第9話 お風呂2

「……どうしたのよ?」

 現在二人は温泉に入っています。

 温泉を仕切る壁はなく、解放的なまでな温泉です。

 そんな中でふとA子がB子をじーっと見つめています。

 一体どうしたのでしょうか?

「以外と大きいのね」

 A子の視線の先にはB子の胸がありました。

「ちょ、ちょっと!どこ見てんのよ!」

 B子は慌てて自分の胸を隠してA子から距離をとります。

 女同士とはいえ、流石にそんなに見られると恥ずかしいのでしょうか、B子の顔はわずかに真っ赤に染まります。

「いや。私の方が大きいかと思ったけど以外とあるんだなって」

 そういうのと同時にB子はA子の胸へと、自然と視線が吸い寄られます。B子はどうやら着やせするタイプだったようです。

 確かに見た目はA子の方が胸が小さいほうでしょうが、なんでしょう?A子の方が形がよく、とても美しいようにB子は感じています。

「そっちだって私の胸見てるじゃん」

 とB子の視線に気づいてA子が呟きます。

 そこで珍しいことに、A子は少し恥じらいの表情を見せて胸を隠します。

 いつもB子にさんざんからかわれているB子としては、ここが仕返しをするチャンスなのです。

 なんてB子は考えますが、しかし、自分もA子の反応を見て、妙に恥ずかしくなり何も出来ずに固まります。

「…………」

「…………」

 そんな互いに互いを意識したようにチラチラと視線を向ける、静かな時間が流れます。

 一体この二人は何をしているのでしょうか?


 ガサガサッ。


「だ、誰っ!?」

 突然、近くで音がなります。

 ここには誰もいないと思っていたはずのB子は慌てて湯に潜り体を隠します。

(う、嘘……!ここは私達以外誰もいないんじゃないの!?)

 悪態をつきながらも、恐る恐る音がした方にB子は視線を動かします。

 その視線の先はA子の背後にあり、ちょうどその時、A子の背後に黒いシルエットが写るのをB子は目撃します。

「危ない!」

 黒いシルエットが、A子に向かって来ているのを確認したB子は、咄嗟に立ち上がりA子に向かって走ります。

 先ほどまで、自分が見られることが恥ずかしいと思っていたB子でしたが、今はそんな事気にしてられないのか、自分の裸体をさらしA子を助けて行きます。

「きゃっ!」

「え?」

 しかし勢いよく飛び出したせいか、B子はつまづいてしまいます。

 でも距離は近づいていたので、丁度A子に飛びつく形でB子は転倒しました。


 ムニュッ。


 という効果音が響いたと思えるほど、柔らかい物と、柔らかい物の衝突が起きます。

 それはまさに間に入りたいと思えるほどの…………っと、少し脱線しました。

「だ、大丈夫?」

「う、うん…………」

 A子に抱き寄せられる形になった、B子はA子の暖かい体温を感じ、どうしてか頭を伏せます。

 しかしすぐに背後の物体の事を思い出して顔をあげます。

「そ、そうだ!う、後ろ!」

「後ろ?」

 B子に言われてA子がようやく後ろを確認します。

「キュー!」

「なんだキューじゃない」

 そうです。B子が見た黒いシルエットとキューだったのです。

 まぁ、この世界にはこの二人とキューしかいないので、当然といえば当然です。

「もしかして私を心配してくれたの?」

「そ、そんなわけじゃないしっ!」

 A子はにやにやしながらB子を見下ろし、B子は反抗するように顔をそらします。

 ……全く。反抗するならA子から離れればいいのに、B子はしばらくA子の体から離れませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る