第34話幕末艦艇購入費

 一八四八年となり、徳川慶恕の積極的な政策は成功していた。


 九ポンド砲を二十四門搭載し排水量五百トン前後の六等艦フリゲートと、三十二ポンド砲を三十八門搭載した排水量千トン前後の五等フリゲートの建造に成功し、交易用の排水量五十トンの快速丸と排水量百トンの迅速丸の建造数を減らしてでも、戦闘用のフリゲート量産を急いでいた。


 排水量百五十トンの外輪船蒸気船とクリュー・プロペラ蒸気船は、蒸気機関の完成度が低く、蒸気漏れなどで蒸気圧が低く失敗であった。

 そこで蒸気機関の完成度を上げるため、蒸気機関車用の蒸気機関を量産することで、職人の腕と工場を整備しようとした。


 沿岸防衛用の六十八ポンド長砲と、艦載用の長砲とカロネード砲が量産され、尾張派諸藩の砲台に配備された。

 だが、尊王水戸派諸藩には全く配備されなかった。

 その事が尾張派と水戸派の暗闘を呼ぶことになったが、徳川慶恕に水戸系の血が流れている事が、水戸徳川家がまとまらない原因ともなった。

 もっとも、一番の原因は、水戸徳川家が貧乏で諸藩を支援できないのに対して、尾張徳川家は資金力豊富で、諸藩を支援している事だった。


 国防費用の中には、大砲の鋳造のために必要な青銅の輸入や、最新式蒸気戦艦の購入積立金もあった。

 そのため純利益は九百七十二万両となり、それも全額一分銀の回収費用とされた。

 尾張派諸藩と幕府の金回収軍資金政策が成功し、金銀銭の交換比率が海外並みとなっり、当初の計画通り金一両銀二百匁銭一万文となっていた。


 国内の大判小判二分金一分金の回収がほぼ済んだ状況で、一分銀二朱銀一朱銀を正当な量目の量目純銀貨と交換して、南蛮に敗れた際の備えとした。

 南蛮との戦いに敗れ、攘夷に失敗して開国する事になった場合に備えて、金貨の流通を停止し、純銀貨のみの流通に切り替えようとした。

 そのためにメキシコ八レアル銀貨と同じ、銀含有量二四・四四グラムの銀貨の鋳造を開始していた。


 理由はメキシコ八レアル銀貨が、米国でも一ドル銀貨として流通しており、国際貿易銀貨として流通していたからだ。

 幕府も同じ銀品位九〇・二八パーセント、総重量二七・〇七三グラムの一弗銀貨を鋳造することにしたのだ。

 

「幕末艦艇購入費」

一ドル銀貨(銀二四・四四グラム)

二〇ドル金貨(金三〇・〇六グラム)

一匁は三・七五グラム

排水量六〇〇トンの鳳凰丸が四三〇〇両

排水量四七トンの丙辰丸が四〇〇〇両

排水量八〇〇トンの電流丸が十万ドル(銀七一二貫八〇〇匁)

排水量二五九〇トンの開陽丸が四十一万ドル(銀二九二二貫四八〇匁)

排水量五三〇トンの陽春丸と排水量一八〇〇トンの甲鉄丸で五十一万ドル(銀三六三五貫二八〇匁)

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