第29話 HPって、何?

 顕在能力は帳票の下の方に示されているんだけど、俺はそれを見てびっくり仰天!


「HP6212、体力197、気力63、運力43、魅力97……。」


 凄いだろ! 俺のHPは国士無双級! 体力もなかなかのものだよ。他も軒並み2桁ある。潜在能力を基準にすると寂しいけど、スライム一般や1匹スライムを相手にすれば、能力値を上げることができそう。俺は、俺自身の異世界での活躍を疑わなかった。

 それでも疑問があった。HPと体力って、どう違うんだろう。俺が知っている異世界を舞台にした数々のゲームでは、どちらか一方しかない。意味するところは、0になったら死ぬ値ということだ。

 それからもう1つ、気付いたことがある。これは推測なんだけどね。気力以降の63・43・97……という値、これって俺の学年末テストでの英数国の点数と同じなんだ。もしかすると地球での行いの何かが、ここでの能力値に影響を与えているのかもしれない。引っかかるのは6212と197で、全く見覚えがない。何かの合計数なんだろうか。

 結局、HPと体力というのが、大きな謎なんだ。ルチアに聞いて確かめよう。そう思っていたら、あいくる椎名が言った。


「HPって、なぁにーっ? 6212って凄いよね!」


 カホウもルチアも、顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに言った。


「そっ、そうね。かなり高いわ」

「でっ、でも。HPなんて、昼の勇者には……あっあまり関係ないと思うの」


 昼の勇者ってなんだろう。そう思っていると、あいくる椎名が、俺の代わりに聞いてくれた。


「昼の勇者ってなに? 夜の勇者もいるのー?」

「よっ、夜の勇者っていうのは、その……。」

「……よっ、夜の街を徘徊する輩のことよ!」

「あわわわわわーっ。そ、そうだったのかぁ……。」


 カホウやルチアについで、あいくる椎名まで恥ずかしそうにしている。あいくる椎名は勘が鋭いというか、察しがきく。鈍感な俺にはよく分からない。けど俺は、昼と夜の両方の勇者を目指すことにしよう!


 まぁ、まとめると、兎に角自分を信じて磨けってことだな……。

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