王道のようで王道じゃない多分ちょっと王道な魔法学校もの(仮題)

雨月さつき

第1話

 彼女――リゼリアは光り輝いていた。物理的に。

 彼女もただ光っているのではない。光属性の魔法、略して光魔法の発動光だ。

 回復を主とする光魔法の適性者は少なく、それでいて光魔法の需要は非常にある為、光魔法の適性者は破格の待遇である。上級魔法になると大怪我や疾病の治療、死亡した直後に限るが蘇生まで出来るのだから当然だろう。

 そんな光魔法唯一の欠点は使用時に体が発光する事で、それが光属性の名前の由来でもある。

 ここ王立魔法学院でも光魔法の優遇は変わらず、生徒の間でも光属性を専門とするクラスに進級する事が憧れであるとされる。

 彼女はそんな光属性クラスの首席。即ち同時に我ら第五学年の首席でもある。その上に上級貴族の令嬢で見目麗しく、男女問わずに非常にモテる。

 そして語り部の俺は今、比喩ではなく実際に光り輝いている彼女に回復魔法をかけられている。

 経緯を簡潔に説明しよう。

一、放課後、彼女の転移魔法の練習に付き合っていた。

二、しかし魔法の失敗で転移に巻き込まれた挙句この学院の中庭の空中、大体木の高さの位置に二人で転移してしまった。

三、浮遊魔法を発動するには時間が足りず、彼女を咄嗟に引き寄せ庇うように受け身を取って地面に激突。

四、その結果彼女は無事で俺も軽い怪我に終わったが、彼女は責任を感じ俺に回復魔法をかけ始めた。終わり。

というわけでせいぜい打撲を負っただけで大した怪我ではないのだが、彼女の魔法に巻きこまれたのが怪我の原因ではあるので彼女はひどく狼狽えていて必死だ。いささか大袈裟だと思う。

 魔法学院の中庭は人通りも多く賑やかな場所。そんなところで発光する人間がいれば、否応無く目立つ。とても目立つ。

 発光する人間なんて爆発する寸前か光魔法を使用しているかの二択しかないし、前者はまずあり得ないので後者となるとこの学院では衆目を集めないわけがない。それが有名人ともなればなおさらだ。

 好奇心を隠さない下世話な視線は、学年主席の才女と、彼女の魔法の恩恵を受けている落ちこぼれの関係についてあらぬ誤解を含んでいるように見えた。

 ただの幼馴染ってだけなんだけどな。

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