第26話大砲

 ドゥーン!

 ダッーン!

 ドッーン!


 大砲と大鉄砲の砲声が鳴り響いていた。

 高島秋帆と弟子達の指揮の元、幕臣と尾張派諸藩が砲術訓練をしている。

 砲弾を無駄にしないように、再使用できるように、完成したばかりの江戸湾のお台場ではなく、江戸の郊外での砲術訓練だった。


 この一年の動きは劇的だった。

 尾張家をはじめとする尾張派諸侯の官位は極官となり、もっとも石高が低かった母里藩越前松平家でさえ、余裕をもって老中を就任ができるように、四万石加増され五万石の石高になっていた。


 武装や生産の問題は、流石にまだ反射高炉は完成せず、湯島に大小砲鋳立場が設立されていた。

 もちろん尾張派諸藩内にも独自の大小砲鋳立場が設立され、蘭国から技術者も招かれ、急速に南蛮の武器製造技術が取り入れられていた。

 だが今は、旧式の鎖国以前からの大砲と大鉄砲で訓練するしかない。


「和製鉄砲と大筒の口径と砲弾重量」

大筒:一貫(三・七五キログラム)の砲弾を発射する口径八四・二ミリ

半筒:半貫(一・八七五キログラム)の砲弾を発射する口径

分砲:二五疋(九三七・五グラム)砲弾を発射する口径

大鉄砲:二〇匁(七五グラム)口径二三・五八ミリ

   :三〇匁(一一二・五グラム)口径二六・九九ミリ

   :五〇匁(一八七・五グラム)口径三三・〇四ミリ

   :一〇〇匁(三七五グラム)口径三九・五ミリ


 江戸湾砲台場を完成させるために、高輪の八ツ山や御殿山を切り崩して大量の土を調達した。

 諸藩から購入した大砲と大鉄砲は、その江戸湾砲台場に設置されていた。

 八カ月の短期間で、江戸湾の五ケ所のが埋め立てられ砲台場完成していた

 諸藩も厳しい勝手向きを少しでも改善すべく、藩内にある大砲と大鉄砲を進んで売り払ったため、武装が幕府や尾張派諸藩よりも低下していった。


 だが、相手は国内の外様反幕派ではない。

 強力な大砲を何十と搭載した南蛮の戦艦艦隊だ。

 それを打ち払うためには、最低でも同等の大砲が必要だった。

 幕臣や藩士に訓練させている夜間斬り込み拿捕は、正面から撃ち合えない弱者の戦法でしかない。


 その事は、アヘン戦争で清国が英国に敗れて以来、南蛮対策に奔走している徳川慶恕が誰よりも理解していた。

 だから、反射高炉の完成と大型艦載砲の鋳造のために、蘭国より技師を招こうとしていたが、流石に江戸近郊では問題があり、尾張藩領内の設置しようとしていた。

 そして蘭国技師に学ぶなら、日本の基準を捨てる覚悟をしていた。

 貫疋匁で大砲の大きさを表現するのではなく、ポンドで表現することにした。

 そして将来は艦載砲として活用すべく、艦載砲を基準にした。


ダブルカノン :六八ポンド砲

カノン    :四二ポンド砲

デミカノン  :三二ポンド砲

カルバリン  :一八ポンド砲

デミカルバリン: 九ポンド砲




 

 

 

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