料理コンテストに出発
料理コンテストの日がきた。
ダンス発表会が終わってから、みかんは素直に喜んでいた。
みかんは、花凛にものすごくたくさんの励ましの言葉をかけていたけど、結局その必要がないくらいに、花凛はいつも通り、楽しそうになわとびを持って学校に行く。
「花凛、一段と楽しそうですわね」
「そうだな」
朝から練習しに行く花凛を見送り、僕とみかんは二人になった。
ダンス発表会と違って、料理コンテストは、特に観客とか応援とかはないので、普通に一人で出発。最寄駅で、料理部のみんなと待ち合わせだ。
「がんばるんですわ。凛太」
「おお」
僕たちのお子様ランチは、料理ってどこまで行けば完璧って言っていいのかわかんないな、っていう感じのところまでは改善した。
つまり、準備できるだけ準備したということだ。
きっと、みかんや花凛のダンスを見たことも、未来が卓球を頑張っている話を聞けたのも、牧本と話したことも影響しているだろう。
全力な人を見ると、知らないところで心が動かされて、それが自分の行動の原動力になったりするんだと思う。
みかんがこっちを向いて皮を剥いた後のみかんのように柔らかく笑った。
「少し顔が硬いですわ」
「そうかもな……」
僕がお子様ランチを作ってきたのは、たくさんの人が美味しいって言ってくれたからだ。だけど今日、お子様ランチを作るのはその人たちに向けてではなく、審査員だ。
だからなおさら、いつも食べてくれるみんなには、いい結果を持って帰ってそして感謝したい。
「じゃ、そろそろ行く」
「私も自分の家に戻りますわ」
僕とみかんは立ち上がり、僕の家のリビングを出た。
そしてさっきまで元気な花凛がいた玄関で、僕は荷物を持って忘れ物がないかていねいにチェックする。
マンションのエレベーター前のところで、みかんに見送られた。
下るエレベーターでなにか考えようとする。
だけど今考えることはなかった。
僕は、少しいつもよりも涼しめな空気の中、落ち着いて駅に向かった。
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