浜辺さんの目撃
しばらくして。
やっとざわざわがおさまったかなと思って、ゆっくりと顔を上げると……。
「じゃーん」
僕の目の前に「記念写真」が突き出された。
嫌がらせかな。僕は先輩をいじるのを楽しむ後輩なんてこの部活にいないと思っていたのだが。
誰だろうと思ってさらに顔をあげれば、全員集合していた。
「これ、原稿用紙です!」
「なんで……?」
「この時の状況を原稿用紙にまとめるんです! 現代文の苦手な田植先輩が喜ぶプレゼントです!」
僕はここ最近で、浜辺さんから二つもプレゼントもらったな……。カプセルトッピングと原稿用紙。後輩の女の子からプレゼントをもらえる僕はきっとすごい幸せなんだろうな。
僕は浜辺さんから原稿用紙を受け取りさっそく記入を始める。
書く内容はもちろん、お姫様だっこの時の状況ではなく、文化祭、そして料理コンテストに向けての計画だ。
「なんか田植ちゃん違うこと書いてる。やり直しね」
「いや……僕は……料理部で料理コンテストに出るという話をしたいんだ……文化祭に向けての参考になると思うし、他の参加者がどんな料理を作ってるのかも見て見たいんだ」
「この写真出されてから真面目なこと言われましてもね……」
中見さんが微妙な顔をする。二つ下の優等生に呆れられるとなんか辛いな。
「……ところで田植先輩!」
「なに……?」
「私、重要なことに気づいてしまいました!」
浜辺さんは写真をまだじろじろ眺めている。
これ以上さらに何か見つけてしまったのかその写真の中に! 一体何が写り込んでたっていうんだ。
「この、みかん先輩……でしたっけ? 私今日このみかん先輩とすごくかっこいい男子が、体育館で超仲よさそうに一緒にお弁当食べてるの見ました!」
「え?」
「これは面白くなりそうだね田植ちゃん」
なんでも面白いと思う傾向がありそうな萌門さんがすかさず反応した。
「仲良くなる……つまり結婚……それは過程を経た……」
あ、阿田さん。もう三回目だから。
「というか冷静に考えれば……、ダンス部も体育館で昼練してるけど、バスケ部とかもしてるし……別にそこでみかんと仲がいい人がいても不思議じゃない」
「まあそうなんですけど! まあ……そうだったらいいんですけどね!」
浜辺さんがそう言うのを聞いて、僕も正直そうであってほしいなと思った。
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