たつとり


夕暮れ、夕日に照らされた一羽の影。

黙ってここにやってきて、また黙って次のところへいくらしい。

あいつがいた場所は

飛び立った時のしぶきすら残っていない。



いいのに、そんなに気を遣わなくて。

後片付けくらい手伝ってやるのに。

飛んでいく鳥はその視線に気づいていただろうか。

その場所は綺麗にしたけれど、羽の音まで消せなかった。



「また来いよ。」

ぽつりと漏れた言葉。

夕焼けに照らされた後ろ姿に

ちゃんと届いただろうか。



未練やけじめやなんだかんだ、考えたらきりがない世界で

自分がいた痕を消すのは簡単じゃない。

それならいっそ涙流して、別れを惜しんだその後に

飛び立つ方が見守ってくれた人に報いることができるのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る