花凜のダンス

どんどんとプログラムは進んで行き、いよいよ小学生部門の花凛の番が来た。


 ここに来て、周りの客層が変化しているのに気がついた。


 小学生の保護者らしき人と、すでに出番を終えた高校生と中学生の女の子たちが大半。


 入り口で座席のカードをもらったけど、帰った人のところには別の人が座るシステムみたいで、近くも未来以外は結構違う人になっている。


「どうした?」


「いや……このままだと小学生のダンスに興味津々の怪しい人だと思われないか……心配で……」


「そうじゃないの?」


「あ、いや、花凛のダンスには……もちろん興味あるんだけど……」


「大丈夫だって。なんのために招待券配ってるかって言ったら、怪しい人が入ってこないようにしてるんだから」


「そうだな……」


 冷静に考えれば、僕は二枚もらっているので、一枚しかもらってないと思われる周りの大部分の人と比べて、二分の一の怪しさなわけだ。


 余裕だな。


 僕は改めて、ステージを見る。


 次に登場する花凛たちは、縄跳びダンスをするはずだ。


 縄跳びダンスは、引っかかると明らかにミスとわかるから緊張するらしい。だけど、ある程度のミス覚悟で、難しい技を組み合わせたダンスに、花凛たちは挑戦するようだ。


 楽しみすぎる。跳ねる小学生たち。




 幕が開いた後、舞台袖からなわとびを持った、たくさんの小学生が出てきた。


 走り方からして可愛いな。


 花凛は右のほうにいた。


 ビデオ撮影禁止なのが痛い。後から動画がみれるとはいえ、やっぱり花凛がしっかり映ったものを今も仕事であろう母親に見せたかった。


 というより、母親に直接みてもらいたかっただろう花凛だって。まあ恥ずかしいっていう年頃かもしれないけどな。


 跳ねるような明るいリズムの有名な曲がかかる。


 僕が小学生の時の運動会でも、どこかの学年が使っていた気がする。


 みんなが一斉に……いきなり二重飛びをし始めた。


 いきなり二重飛びというそれなりにハイレベルな技を全員がミスることなくやり始めたので、会場がざわついた。


 小学生は身軽なのか楽々飛んでいる。


 二重飛びが終わるとフォーメーション変化。


 一列に並んで隣の人になわとびの片方を渡し、一斉に息を合わせて飛ぶ。これむずいでしょ絶対。


 そしてよく見ると、縄の色が端から虹の色の順になっていた。


 天才ですかこれ。

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