第2話 寝癖
「みてみてー」
A子がB子の肩を叩く。
一体どうしたのだろうか、もしかして何か発見したのか。そんな淡い思いを抱きなぎらB子は振り返る。
「これすごくない?」
やはりA子は、そんなB子の淡い期待なんてすぐに裏切ってしまうものである。
元々B子も期待など全然していなかったようだろうが。
「――そうね。すごいねー」
B子は棒読みで答える。
いや、実際かなりどうでもいいこと過ぎてB子の頭が停止してしまう。
「このねぐせすごくない?」
そう。A子の頭にはまるで触覚かと言わんばかりの大きなねぐせが一本生えていた。
いや。ほんと、どうでもいいですね。
「そうね。じゃ、私は忙しいから」
A子の扱い方に少し慣れたのか、B子は対して興味を示さず――当然といえば当然――すぐにこの空間について調査を再会する。
「むー」
一方、A子はB子の反応の薄さに拗ねたように口を膨らませる。
そんな可愛い態度をとってもねぐせなんて気にしませんからね?
むしろ美少女なら美少女なりに、少しは身だしなみに気をつけてください。
しかしA子は身だしなみなんて言葉とは無縁な存在であり、A子は出来て寝癖をツンツンと触ったり、さらには一体どう思ったのか、もう一本ねぐせを作ろうとさえしていた。
「――はぁ……どうしてこんな奴と一緒にこんな所にいるのかしら……」
B子の苦労、とても分かります。
とはいえ、世の男性諸君ならばきっとA子のような美少女と一緒に突然、こんな空間に連れてこられたら大喜びするでしょうね。
しかしB子にはそんな趣味はなく、ただひたすらにここから出ようとこの場所について調査している。
「ねーねー見て見て!」
A子がまたB子の肩を叩く。
「もういい加減にしてよ……」
なんていいつつも律儀に振り返るB子はとても優しいんでしょう。
しかし次の瞬間、B子は美少女にあるまじき声をあげる。
「ギャーーー!な、なにしてんのよ!!」
B子の視線の先。正確にはB子の肩を叩いた物はなんと、A子の髪の毛だった。
髪の毛。B子の頭が可笑しくなってしまったのかと思った諸君、落ち着いてほしい。
B子の肩には確かにA子の髪の毛が乗っているのだ。それも肩を叩くようにゆらゆら動いている。
「なんか寝癖が動くようになった〜」
髪の毛の持ち主はといえば、キラキラとした表情でB子に報告する。
その髪の毛は確かに先ほどA子に出来ていた寝癖だった。それがウニョウニョと動いている。
……いくら美少女だからって、髪の毛がウニョウニョと動いていたら台無し…………いや、一部の層には需要があるのか?全く美少女は何をしても得ですね。
っと、少し話しが脱線しました。
「ど、どうして髪の毛が動くのよっ!?」
当然、B子はA子から瞬時に距離をとります。
「ちょっと、どうして逃げるのよ〜」
だがA子はB子が逃げる原因が分からないようで、B子を捕まえるように髪の毛を動かす。
「きゃ、きゃーー!」
捕まえるように動いた髪の毛はあろうことかB子の足首をつかむ。
その後は恐らく皆さんの想像通り、足から空中に持ち上げられ、逆さの状態でぶらさがる。そしてB子はスカートは履いているわけだから勿論……。
「い、今すぐ降ろして!」
「ごめんね〜」
スカートを手で抑えながら怒鳴るB子に、A子は軽く謝りながらもゆっくりとB子を降ろす。
ちなみに色は白でした。
おっと、口が滑ってしまいました。
「あれ?」
「どうしたのよ」
B子はまだ若干怒っているようで、A子の突然の声に怒ったように反応する。
「寝癖が急に動かなくなった」
そういいながらA子は自分の寝癖をいじる。
しかし先ほどのようにウニョウニョと動くようなことはなかった。
「もう!遊んでないで早くここから出る方法を探すよ!」
寝癖が動いた原因はどうでもいいのか、B子はまた調査に戻った。
「うごけー」
だがA子はそんなB子をほっといて、もう一度寝癖を動かそうと必死に頑張るのだった。
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