僕は未来とは電話で話せないようだ

『あ、あわっとっと……もしもし?』


「あ、もしもし……?」


 なんか慌ただしそうだ。忙しかったのかな。いきなりかけてしまって申し訳ない。


『おねえちゃん、誰からの電話?』


 と未来ではない声が聞こえてきた。そう言えば未来も妹がいたな。未羽だったはず。


『ちょっと未羽? 何?……』


 未来のあわわあわわとした感じの声。


 後でかけなそおうか……? と言おうとする前に、


『あ、おねえーちゃんはっ、45・3キロなんだね、私よりも』


『わああああああ!』


 僕はあまりの声に、いきなり空からお子様ランチが降ってきた並みに驚いた。


 僕は未来と電話で話せないようにみかんに謎の魔法でもかけられてるのかな。


「後でかけ直す……」


『いや、大丈夫だよ今で……』


 先ほどよりは少し落ち着いたようである未来の声がした。


「本当に大丈夫か……?」


『うん。さっき洗面所で体重測ってて、そこに未羽が電話だよってスマホ持ってきて、私が電話に出てすぐに私の体重を大声で言うから、大声でかき消したの。びっくりさせてごめんね、凛太』


 そういうことだったか。しかし、未来の大声は若干遅くて僕には小数点以下第一位まで聞こえてしまった。45・3キロね。覚えるのが苦手な僕でもしばらく……いやだいぶ先まで忘れないだろう。


「なるほど……それで前の話の続きだけど……」


『どっか遊び行こって話ね』


「ああ、そうその話……」


『ちなみに今は誰かと二人……?』


「一人だが……」


『あ、そうよかった。それでね、行き先の候補考えてみたんだけど……』


 前よりも話が進んだ。よし。二度失敗した難関をくぐり抜けた。


『ねえ、おねえちゃん! パンツのまま電話するんだったら私先お風呂入るよ? あ、ところでその猫とお魚が描いてあるピンクのぱ』


『ぎゃああああわぁああぁっ』


 そして電話が切れた。


 くぐり抜けた直後でゲームオーバーの流れかこれって。なんとかカートで、コースの難しい部分突破したと思ったら甲羅にやられる感じかな。


 思い出せば浜辺さんのエプロンも猫とお魚だった。最近猫とお魚の柄が流行ってるのかもしれない。エプロンとパンツの流行に関係があるとしたら、それは興味深い。



 ああ、それにしてもやっぱり僕は未来と電話で話すことはできないようだ。


 仕方ない。メールを送ることにしよう。

 頼むぞ、僕の国語力。

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