第26話
「ヘイン君、君は実力を隠している。学院入学時の君は、新入生にしては桁外れの……既に卒業しても良いぐらいの実力を兼ね備えていました。リゼリアさんも同様ですが、生まれも育ちもその実力に見合った物です。しかしヘイン君、君は違う。平凡な出自で、恵まれた才能を持って生まれてきたわけでもない。そんな君が、何故そこまで魔法を使えるのか。……理由は単純です。君は、トゥーリェから魔法を習っていたと考えられるのですよ」
今、先生は何と?師匠が、トゥーリェ?
「何をおかしな事を、先生、第一、トゥーリェは1000年前の、もはや御伽噺に出てくるような人物ですよ。人間がどうやって1000年も生き延びているのですか」
「正確に言うとトゥーリェの子孫だと考えられます。トゥーリェは1000年前に突如旅に出て行方不明となりますが、その後も何度か姿を現しています。その度に彼女達は『私は当代のトゥーリェである』と言ったそうです。ヘインさん、あなたの師は現在名を継いでいるトゥーリェである可能性が高いです」
「襲名制……」
「そうであると認識しています。代々のトゥーリェの見た目も似通っているらしく、文献には全て白髪赤目、そう、リゼリアさんのような見た目をしていると伝えられています。すなわち、子孫が代々襲名していると考えられるのですよ」
「……」
確かに、師匠は白髪赤目だった。何故気付かなかったのか。今考えると、見た目がリゼと似ているんだ。
「だから先生は私をトゥーリェの末裔だと?」
「ええ、類まれなる魔法の才能とその見た目から、十分可能性はあります」
「でも、私は両親からそのような話を聞いたことがありません。第一、当家が本当にトゥーリェの子孫であるならば、もっと大々的にアピールすると思うんです」
「……ええ、そうですね。私の勘違いでした」
シラヌイ先生は、何かを察したのか目線をサッと伏せた。小さい動きだったが、流石に見逃さなかった。
リゼもそれを感じたらしく、そして……リゼも何かに気付いたのか、ビクッと震えると、俯いてしまった。
「話を戻しましょう。つまりは、貴方達二人はトゥーリェと関わりがあると考えています。そこで、お願いがあります」
お願い?俺達は禁術の行使により処罰を受けるもんだと思っていたが……。
「最近、絶滅したはずの魔物が各地で目撃されているのはご存じですね?特にヘイン君。以前君は討伐した実績もある。実力は十二分です。貴方達二人には、ある魔獣の討伐をお願いします。……尚これは、禁術の行使による懲罰も兼ねています。拒否権はないものと思ってください」
なるほど、そういうことか。
「わかりました、受けさせていただきますよ。……この事は、公には?」
「もちろんなりません。なるならこんな場所で話しませんよ」
「安心しました。公になって今から白ネクタイをつけろなんて言われたらたまったもんじゃないですから」
「一度決まったクラスは変わりませんよ。君には不幸な事かもしれませんが」
「いいんですよ、これで」
「では、危険な仕事ですがお願いします。……リゼリアさん?」
そういえばさっきからリゼが一言も喋っていないな。どうしたんだろうか。
「私……そうか……そうだったんだ……あれも……これも……全部……なのに……」
ぶつぶつと何かを言っている。……これはダメそうだ。
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