魔石術師

kana

プロローグ

夢を見ていた。幼い頃に何度も見た夢


人のために力を使う姿

魔術を振るう姿


カッコいいと思った

そんな姿に憧れていた

そうなりたいと思った


ただそれだけ、そんな子供の儚い夢






 今日は六歳の誕生日である。神殿でスキルが与えられる日。昨日は全く寝付けなかった。なんて言ったって、僕の『夢』に近づくことになるからだ。

そうして僕、エルトミア=ローグはお父様、エルトミア=カースとお母様、エミュレットの間に生まれた。

僕は神殿の前に来ていた。お父様カースのとお母様エミュレットと一緒に。妹のキノワールと、姉様のルトワールは家に置いてきた。

 神殿には大きな盃と鏡がある。盃に自分の顔を映すと、自分のスキルが鏡に映し出される。という、スキルとは魔法的な法則も通り越した神の加護というものである。

そして、盃を前にする。すると、お母様が話しかけてきた。

「ローグは魔術師になりたいんだよね」

「そうだよ。僕はスキルを貰って、魔術師になるんだ」

「そんなに笑っちゃって、まだ貰って無いでしょ」

「でも、貰えるから、絶対」

「そんなこと言ってると」

そんなお母様の言葉を気にしないで盃を覗きこむ。今は早く自分のスキルが知りたい。それ以外どうでもいい。

 覗き込んだ先には、自分の顔があった。まあ、これにスキルは映らないし。でもその顔の目がラピスラズリの様な青い輝きを持って、赤い光を放っていたことはよく覚えている。

 そして、鏡の方を見る。鏡には三つのスキルが並んでいた。

【魔力動作】・【解析】・【複製】と【再現】による【コピー】

 

 そのスキルは決して魔術師に向いているとは言えず、錬金術師のためのスキルだと言い換えることが出来るものだった。

 僕は「お母様のせいだ」と大きく叫んで、自分の家に向かうつもりで走った。方向感覚なんて無いのに。そうして僕は結局、迷子になった。


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