お子様ランチってまとも


「なるほど、そういうわけで、料理部の紹介には失敗したけど、彼女さんのことはますます好きになったってことですね!」


 放課後。浜辺さんは僕の話を優しい先輩であるかのように聞いてくれた、


「……大まかにはあっている。申し訳ない……」


「大丈夫ですよ田植先輩! 私達がやることは一生懸命作って、食べてもらうだけです! 今日はメニューの話し合いを早速しましょう!」


「しよう田植ちゃん!」


 萌門さんが元気に立ち上がると同時に、木屋戸さんが調理室の前の方に歩いて行って、ダブルゆりがホワイトボードを引いてきた。この息の合いようであれば、どんな難しいメニューでも作れる気がした。


「私と三愛で書記やるから、どんどん田植ちゃん中心に話し合っちゃってください」


「わかった……みんな、ありがとうな……じゃあ、まず、メニュー案を普通に挙げていこう……」


 こうして料理部は、順調に話し合いをスタートさせ、前進! 舟形プレートお子様ランチって感じだったのだが……。



「冷静に見ると、これ……お客さん見たら驚愕するメニューだな……」


 僕はホワイトボードに並べられたメニュー案を上から下まで眺める。


 究極のお子様ランチ(田植先輩)

 カプセルトッピング(浜辺先輩)

 本物のみかん? 桃ケーキ(中等部四人)

 桃チャーハン(萌門)

 カプセルトッピング2(浜辺先輩)

 お花畑ごはん(ダブルゆり)

 カプセルトッピング3(浜辺先輩)

 まるごと桃(木屋戸)


 まずカプセルトッピング、どうして1から3まで三つのバージョンに分ける必要があった……?

 あと僕は最後に木屋戸さんが真面目な案を出してくれると信じてたんだけどな……。後輩を信用する先輩はいい先輩。


「全部美味しそうだね」


「だねだねやった、ピース」


 今木屋戸さんピースしてきたんだけど。僕は木屋戸さんは真面目でおとなしい人だと思っていたんだが……。やっぱり萌門さんの親友なんだな。


 あとそれともう一つ。


「お花畑ごはんっていうのは……」


「ちらし寿司みたいなものです」


 中見さんが答える。おおおお。まともだ……。


「そうです。確かメイド姿の女の子がやってきて海苔で文字とかハートを描く計画でしたよね中見先輩」


「ええそうよ」


 え、どういうふうに考えを進めればメイド姿の女の子と海苔が結びつくんだ……一瞬でも希望をくれてありがとうお花畑ごはん。


 僕は楽しげにさらに話を進める後輩たちを眺めながら思った。


 お子様ランチってまともなんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る