽そうになりながらパソコンの画面に目をやる。

ようやく無茶振りされた企画書が完成し、俺は安堵しきって伸びをした。体の至る所からボキボキと小気味良い音が聞こえて、頭の中が澄み渡っていくようだ。

時計をみれば、終電間際の時間になっている。俺は慌てて帰り支度を済ませてから、逃げるように会社を後にした。帰りに入口の警備員が「お疲れ様です」とやる気のない挨拶をしたところまでは覚えているが、その後は必死で駅に向かっていたせいではっと気が付いた時には帰りの電車の中だった。

走ったせいでどきどきと煩い鼓動を深呼吸でおさめながら、車内を見回す。平日の終電とだけあってか人はまばらだったが、乗っている人たちは疲労感強くうなだれていたりスマホを弄っていたりと各々の世界に入り込んでいる。

俺も扉の傍に立ってガラス窓の外をただぼんやりと見つめる。光速で流れていくネオンの街灯を目で追いながら、頭は帰ってから溜まりに溜まった洗濯物をどうにかしなければいけないという事で一杯だった。

会社の最寄駅から三駅で、自宅の最寄駅にたどり着いた。

独特な社内アナウンスの声を聞きながら、電車から降りれば駅前の店もほとんどがシャッターを下ろしており開いているのは二十四時間営業のコンビニエンスストアくらいだ。

あまりの疲労感に今日の晩飯を買っていく気力もなく、そのまま自宅への帰路につく。

日中は商店街通りで賑やかな道のりも、この時間になると人とすれ違う事も殆どなくただひたすら歩を進める。駅から少し歩いて、漸く自分のアパートが見えてくる。

2階建ての古臭いアパート。後は階段を上がって扉さえ開いてしまえば…となるべく音をたてないようにしながら、鉄製の階段を昇った所で不思議なものを見付けた。

黒く丸い何かが、俺の隣の部屋の前に転がっている。

大きなごみ袋かと思い近寄ってから、それが人である事に気が付いた。


「わ」


真っ黒なダウンジャケットに、真っ黒なスラックスを履いているから一瞬黒いごみ袋かと見間違えたのだ。その人は扉に凭れ掛かる様にしながら、座り込んでいる。

俺が目の前まで近寄ってもピクリとも動かないその人物に、頭を過るのは「まさか死んでいるのでは」という嫌な予感。今は十月ではあるが、低気圧の影響か雨が降る事も多く肌寒い陽気が続いている。

そのまま無視して自分の家に入っても良かったのだが、少し躊躇った後でその人物に声をかけてみた。


「あの」


声が小さかったのか、相手は微動だにしない。

もう一度、今度はもう少し近づいて大き目の声を出してみた。


「あの、風邪ひきますよ」


すると全く持って反応を示さなかった人物は「あ?」と低くドスの利いた声で、ゆっくりと顔を上げた。少し茶色がかった髪が、寝癖なのか所々跳ねており、よくよく見てみれば目の下には濃い色の隈が出来ている。

その顔に見覚えがあった俺は思わず「あ」と短く声を上げる。俺がこの間行った病院にいた看護師だ。


「んん?あ、すんません。家の鍵無くしちゃって、鍵屋さん呼んで待ってる所なんです」


青年は話しながらずずっと鼻を啜っている。よく見たら手には小さなショルダーバックとスマートフォンを握りしめている。

具合が悪いのか、もともと白い肌の色が白を通り越して少し青白くなっている気がして、病院であった時とは別人の様に見える。溌剌として、気が利いて、天使みたいで、それが病院で彼を見た時の印象だった。しかし今はどんよりと疲労感を全身に纏わせて、まるで俺と同じだなんて思ってしまう。

「よかったら、俺の家で待ってますか?」


自分の口から飛び出た言葉に驚いているのは俺だけでは無くて、目の前の彼も何を言われたのか分からないという表情で俺を見詰めている。

たっぷり五秒かけて彼は俺の言葉を理解したのか、慌てた様に首を振った。


「そんな、悪いですしいいですよ」

「いえ、でも今日寒いですし。なんだか、具合も悪そうな感じですし」

「でも」


それでも渋る彼の顔はやはり青く見えて本当に心配になってしまう。


「俺があんたの事心配なんで」


俺の言葉に彼はぽかんと口を開ける。

確かに自分でもなんだか気障な事を言ってしまった自覚はあったが、それは彼が頑ななのがいけないのだ。俺は彼の手を掴んで自分の家へと引っ張り込む。掴んだ手は想像以上に冷たくて、一瞬離し掛けそうになったが、逆にぐっと力を込めた。

彼は全く抵抗せずに俺に引っ張られるまま玄関に入る。ばさばさとコートを脱ぎ玄関先に投げ出した俺を呆然として見ている彼に吹き出してしまう。


「そんなに心配そうな顔しないでください。金なんてとりませんから。早く中にどうぞ」

「あっ、はい、じゃあ。おじゃまします」


慌てた様に履いていたスニーカーを脱いで、いそいそと玄関の端にそれを綺麗に揃えて置いている姿をみてから部屋に入る。

部屋の中とはいえど帰って来たばかりの部屋は外の気温の影響か、肌寒く感じてエアコンの設定を強にしてつける。途端にふわりと生暖かい風が部屋の中に流れ込み、俺はさっさとキッチンに向かう。

彼は少し遅れて部屋に入って来てから部屋の中を軽く見回してから、また部屋の入口で立ち止まっている。人の部屋を物珍しそうに見るのは気が引けるのだろう。近くに置いてあった出張土産で買ってきた赤べこの人形を困った様な目で見ている。

ヤカンに水を入れてから火にかけ、棚の奥にしまい込まれた貰いものの紅茶の茶葉を見付けた。それを開けている途中で低い声が聞こえてくる。


「本当に、すみません」

「いいんだって。俺がむりやり連れてきたんだからさ」


消え入るような声にまた笑ってしまった。病院でのあのはっきりとした声とは対照的で、意外に思ってしまう。


「適当にソファ使っていいから。あんた、本当に顔色悪いよ」


キッチンから出て、使い古されてお世辞にも座り心地がいいとは言えないソファに彼を座らせた。部屋の電気の下で見た顔色は先程よりは幾分かは血色を取り戻したように見えたが、当の本人は今にも倒れそうな様子でふらふらと頭が左右に揺れている。

熱でもあるのではないかと心配になり、パソコンデスクの椅子に掛けてあったブランケットをそっと膝にかけてやる。すると彼は本当に具合が悪いのだろう、今度は恐縮することもなく素直に毛布を受け取って軽く頭を下げた。

それと同時にヤカンが湯を沸かした音が聞こえて、キッチンに戻る。彼の様子が気になってそわそわとしながらも手早く紅茶をマグカップへ作ってソファへと向かった。


「はい、紅茶。暑いから気を付けてね」

「ありがとうございます」

「いつからあそこで待ってたの?」


カップ渡しながらソファの隣に腰かけると、彼はぼーっとしたように口を開く。


「ええと、多分一時間くらい」

「い、一時間?どっか近くの店で待ってればよかったのに」

「最初はそう思ってたんですけど、もし鍵屋とすれ違いになったらいやだなと思って。仕事終わりで疲れてたし、もう座って待ってればいいかなと思ってたんです」


随分な心配性だ。俺もあまり人の事は言えないが。

彼の言葉を聞きながら、ふと不思議に思って言葉を返す。


「残業?」

「はい。定時は十七時なんですけど、いろいろあって中々帰れなくて」


俺と同じだ。看護師というのも残業があるのか。思わず同情の様な、はたまた仲間を見付けて嬉しくなった様な視線を向ければ彼も其れに気が付いたのかふと口元を緩ませた。


「もしかして、おにいさんも残業ですか」


「ああ。社会って厳しいよな。どんなに頑張って仕事しても次から次に仕事は舞い込んでくるしさ」

「そうですね…あ」


彼は何かを見付けた様に小さく声を上げる。

視線を追ってみると、それはテーブルの上の俺の胃薬に注目していて納得してしまう。


「これ、うちの病院のです」

「うん。知ってる。この前外来の受け付けであんたの事見たから」

「そうだったんですか」


少しだけ驚いた顔をした後に「どこか悪い…」と言い掛けて口を閉じた。まるで聞いてはいけない事を聞いてしまった様な様子に、俺は素直に「最近ストレスで胃痛が酷くてね」と笑ってみせる。


「すみません。ついいつもの調子で不躾な事聞いてしまって」

「いいんだ。別に隠してる訳でもないし。仕事のストレスでさ、胃潰瘍になったんだ。見た目こんなに無神経そうなのに、ストレスで胃痛って笑えるよね」


高校の頃から体格が良かったせいで運動部の勧誘が多かったせいで、友達からはまるで脳まで筋肉でできている人間の様に思われていた。実際の所は大会前には必ず腹の調子が悪くなっていたし、部活の部長になった時には緊張で毎日「部活に行きたくない」と親に愚痴をこぼしていた位だったのだが。


「見た目が強そうなのと心が繊細なのは関係ないですよ」


先程までおどおどしていた彼が発した言葉は凛としていて、思わずじっとその目を見詰めてしまう。少し茶色かかった瞳には揺らぎの一つもなく真剣そのものだ。

時間としてはわずかだったと思うが、次の瞬間にふわりとその相貌が細められて心臓がどきりと高鳴った。

これは本当に天使の笑みだ。優しげで、自分の零した弱音を受け止めてくれて。


「う」


話していると、ふいに彼が眉を顰めた。

どうしたのか見つめていると、困った様に笑いながら頭を摩っている。


「俺も、偏頭痛持ちなんです。お互い大変ですね」

「偏頭痛・・・」


胃痛持ちと偏頭痛持ち。勝手に親近感を持っていると、不意に彼の手にあったスマホからどこかで聞いたことのある曲が流れる。

どうやらそれは着信音だった様で、彼は画面を何度か触ってからスマホに耳を寄せる。


「はい、あ、じゃあ今から出ますので」


それだけ言って、ちらりと視線を向けられる。

通話を切って直ぐに俺が「鍵屋?」というと、彼はうなづいてみせる。


「あの、ありがとうございました。今度何かお礼しますね」

「俺が好きでやったことなので、お礼とかいいですよ」

「いえ、死にかけを拾ってもらったんですから」


幾分血色が良くなった青年に俺は苦笑した。

意外と頑固なタイプなのかもしれない。

彼はそれじゃあ、とにこにこしながら俺の部屋を後にした。


「あ」


そういえば名前聞いてなかったなぁ、と蚊の鳴く程の声は直ぐにエアコンに掻き消されてしまった。

机からマグカップを取ってきて洗い、食器乾燥機に無造作に入れてからキッチンに寄りかかる。

どっと疲れがこみ上げてきて、座り込みそうになるのを堪えてズボンのポケットに入っていた煙草を取り出し火をつけた。

メンソールの香りの煙を肺いっぱいに吸い込んで、そういえば彼からは煙草の匂いがしなかった事を思い出す。

嫌煙家だろうか。看護師だし、もしかしたら健康については人一倍気にするのかもしれない。

俺はじっと煙を立たせる頭薬を見つめてから、それを灰皿に押し付けた。

こんな事を気にしている自分が薄ら寒いせいか、それとも外が極寒なせいか大きなくしゃみをひとつ吐き出した。

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