第2の地球
小幡信一
第1話 異星人との出会い
ある日の午後十一時、一つの流れ星が流れた。誰もいない夜の公園で一人、ベンチに座りながら、その流れ星を眺めている男がいた。その男の年は26、流れ星を見ながら祈っていた。
男:ああ、何か大きいことをしたい。
男は大志を胸に秘めながら、ずっと機会を探っていたが、チャンスに恵まれず、今の自分に歯がゆさを感じていたのだった。
しばらく男は溜息をつきながら夜の空を眺めていた。
彼は星空を見るのが好きだった。星空を見て空想し満足したら家に帰る、これが今の彼の日常だった。しかし、今日の夜は空想だけでは終わらなかった。
後ろから自分に声をかけた女性がいた。
女:こんばんは。
男はびっくりした。その女性から気配を感じなかったのもそうだが、こんな遅くにあかの他人に声をかけられたことが無かったからである。
男は後ろに振り向くと、気品のある女性が微笑んで自分の方を見ていた。
その女性は瞳が澄んでいて、髪の毛の色は栗色で、長さは肩まであり、体型もスマートで、年齢は18歳ぐらいであった。
女性は驚いている男に再び声をかけた。
女:ジアースさんですか。
ジアースはさらに驚いて、
ジアース:え、そうだけど。何で俺の名前も知っているの。
女:私が持っているジアースの写真と一致したから。
ジアース:君の名前は?
ミュウ:私はミュウ。
ジアース:ミュウさん。何でこんな夜中に女一人でこんなところにいるの?
ミュウ:ジアースに会いたかったから。
ジアース:え。俺に会いに来るということは、俺が夜この公園にいるということがわかっていたわけ?
ミュウ:そう。
ジアースは親しく話しかけてくるミュウに好意を持ちながらも、自分の中に浮かんできた疑問を言った。
ジアース:ミュウさん。なんか俺のことを知っているみたいだけど、何で?
ミュウ:それは、ジアースのことはジアースから聞いたから。
ジアース:え?どういうこと?
ミュウ:今のジアースの三十年後のジアースと会ったの。ジアースは私にいろんなことを教えてくれたの。
ジアース:未来の俺と会ったわけだ。
ミュウ:そう。そして、ジアースに聞いたの。
ジアース:何を?
ミュウ:ジアースはどこで生まれたのって。そしたら地球って言ったから、私、驚いちゃって。
ジアース:え。じゃあ、ミュウさんは地球人じゃないの?言葉も地球の言葉だし。
ミュウ:そう。私はエメラル星から宇宙船に乗って来たの。言葉はジアースに教わったんだ。そして、地球に来た目的は、未来のあなたを地球に連れてきて、あなたをエメラル星に連れて行くことなの。
ジアースは理解に苦しみながら、
ジアース:えーと。未来の俺と会ったのなら俺のことを知ってても不思議じゃないか。と、いうことは、今の俺が君の星へ行って、三十年ぐらい過ごした俺がタイムスリップして、今のミュウさんと会って、未来の俺と一緒に地球に来たわけだ。そう解釈していいんだね?
ミュウ:さすがジアースね。若いジアースも頭いいね。
ジアース:ねえ、ミュウさん。俺の未来は未来の俺から聞かなかったかい。
ミュウ:聞いてないよ。ジアースは話してくれなかった。ただ教えてくれたのは、ジアースは地球人だということだけ。
ジアース:なるほど。ユーモラスで面白い話だね。
それを聞いたミュウは自分が言ったことがジアースには信じてもらってないと思ったため涙目になったが、それを見たジアースは少し慌てていった。
ジアース:あ、いや、別にミュウさんを疑っているんじゃないよ。嘘にしちゃつじつまが合うけど、真実としてもやっぱり疑問がある。現に君は地球の言葉を喋ってるしね。何か今の話を証明するものは無いかい。ミュウさんはどこから見ても地球人にしか見えないから。
ミュウ:じゃあ、私が乗ってきた宇宙船を見る?
ジアース:そうだね。
ジアースはミュウに連れられて、ミュウが乗ってきたという宇宙船の所まで行った。
宇宙船は公園の森の中にあった。形は円錐で、直径10メートル、高さ5メートルで、6人乗りだった。
ミュウ:どう。ジアース。
ジアースは口をぽかんと開けながら、眺めていた。
ジアース:・・・どう見ても家には見えないよな。はりぼてでもないし。
ミュウ:ジアース。やっぱりまだ信じられない?
ジアース:そりゃ当たり前だ。信じろというほうが普通に考えたら無理だ。
ミュウ:じゃあ、ちょっと中に入ってみる?
ジアース:うん。
宇宙船の中は、映画に映っている宇宙船のイメージと似ていて、ここにいる自分がまるで映画の俳優であるかの様な錯覚を覚えた。
ジアース:なあ、ミュウさん。もし、この俺がこの地球を旅たったなら、行方不明になって家族が騒ぐんじゃないかなあ。
ミュウはあっさり答えた。
ミュウ:それなら大丈夫よ。この宇宙船で乗ってきた未来のジアースがあなたの代わりに生活するから。
ジアース:未来の俺っていうことは、だいぶ年を取っているから俺の代わりに生活をするのは無理なんじゃないのか。
ミュウ:それは大丈夫よ。未来のジアースは私の星の技術で若返ったから。
ジアース:そうか。
ミュウはジアースが納得するのに苦しんでいる時に言った。
ミュウ:ねえ。ジアース。私と一緒にエメラル星に行く?
ジアース:いや。行きたいのは山々なんだけど、今すぐっていうのはちょっと・・・。
ミュウ:なんか気になることがあるの?
ジアース:・・・特にないけど、俺、今、彼女募集中なんだ。ミュウさんの恋人になれるのなら一緒に行ってもいいよ。
ミュウ:いいわよ。私、未来のジアースも好きだったけど、今のジアースも悪くないわね。
ジアース:じゃあ、恋人同士でいいの?
ミュウ:もちろんいいわよ。
ジアースはエメラル星から来たミュウに恋してしまい、そのままミュウと一緒にエメラル星に行くことにした。ミュウは大変喜んで、さらに一言追加した。
ミュウ:じゃあ、私はあなたのことをジアースって呼ぶから、ジアースは私のことをミュウさんじゃなくて、ミュウって呼び捨てでいいわよ。
ジアース:じゃあ、ミュウ。この宇宙船は他にも乗っていた人がいたんじゃないのかい。
ミュウ:いるわよ。コンバット(男)とラバンバ(男)がね。その二人は、今地球で調査しているの。そのうち来るわよ。
ジアース:その二人は何者?
ミュウ:コンバットは機械工学、宇宙工学の教授で、ラバンバは言語学教授。あと、地球の大気圏を少し越えたところには、もっと大きな宇宙船があるわよ。そこでも何人か待機しているよ。
そこにコンバットとラバンバが戻ってきた。二人は地球の言葉で自己紹介した。
コンバット:私はコンバットです。ジアースさんよろしく。
ラバンバ:私はラバンバです。ジアースさん。前のジアースさんとあんまり変わらないですね。
ジアースは握手して自己紹介をした。
ジアース:こちらこそ。私はジアースです。
コンバットはミュウにエメラル語で行った。
コンバット:王女様。これで地球に関するデータはすべて集まりました。前のジアースさんの代わりに新しいジアースさんを連れて行くことはうまくいったんですね。
ミュウ:はい。私も本当に新しいジアースに会えると思わなかったし、新しいジアースがこんな簡単に来てくれるとは思わなかった。
コンバット:そうですね。よかったですね。
ジアースはこの会話はさっぱりわからなかったが、ラバンバが通訳していた。
ジアース:あの。ミュウって王女様だったの。なれなれしく話しかけてまずい気がする。
ミュウ:いいのよ。前のジアースは私の参謀だったし、いつも一緒だったから。
ジアースは簡単に納得して、
ジアース:そ、そうか。それで、出発はいつだ?
ミュウ:5分後。
ジアース:ご、5五分後!
ジアースが驚いている姿にミュウは微笑んで、
ミュウ:冗談よ。
ジアース:何だ冗談か。
ミュウ:10分後よ。
ジアース:大して変わらんじゃないか。
ミュウ:冗談よ。
この会話を聞いているラバンバとコンバットは笑っていた。
ジアース:ミュウ。本当はいつなんだ?
ミュウ:私は今すぐがいいんだけど。ジアースの気持ちしだいかな。
ジアース:うーん。今すぐといっても準備するものがいるよ。
ミュウ:生活用品なら心配ないわよ。ちゃんと用意してあるから。
ジアース:そ、そうか。じゃあ、今すぐいくか。
ジアースは簡単に決断してしまった。
ミュウ:じゃあ、一緒に行きましょ。
この宇宙船にジアースたちは乗り、宇宙船は出発した。
宇宙船は地上からどんどん離れてゆき、ジアースは窓から見えるものがどんどん小さく見えていくのを見て、大きいと思った地球がこんなにも小さく見えるのかと思い、また、地球は本当丸くて青い星なんだなと実感していた。
ジアースを乗せた宇宙船は、宇宙で待機していた母船にたどり着き、その母船はすぐにエメラル星に向けて出発した。
ジアースは感傷に浸りながら宇宙空間を眺めていた。
ミュウは、ボーとしているジアースに声をかけた。
ミュウ:どう、ジアース、宇宙の旅は。
ジアース:夢の中にいるみたいだ。これって現実に思えないけど・・・。
ミュウ:まあ、むりもないと思う。
ジアースは気になっていたことを言った。
ジアース:この地球からエメラル星までどのくらいかかるの?
ミュウ:三ヶ月ぐらいかな。
ジアース:へえーっ。けっこう時間がかかるんだ。
ミュウ:そう。そして、その三ヶ月はジアースはエメラル語のお勉強よ。
ジアース:げげげげげげ。
ジアースはエメラル語の猛勉強をすることになった。
ミュウやラバンバのワン・オン・ワンの勉強でジアースは少しずつ言葉を覚えた。
宇宙船の中には、ミュウ、コンバット、ラバンバ、以外に、環境工学教授のエコー(男)や、生物学教授のバロイオ(男)、経済学教授のデバロ(男)、操縦士のカラン(男)副操縦士のドミー(女)がいた。
前のジアースはミュウの参謀であるため、今のジアースは専門分野のことも熟知していなければならなかった。
しかし、ジアースはそれを苦には思っていなく、むしろ楽しんでいたため、宇宙船の中にいる教授と積極的に話していた。
デバロとの会話は、経済に大事なのは、資源とその消費であり、資源がなければ消費は行われず、消費がなければ人は生活できない、という内容である。ここで、注釈を加えると、資源とは有形なもの(目に見えるもの)だけでなく、無形なもの(目に見えないもの)も含まれている。
コンバットとの会話は、宇宙の中には三次元の世界では考えられない法則が数多くあり、その法則から、宇宙の中には歪んだ空間があるという仮説を導きだせる法則もあり、実際にそういう空間を例にたとえるなら、ブラックホールがそれである、という内容である。
エコーとの会話は、存在するものは形を変えながらも、絶対量は変わらないという内容である。
バロイオとの会話では、遺伝子組み換えによるバイオ産業で、人はどれだけ健康でいられるかという内容である。
そんなようなことをジアースは教授たちと話していた。
さらに、ミュウからローレンシア王国の説明を受けた。ローレンシア王国は、無宗教国家で、一人一人を生かす社会を目指している国なのである。また、自由と平等を掲げているため、国民の支持を得られているのである。
各教授との話もピークに達した。
ミュウ:これからの社会は倫理的な社会が必要だと思う。そして、みんなが幸せに生きられる世の中を創りたいと思う。って前のジアースがいった言葉だけどね。
デバロ:そう我々は、国民の生活が充実したものでなければいけないと思う。そのためにはいろんな仕事が存在していいと思う。そしで、バランスをとるのが政府である王国の役目なんです。
ジアース:まことに理想的な話ですね。でも、エメラル星では、現実的なんでしょう。
ミュウ:そうでもないのよ。エメラル星でも、いろんな問題を抱えているの。
ジアース:まあそれは、エメラル星にいってからにして、人生で一番大事なこととは何だと思いますか?
バイオロ:健康であることでしょう。心も体も。で、そうなるためには、一人一人が幸福を感じることができる社会を目指していかなければいけないと思います。
そうしてさまざまな話をしている間に、3ヶ月が経ち、ついにエメラル星上空に到達した。
ジアースは宇宙船からエメラル星を見て、エメラル星も地球と同じ青い星であることに驚きながら、この銀河系には本当に地球に似た星があるんだなと感動していた。
ジアースがそんなことを思っていることをよそに、宇宙船はエメラル星のミュウの国の地上に向かって降下し、到着した。
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